#142 ゼフィルス君! なんて物を作らせたのーー!?
今日は1話更新!
「さてハンナ君。話を聞こうか」
「えっと、これはゼフィルス君が持って来まして、私は作っただけで内容を知らないと申しますか……」
ローダ先輩がにっこりしながら聞いてくるのですが、なんとなく誤魔化すのはダメな気がして正直に言いました。
そういえば効果を知らなかったです。
「僕もね。ちょうど今さっき舞い込んできたもんだから状況はまだ把握しきれていないのだけどね、これはどうやら革命的なアイテムのようなのだよ」
「はあ、革命的、ですか」
「あまりピンと来ないかな。いや、そもそもハンナ君はこれがどんな効果なのか知っているのかね?」
「いいえ。知らないです」
「……知らなかったのか」
ふう、とローダ先輩は片手をおでこに当てるポーズでやれやれ参ったみたいなポーズを取ります。
「ローダ、気取っていないでハンナさんに説明しなさい」
「そうなのじゃ。いや、注文通りに仕上げるのは生産職の鑑なのじゃが、こと今回の件についてはハンナ後輩は知っておかなければならんのじゃ」
「ふえ?」
チエ先輩とフラーラ先輩が横からローダ先輩を諫めました。
フラーラ先輩の後半は私にも向けられた言葉のようです。
ゼフィルス君、いったい私に何を作らせたのー!?
「じゃあハンナちゃんには私が説明してあげよう!」
「ミーア先輩!」
ずっと書類と格闘していたミーア先輩でしたが、こっちにやってきました。
書類の方は終わったのでしょうか?
「……まあ、今回は良いだろう。事態は急を要する。我ら〈生徒会〉もすぐに動き出さなければいけないからね。ではミーア、説明を頼むよ」
「はいはーい!」
ローダ先輩から許可をもらったミーア先輩が嬉々として説明してくれます。
「ハンナちゃん、この〈転移水晶〉はね、簡単に言うとどうやら上級ダンジョンの中で使うと一瞬で地上に帰還出来るアイテムみたいなのよ」
「……ふえ?」
ミーア先輩が人差し指を立てた「いい?」というポーズで簡単に〈転移水晶〉の能力を説明してくれました。ですが、それがどれほど大きなことなのか、私にはあまりピンと来ませんでした。
「つまりね。今まで私たちって中級ダンジョンまでしか攻略できていなかったのよ、上級ダンジョンってすっごく危険だから。あ、これは一部のギルドは置いといてね」
それは分かります。
学園のSランクギルド〈キングアブソリュート〉が上級ダンジョンの攻略に乗り出しただけであの騒ぎでしたから。準備して準備しすぎることはない、というのが上級ダンジョンだというのは分かります。うちの〈エデン〉は……ゼフィルス君がたくさん準備していましたからきっと大丈夫ですね。
「それで、そんな危険な上級ダンジョンで安全に帰還できるアイテムがこの〈転移水晶〉なのよ。これがあれば今まで危険だからって手をこまねいていたギルドが一斉に上級ダンジョンに乗り出すわよ! それで唯一〈転移水晶〉が作れるハンナちゃんの元には注文が殺到するわね」
「…………ふええ!?」
ミーア先輩の言葉を咀嚼し、ようやく呑み込んで、私はことの重要性にようやく気が付きました。
「ハンナ君が上級生産職に〈上級転職〉した件は記憶に新しいが、何を出来るのかという部分であまり知られていなかった。せいぜい、今まで発見された上級レシピが作れるんだろうくらいにしか思われていなかったんだ。まあそれでも十分すごいのだけどね」
「そこに登場したのがこの〈転移水晶〉ですね。発表自体はまだですが、これは革命が起きますよ。もちろん比喩ですが」
「ハンナ後輩の奪い合いが勃発するかもしれんのじゃ。まあ、うちらや学園がしっかり守るからその辺は安心していいのじゃ」
なんだか本当に大事になってきました!
ゼフィルス君!? 本当になんて物を作らせたのー!?
「今回話したいのはハンナ君の安全確保と今後行なわれるであろう争奪戦の対応。もちろんハンナ君を渡すつもりは無い。だが引き留めるには厳しい状態である事も分かっている」
いえ、そんな見ず知らずの人たちに誘われたからって付いていきませんよ?
い、いくらお金を積まれたからって、い、行かないもん。
私にはゼフィルス君や〈生徒会〉のみなさんがいるこの場所が大好きなのでどこにも行きません!
そんなことを思いながらローダ先輩の言葉を聞いていると、話はとんでもない方向へと向かいました。
「そこでハンナ君にはそれ相応の待遇を用意し、自らの意思で学園にいてもらえるようにするのが最善であると学園は判断した。もちろんまだ仮の段階だが、学園はこれだけの待遇をハンナ君に渡すことを考えている」
そう言ってローダ先輩は数枚の紙束を渡してきたので受け取ります。
そしてそれを読んでいくうちに、どんどん現実離れして行くような感覚に襲われました。
「学園が保有するレシピの一部開放? 〈生徒会〉へ上級素材の継続的な供給? 私専用の大工房の建設? 私のボディガード? 家事を代行するメイドさんの出向?」
他、様々な優遇処置と取れる言葉が並んでいました。
「…………えっと?」
私はすがるように先輩方を見ましたが、4人とも頷くだけです。ふえぇ!?
「え! これ、本当なのですか!?」
「もちろん仮の話だ。しかし、学園はこれだけの優遇処置をする準備があるとハンナ君に示している、という部分が重要だ。もしどこかから勧誘を受けた際、ここに書かれていることを思い出してほしいと、そういう意味だ」
「もちろんハンナさんが望むのであれば学園はそれを叶えると思いますよ」
「じゃなぁ。まさか上級生産職1人にここまで価値が上がってしまえば学園は引き抜かれるだけで名声がとんでもなく落ちる、大損害じゃろうからなぁ」
「つまりは学園が全力で守ってくれるし甘やかしてくれるってこと! ハンナちゃんはどーんと構えていれば良いわ!」
ローダ先輩、チエ先輩、フラーラ先輩、ミーア先輩がそれぞれ私に諭します。
本当に、これって現実の話なの!?
ゼフィルス君! 本当になんて物を作らせたのーー!?




