#138 最高の作品を仕上げよう。生産職最高の一品!
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ゼフィルス君が着る、初めての上級装備の作製は上級生産組3人の大きな試練でした。
私たちはゼフィルス君から〈上級転職チケット〉を受け取り、最高の職業に就かせてもらいました。
今、その恩を返そうと、私、マリー先輩、アルルちゃんは作業に集中しています。
作業は役割分担、私が装備の骨子にあたる素材の作製を担当します。
素材の作製というとハテナを浮かべそうですが、実際ドロップした素材を加工し、さらなる真素材へ進化させているので本当の事なんです。
素材を進化させて強化された素材にする。
それは生産職であれば誰でも出来るそうです。マリー先輩なら縫合系で縫い合わせることで大きな布を作り出したりしますし、アルルちゃんなら鉱石同士を混ぜて合金を作り出します。
ですが、私の場合、ベースとなる素材をそのままに等級を昇華させてしまいます。
これは他の職業では難しいことで、マリー先輩もアルルちゃんも、素材を強化することはできますが、昇華させる事は出来ません。
中級上位級の素材と上級下位級の素材を合わせてもそれは上級素材にはなりません。
でも私の場合、中級上位級の素材をベースにして上級下位級の素材を『魔釜』スキルの触媒にすると、中級上位級の素材が上級素材に昇華されるのです。その場合、触媒にした上級下位級の素材は無くなってしまいますが、役目を終えているので何の問題もありません。
つまり等級が高いだけの上級下位級の素材を生け贄に、超有用な上級レアボス素材に変成するのが私の役目ですね。
私は延々と『魔釜』を発動し続けました。
「マリー先輩。素材追加しておきます~」
「おおきに~ハンナはん。かなり順調なようやね。そろそろ全素材揃うで」
「はい! 頑張りました~」
「仕事が早いって兄さんは言っていたけど、ホンマ早いなハンナはん」
「え、えへへ~」
マリー先輩の言うとおり、私の作業はもうすぐ終わりそうです。
次はマリー先輩とアルルちゃんの出番ですね。
マリー先輩の役目は私が昇華した真素材を加工し、装備品にすることです。
〈勇銀装備シリーズ〉は分類状〈鎧〉とされています。〈鎧〉とは非常に高い防御性能を持っていて、硬い素材を装着し防御力を大きく上昇させた防具のことです。
大体の金属装備が〈鎧〉に含まれます。
マリー先輩は【服飾師】系の上級職ですが、果たして〈鎧〉に布は必要なのかと問われると、必要ですと答えます。
というのも〈勇銀装備〉は軽装にミスリルのアーマーを装着したような見た目だからです。
〈軽装〉は〈鎧〉とは違い、大体が【服飾師】の仕事なんです。
金属の面積より圧倒的に布面積の方が多いわけですね。
また、金属をそのまま肌に付ける訳にはいきませんから、大体の〈鎧〉は【服飾師】と合作で作るそうです。フルプレートなどはまた違うようですが。
そして縫合もするマリー先輩なのでアルルちゃんも自分が加工した金属部品をここに納品しに来たりします。
「マリー姉~、胸のアーマーの部分出来たで~」
「おお、待っとったわ~」
「あ、アルルちゃん」
噂はしてませんでしたけれどなんとやら。
アルルちゃんの登場です。手にはミスリル素材とモンスター素材を加工して出来たアーマーがありました。
とても重そうです。華奢なアルルちゃんがそんな重そうな物を軽々と持ち上げているのを見ると、私も出来ないかな~とか思っちゃいます。
自分の二の腕を触ってみます。ぷにぷにしていました。アルルちゃんのも触ってみたいと思います。
「アルルちゃん、ちょっと二の腕を触らせてください?」
「どうしたんやハンナはん? まあ、ええよ別に?」
首を傾げつつ片手にアーマーを持ったままもう片方の手を差し出してきました。
なんて力持ちなんでしょう。
私はアルルちゃんの二の腕を触ってみました。
あれ? ぷにぷにしていますね。
「アルル~、それちょいこっちに持って来てや。ちょっと合わせてみるわ」
「あいよ~」
「邪魔しちゃってごめんねアルルちゃん」
「ええよええよ~」
そう言ってアルルちゃんはマリー先輩のところに出来上がったばかりのアーマーを持っていきました。
それをマリー先輩の指示の下、ゼフィルス君等身大サイズのマネキンに着せられた〈勇銀装備〉の体部分にアーマーを着せていきます。
「う~む、さっすがアルルや、どこも問題無いな~」
「あったりまえや! うちの力作やで!」
「わ~、かっこいいですね!」
ゼフィルス君の装備です。
とても勇者っぽい装備です! すっごいかっこいいです!
「この品質はさすがの一言や。アルル、もうこんなにレベルを上げたんか!」
「うちだけの腕やない。ハンナはんが素材の品質を限界まで上げてくれてたおかげや。おかげで予想以上の品質で加工出来たで」
「え、えへへ~」
「ハンナはんも大概規格外やな。しかし、これなら相当凄まじいもんが出来上がるで。間違いなくこれまで作ってきた中でも最高傑作の一つになるわ」
アルルちゃんとマリー先輩がべた褒めです。
3人で作る上級装備。予想以上に凄まじいものが出来そうだと経験の深いマリー先輩は言います。ゴクリです。
それからマリー先輩は微調整した後、一気にアーマーを軽装にくっつけ、見事に身体部分の装備〈勇銀の鎧〉を作ってしまったのでした!
その今まで私たち3人でも見たことがない数値を見て度肝を抜かれたのはここだけの話。
数日後、とうとう〈勇銀装備シリーズ〉6点を仕上げ、最高傑作で完成させることが出来たのでした!
なお、その日ゼフィルス君が新たにシリーズ装備のレシピ全集を3枚持って現れたので、私たちの方が驚かされてしまいました。
マリー先輩は「兄さんが次々うちの肝を抜いていく~」と嘆いてゼフィルス君と楽しくコミュニケーションを取っていました。
わ、私も次から真似した方がいいのかな?




