#144 覚醒! ハイスラリポマラソン!(本編806話)
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1週間が過ぎました。
この1週間はいろんな事がありました。
〈エデン〉の下部組織〈アークアルカディア〉がついにDランクギルドに昇格したりとかですね。
あのDランク戦は手に汗握りました。
聞いた話では、今回Dランク戦の対戦相手に当たった〈ファイトオブソードマン〉のギルドマスターは2年生の剣士の中で最強とも言われている人だったらしいです。
そんな人に、よく〈アークアルカディア〉のみなさんは勝てましたね!?
本当に凄かったです!
また、ゼフィルス君たちが本格的に上級ダンジョンを探索するようになりました。
最初はAランクギルド〈サンハンター〉というベテランギルドと一緒ということで安心していたのですが、すぐにゼフィルス君たちは自分たちだけで上級ダンジョンへと潜りだしてしまいました。
安全に探索するのに2パーティ以上は必要と言われている上級ダンジョンで、まさかの1パーティ行動です。
私たちの心配はつきません。
もう、ゼフィルス君ったら、しっかり私がその辺言っておかなくちゃいけません!
そう決心してゼフィルス君の帰宅を待っていると、明るい笑顔を浮かべたゼフィルス君が帰ってきたのでした。
そして、とんでもないお土産を出したことで私の思いはその辺に流れて行ってしまいます。
「ハンナ! 良い物が手に入ったぞ! これで上級ポーションが山ほど手に入ること間違いなしだ! ――これを見よ!」
「え? えええ? いきなりどうしたのゼフィルス君って、何これ!?」
「ふっふっふ、その名も〈上級錬金セット3点〉、そしてこれが〈上級錬金釜〉だ!」
「じょ、〈上級錬金釜〉!?」
ゼフィルス君がお土産に出した物、それは今まで使っていた〈中級錬金セット〉や〈中級錬金釜〉を越える豪華さと高級さに輝く、〈上級錬金セット〉と〈上級錬金釜〉だったのです。
話を聞けば、これは上級ダンジョンの隠し部屋でゲットした物だとか。
で、でも性能を聞くと、ギルドハウスにセットされている錬金工房の物より質は下だと判明して事なきを得ました。でも〈上級錬金セット〉の方は工房とは違って持ち運びも出来るのは魅力的ですよね。
そんなことを思ったこともありました。
でも、ゼフィルス君の話には続きがあったのです。それも超が付くほど特大な。
「まだあるぜ! ハンナにこれをプレゼントしよう!」
そう言って私の手に置かれた物を見て私は首を傾げました。
「え? え? これって〈スライムゼリー〉? でも大きくて形も少し違うような?」
その感想は当たっていたようです。
「ふっふっふ、これはただの〈スライムゼリー〉じゃない。〈上スライムゼリー〉だ! これを使って〈上級錬金釜〉で大失敗すると、上級の〈ハイスライム〉がリポップする。そしてそのドロップは、なんと〈魔石(中)〉だ!」
「〈魔石(中)〉!?」
私はおったまげたという声を出してしまいます。
それを見てゼフィルス君が腕を組んでうんうんと「分かる、分かるぞ」と言わんばかりに頷いていました。
ここにあるのは〈上級錬金釜〉、そして〈上スライムゼリー〉。
となれば、スラリポマラソンを極めた私がたどり着く答えは一つでした。
「というわけで、早速試してみるぞハンナ!」
「ちょ、ちょっと待ってゼフィルス君、落ち着かせて、もう強引だよー!」
ゼフィルス君は私が落ち着く暇すら与えずぐいぐい進めてしまいます。
この強引過ぎるところにちょっとキュンときちゃうんです。
構われているというか、私を必要としてくれているって凄く実感するんですよ。
でもそんな幸せタイムもすぐに終わりました。
ゼフィルス君が案の定、〈上級錬金釜〉に〈上スライムゼリー〉と〈泥水〉を注ぎ始めたからです。
これ、知っている光景ですね。よく見る光景です。
でもせっかくの新品〈上級錬金釜〉に〈泥水〉を注いじゃっていいの!? なんかすっごく抵抗あるんだけど!? 私はゼフィルス君に申してみました。
「待って待ってゼフィルス君、こっちの最高級錬金工房の設備じゃダメなの!?」
「そっちは性能が良すぎる。〈上級錬金釜〉の方がハイスラリポマラソン向きなんだ!」
そっちでやるとただの失敗になってしまうことがあるとゼフィルス君は続けます。伊達に最高級と名が付いていませんね!?
な、なるほど~。確かにスラリポって大失敗でしたね、なんとなく大成功みたいに感じていました。私もしかして、感覚がちょっとズレちゃってます!?
自分の感覚のズレに驚愕していてもゼフィルス君の勢いは止まりません。
ゼフィルス君は準備が完了すると、いつも通りの良い笑顔を浮かべて言いました。
「さあハンナ! 『上級錬金』だ! やれー!」
「な、なんか昔もこんなことあった気がするよ!? 『上級錬金』!」
私がスキルを使うと、ピカッと一瞬光って「ポンッ」という音が聞こえ、続いてヌルっと出てきたのは〈スライム〉が4匹でした。この辺、普通のスラリポマラソンとまったく同じみたいです。
でもまったく同じでもないみたいです。この〈スライム〉、ちょっといつものスライムと違います!
「これが上級のスライム、その名も〈ハイスライム〉だ。よし、ハンナ、やってみろ!」
「うん! 『オールドスイング』!」
私が振るったのは四代目メイちゃん、〈メイちゃん(四世)〉です。
ゼフィルス君が中級上位ダンジョンの最強のレアボス、〈ブレンモール〉というボスからゲットしてくれた武器です。
これがすっごく強いんですよ。
たとえ上級のモンスター〈ハイスライム〉だって一撃です!
ぷしゃっと弾けるようにエフェクトが弾けて4匹の〈ハイスライム〉はドロップになってしまいました。
そしてそこにあったのはまさしく〈魔石(中)〉だったのです!




