#134〈エデン店〉は大盛況!お客さんが途切れません!
〈エデン店〉は大盛況でした。
生産が追いつかないかもしれません!?
マリアさんやメリーナ先輩に早速相談しに行きました。
「最初〈エデン店〉の店長を任されたときはどうなるかと思ったけれど、なんとかやれそうかな?」
「お疲れ様ですわハンナさん。本当に大盛況でしたわね」
「つ、疲れました~、うきゅう~」
「もう情けないわよシレイアちゃん。まだ初日なんだよ?」
売上げを見て呟くと、みなさんが集まって来ました。
シレイアさんは机に頭を乗せて「うきゅう」としています。
本当、初日からこんなにお客さんが来るなんて思いませんでした。
「ハンナさん、お品物の在庫はどうなっていますの?」
「ポーション系の売上げがすごいみたいです。売り切れこそありませんでしたがこのペースではそれなりに生産量を上げていかないといけないかもです」
「高品質ばっかりの高級店のはずなのですけどね。やっぱり品切れが無いのは強みですわ」
マリアさんとメリーナ先輩に聞いた在庫状況などをアルストリアさんに伝えると、アルストリアさんはそう評価しました。
〈エデン店〉の強みはなんと言っても高品質の品しか扱っていない所にあります。普通品や粗悪品は全て『素材返し』で素材に返してしまいますからね。
うちにはMPに余裕がありますので、こういうことが出来てしまうのです。
そもそも高品質しか作製しないので普通品が生産されること自体が少ないのですけどね。
また、もう一つの強みが売り切れにならないこと。
つまりは在庫数です。大体の人は数十個単位でポーションを買っていきます。
他のお店ではそれが何人も何十人も来られるとすぐ在庫が尽きてしまい、結果商品の取り合いや、あそこの店はいつも在庫が無いなどと噂が広まり信用を失ってしまいます。
ですが、〈エデン店〉では在庫は極力切らさないよう心がけています。
というよりゼフィルス君が私をそう育てたんですけどね。
私の大量生産の腕はどうやらとてもすごいらしく、千個や1万個なら割とすぐできます。
はい。私も少し自分がおかしいんじゃないかと思うことがありますが、出来るのだから仕方ないじゃないですか!
とりあえず、そのため素材さえあれば、在庫はこの売上げペースでも増え続けます。
「わたくしたちも頑張ってはいますが、ハンナさんには敵いませんからね」
「でしゅ。ハンナさんの錬金力は最上です」
「もう、褒めすぎですよシレイアさん」
錬金力ってなんでしょう? と少し思いましたが多分褒め言葉だと思います。
それからしばらくの間は忙しく売りさばく日が続きました。
私はこの店の在庫を支える店長なので、店番より錬金の方に回されることが多かったです。
売り子は基本マリアさんとメリーナ先輩がしてくれました。在庫管理はサトル君で、注文が入ると目にも止まらないスピードで商品を用意してしまうのです。すごい。
また、商品では私たちの作品だけではなくアルルちゃんの武器や防具なども混じっていましたが、こっちはまったく売れませんでした。
店が大混雑でそれどころでは無いと言いますか。ゆっくり武器を選べる雰囲気じゃ無いのが問題ですね。
そんな混雑も、しばらくすると落ち着きを見せ始めました。
「戦闘ギルドでもハンナさんのポーションはまだブームのようですが、一先ず行き渡った感じですね」
「そうね。〈エデン店〉で揃えているのは中級ポーションの高品質。〈ハイポーション〉なんて回復量が800もあるのよ? 早々使う事も無いし、必要なギルドも限定されるものね」
マリアさんとメリーナ先輩がそう分析していました。
〈エデン店〉は高級路線で行くことにしたので売っている物は大体中級品です。
HPを800も回復してしまう〈ハイポーション〉はレベルカンストしていても早々使いません。
ゼフィルス君曰く、HPがピンチの状態から1発で前線に復帰できる所が高ポイント、とのことでした。つまり、ここで売っているのはピンチに使うようなポーションなんですよ。早々ピンチになんてならないですよね。
そのためお守りにギルドメンバーへ数本ずつ支給する感じで、1日で10本使うなんてことも無いそうです。
たまに「ボスに挑戦するから〈ハイポーション〉を200本くれ」なんてお客さんも来ますが、200本程度ではそれが100人来てもギルドの在庫が尽きることはありません。
「本当に、ハンナさん様々ですね」
「ハンナ様は無理しないでくださいね」
「大丈夫ですよ~、こうして休ませていただいていますから」
マリアさんとメリーナ先輩は心配そうに見てきますが、正直全然大丈夫です。
アルストリアさんやシレイアさんも量産がどれほど大事かというのを目の当たりにして、最近は『大量生産』スキルや『迅速錬金』『迅速調合』にSPを振っているそうです。
「少しずつ生産量も増えてきているし、お客さんも減ってきているので私の時間もだいぶ増えてきました。だから心配はしなくても大丈夫です」
「ハンナさんが大丈夫なら安心ね」
「では、そろそろアルルさんの作品の宣伝も始めましょう。上級職に就いて上級装備を作製できるようになったという話題性を強調していこうと思うのですが、どうでしょう?」
「良い頃合いですね。私もメリーナ先輩に賛成です。アルルさんの上級装備はそこそこな数が揃ってきました。売り出してもいい頃合いですね。ハンナさんはどうですか?」
「は、はい! マリアさんとメリーナ先輩の意見に賛成です! というかお任せしたいです!」
〈エデン店〉が好調なのはこのお二方の存在も大きいと思うのはきっと気のせいでは無いと思います。




