#123 〈錬金術課1年生〉コンテスト、終了~!
まさかの殿堂入りという予想外の事態はありましたが、その後はコンテストが無事再開されることになりました。
「わたくしの番、ですわね。行ってきますわ」
私の作品が一抜けしたことで、独走状態だった私の作品はすでに学園に持っていかれてしまい、残り9チームでコンテストが行なわれます。
私の次はクラスでも2番目にLVが高い実力者、アルストリアさんです。
あの後、少し持ち直したアルストリアさんですが、緊張は隠せない様子で、会場へと出て行きました。
「さあ! 続いてのチームはこれまた個人出場! 〈生徒会〉の1人でもあるアルストリア選手です!」
「おー!」
「がんばれー!」
会場もまだ熱は冷め切らない様子で盛り上がっています。
私はアルストリアさんの様子をシレイアさんと共に陰から見守りました。
「さあ10作品出揃いましたー! 総合評価はー! 782点! なんと782点です! これは素晴らしい! 1年生でこれだけの点を出してくるとは! いったい今年の〈錬金術課〉はどうなっているんだ!?」
「わー! すごいです!」
「本当にすごいですね! やりましたねアルストリアさん!」
昨日見させてもらった〈錬金術課2年生〉の最高得点が確か750点でした。
つまりアルストリアさんは2年生を越えたのです。やっぱりアルストリアさんはすごい!
アルストリアさんの作品はバランスの良い様々な種類が多く出揃っていました。
その中でも注目するべきはやっぱり武器です。
今回アルストリアさんはブーメラン系の武器や、投擲系アイテム、さらには錬金で作った剣まで出していました。
物珍しさに目を引いたのでしょう、観客席からの点はかなりの高得点でした。
さすがはアルストリアさんです。
「ちゅ、ちゅぎ!? わ、私でしゅ!?」
アルストリアさんが終われば次はシレイアさんの番です。
シレイアさんはもう緊張で噛みまくっていました。
頭を撫でて上げて落ち着かせます。
「大丈夫ですシレイアさん、リラックスです!」
「ふぁ、ふぁい。いってきましゅ!」
効果はあまりありませんでしたが、シレイアさん、頑張ってください。
そして入れ替わりでアルストリアさんが戻ってきました。
「アルストリアさん! おかえりなさい! すごい点数でしたね!」
「ただいま戻りましたわ。ええ。まさかあれほど評価されるとは思っていなかったのでとても嬉しいです。なんとかハンナさんの次の役目を果たせましたわ」
「それはその……」
「もう、気にしないでくださいな。アイス先生の機転で私もしっかり両足を突いて立てるのですから。もう吹っ切れましたわ」
私の次の番ということでアルストリアさんは相当プレッシャーだったようです。
ですが、点数は〈錬金術課〉としてはかなりよく、予想より良かったとのことでアルストリアさんの気持ちは楽になったみたいです。
本当に良かったです。
シレイアさんですが、緊張でピンと気をつけの姿勢で固まっているうちに作品の方は評価が付け終わっていたようです。
「お待たせいたしましたー! 〈錬金術課1年生〉の第三席、〈生徒会〉所属の意地を見せつけられるのか!? その評価の総合点数はこちら! なんと753点! 753点でーす! さすがは〈生徒会〉メンバーだ!」
「はう!?」
シレイアさんやりました!
シレイアさんまで昨日の〈錬金術課2年生〉の最高点を超えたのです! とってもすごいですよ!
シレイアさんの作品ですが、ほとんど攻撃アイテムに寄っていました。
それ故にパフォーマンスがとても豊で、ドンドンッと撃てば観客席から「おおー」「欲しい! あれ欲しい!」と歓声が上がるほどでした。
順当な結果だと思います!
そうして残り7チームも評価が点けられましたが、どれもシレイアさんを越える事は出来ませんでした。
続いて〈作品対決〉です!
今回私を抜いて9チームいるため、順位を付けます。
出された作品に対し、1位の作品に100点。2位の作品に90点と続き、最下位の9位は20点となります。
ここではほとんどアルストリアさんとシレイアさんの1位2位争いでした。
7作品でアルストリアさんが1位を取り、3作品でシレイアさんが1位を獲得していましたね。
おかげで他のチームとの差が偉いことに。
ここでアルストリアさんは970点、シレイアさんは910点を獲得していました。
そうして最後は〈作品作り〉タイムとなります。
自分の得意分野の作品を作り、作品作りの手際を初めとした作製者も評価の対象となります。
ここでもアルストリアさんとシレイアさんの独走状態でした。
アルストリアさんは出品されていた中から剣を選び、作る事にしたようです。
シレイアさんは出品されていた中から錬金杖を選んで、作製に入りました。
アルストリアさんもシレイアさんも、素晴らしい腕前です。
私たち3人で一緒に練習しましたからね。
あそこに私だけ入っていないというのは少し寂しいものがあります。そんな事を考えたからでしょうかアイス先生からこう言われました。
「安心してください。ちゃんとハンナさんの出番はありますからね」
「え?」
おかしいですね。聞き間違えでしょうか? いえ、そういえば先ほども〈作品作り〉がどうのと何か言っていたような?
そんなことがぐるぐる頭を巡っていると、〈作品作り〉も終わったようです。
結果はアルストリアさん、888点。そしてシレイアさんが821点でした。
この時点でコンテストは終了です。
そして今回の〈錬金術課1年生〉はアルストリアさんが2640点で1位!
シレイアさんが2484で2位となり表彰されたのでした。
ちなみにアルストリアさんは昨日の〈錬金術課2年生〉の優勝者の記録を超えていたとの事です。さすがですね!
「アルストリアさん、シレイアさん! 上位入賞おめでとうございます!」
「ありがとうございますハンナさん」
「あ、ありがとうございましゅ!」
トロフィーを持って戻ってきた2人に私は手放してお祝いの言葉を贈りました。
ですが、アルストリアさんは少し浮かなそうな顔です。
「ごめんなさいハンナさん。本当ならあなたがこのトロフィーを受け取ることになっていたのに」
「い、いえいえ、何を言っているのですかアルストリアさん! それはアルストリアさんが頑張った証ですよ。私はもう十分ですから」
アルストリアさんは1位という順位になぜか私に悪いみたいな態度だったので慌てて首を振ります。
私、トロフィーは別にいらないので大丈夫です。
むしろ殿堂入りとしてそれ以上の物を受け取るのだと先ほどアイス先生から聞かされたばかりですから。
そう2人に説明します。
「だからアルストリアさんもシレイアさんも気にしないでくださいね」
「そういうことでしたら」
「わかりました。さ、さすがはハンナ様なのです!」
なんとか2人に理解してもらったときです。
そこへアイス先生が現れたのは。
「ハンナさん、出番ですよ。エキシビジョンです」
「ふ、ふえ……」
やっぱりさっきのは聞き間違えじゃ無かったんですね。
私は1人、〈作品作り〉のパフォーマンスをすることが決まったのでした。




