#141 ゼフィルス君は説明不足!セルマ先輩のお願い!
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私はどうせゼフィルス君だからと深いことは考えず、頼まれた物を作ってしまいました。
それがあんな騒ぎに発展するなんて知らずに。
「ゼフィルス君! カルアちゃんの装備分の真素材と〈転移水晶〉200個、完成してるよ~」
「俺の予想を軽く超える!?」
えへへ~。ゼフィルス君の驚いた顔に私は得意げに返しました。
〈転移水晶〉というアイテム、これって結構作りやすかったんですよ。本当に上級アイテムなのかなってくらいすぐに出来てしまいますし、量産もしやすかったです。
素材もゼフィルス君がたくさん持って来てくれたのでたっくさんありましたからね。
一晩、というか1時間くらいで200個作れました。
むしろカルアちゃん装備用の真素材のバージョンアップの方が時間が掛かったくらいです。
「おお! これはまさしく〈転移水晶〉! よくこんなに作ってくれたな! ありがとうハンナ!」
「えへへ~。喜んでくれて良かったよ。多分これって色々入り用だと思ったからたくさん作っておいたんだ~」
「たくさん……そうか~さすがハンナだ。助かる。これは学園に広めていかなくちゃいけないアイテムだから、学園長や研究所、その他諸々にもサンプルを渡したかったんだ」
へ?
学園長に渡すの? 研究所にも?
そ、そうなんだ。
なんだか不吉な言葉が聞こえた気がしましたが、私は気にしないことにしました。
この時ゼフィルス君にどんなアイテムなのか問い詰めておいた方が良かったと、私は後で後悔することになるのですが、それはまた別の話。
でもあまりの作製数に体調の心配をされてしまいました。
私は問題ありません。むしろゼフィルス君の方が心配です。まだまだよく分かっていない上級ダンジョンへ挑んでいるんですから。
そうお互いに心配しながら私たちは途中まで一緒に登校したのでした。
「あのハンナさん今よろしいかしら?」
「あ、セルマさん。ちょうど私も話したいと思っていたんです」
教室で自分の席に座ると、〈新学年〉組のセルマさんが話し掛けてきました。
私もセレスタンさんにお聞きした内容を話さなくちゃいけないのでよかったです。
最近バタバタしていてうっかり忘れていたんですよ。
「あ、そうなの? 先にそっちの話を聞かせてもらえる? 私の方は長くなるから」
「わかりました。あのですね、ちょっと言いづらいのですが、先日セルマさんから〈エデン〉に加入したいという話があったじゃないですか。それでセレスタンさんにお聞きしてみたのですが……」
私はそう言って封筒をセルマさんへと渡しました。
「これをどうぞ」
「え? ありがとう? ―――ひぐっ!?」
中には大きく「不合格」と書かれた通知が1枚入っているはずです。
それを見たセルマさんはずいぶん引きつった表情をして仰け反っていました。
もうちょっと柔らかいお返事は無かったのかと思いはしましたが、セルスタンさんから「これでよろしいのです」と言われてしまったのでそのまま渡してしまいました。本当に良かったのでしょうか?
「わ、わざわざありがと、ね、ハンナさん」
わわわ、引きつったセルマ先輩の表情が戻りません。
引きつったままお礼を言うセルマさん。
ちょっと、渡すタイミングを間違えたかもしれません。
「そ、その、あ、そうだ! セルマさんの話はなんだったのですか?」
私は全力で話を変えに走りました。
「え、ええ。その、ハンナさんってローダ先輩と親しいのよね?」
「ローダ先輩ですか? はい。〈生徒会〉の生産隊長代理ですし、親しくしてもらっていますが」
ローダ先輩は現〈生徒会〉の実質なトップです。
この前ムファサ隊長が戻ってきたときもローダ先輩は隊長席に座っていましたし。
おかげでムファサ隊長は簡易的に出した長机に座っていらっしゃいました。
「その、もし良かったら紹介してもらえないかと思って。ほら、この学園にいる【闇錬金術師】って私を抜くとローダ先輩しかいないでしょ? 少し話が聞きたいのよ」
「あ、なるほど」
なんのご用かと思いましたが、何のことはありません。職業のことでした。
そういえば以前、学園ではローダ先輩以外【闇錬金術師】に就いている人はいないって聞いたことがあります。
セルマ先輩は少し前〈転職制度〉を使って新しく【闇錬金術師】に就いた方ですから、レベルはリセットされ、以前使えた『錬金』も色々使えなくなっているはずですし、先輩から情報を聞きたいと思うのは普通のことですね。
問題はローダ先輩が会ってくれるか、でしょうか?
「ローダ先輩とコンタクトを取りたいのだけど、もしハンナさんさえよければ聞いていただけないかしら?」
「聞くだけなら構いませんよ。でもローダ先輩は最近忙しいみたいですから、会うことが出来るかは分かりませんよ?」
「大丈夫よ、話してくれるだけでもありがたいわ」
セルマさんは元々一つ上の学年だったのに1人下の学年に来て大変ですからね。少し力になってあげたいです。
その日の放課後。
カルアちゃんの真素材をマリー先輩に渡したり、その内容について話したりしていたらすっかり遅くなってしまいました。
もう夕方になってしまいましたが、〈生徒会室〉へと向かいます。
つい先ほどローダ先輩からすぐに〈生徒会室〉へ来てほしいと連絡があったのです。
珍しいですね。なんの話でしょうか?
〈生徒会室〉にたどり着いた私は扉を開いて入室します。
「やあ、ハンナ君。待っていたよ。こっちに来たまえ。――それで早速だけど話が聞きたいんだ。これを作ったのってハンナ君だよね?」
「ふえ?」
〈生徒会室〉に入った瞬間、挨拶もそこそこにローダ先輩が出迎えてくださり隊長席へ連れて行かれました。
そして隊長席の机の上には、私が昨日作った〈転移水晶〉が置かれていたのでした。




