#121 1作品目から会場ざわめき最高潮。評価は何点?
「上級アイテムだと!?」
「本当なのか!?」
「もっと近くで見たい!」
「ハンナ様も近くで見たい」
「あなた、少々向こうでお話を聞かせていただけますか?」
「へ? ああ!? 〈秩序風紀委員会〉の方々!? ち、違うんです! ああ~~!?」
会場が大きくざわついています。
なんだか、思った以上の反響でした。
私は落ち着き無くキョロキョロと観客席を見渡してしまいます。
「これは、確かに生産されたものだ! 『鑑定』に制作者ハンナと出ている!!」
「しかし、そんな事が可能なのか!? これの生産は未だに成功した実例がないんだぞ!? 何かの間違えでは!?」
「『鑑定』を妨害することは可能だ。しかし、このように好きなように内容を表示させることはできないはず。故にこれは本物」
「本物だと!? しかし、ではどうやって生産したというのだね!?」
「いやあ、この作品は良いですね~」
審査員の方々が揉めています。
いえ、揉めていましたが、1人の審査員の方の言葉でその揉め事は収まりました。
「皆さん、私たちの仕事はなんですか? それは作品を評価すること。可能か不可能か、本物か偽物かを言い合うのではありません。今この場にある作品に評価を点けることこそが私たちの仕事でしょう?」
「それは……。確かにその通りだ」
「僕としたことがあまりの衝撃に目的を見失っていたようです」
「いえ私も、お恥ずかしい」
「そうだったな。俺たちには正しい評価をするという使命があった」
「では皆さん、この作品に正当な評価を行ないましょう」
「「「「応!」」」」
「おおっと! 先ほどまで議論をしていた審査員たちが一つに纏まったー! やはりハンナさんの作品は上級アイテムだったのか!? 作品に触る審査員の手がプルプル震えているように見えます!」
「司会者クン、それは気のせいだよ」
「おおっと審査員の方からツッコミが! これは貴重です! さてさていったいこれにはどんな評価が付くのか!? ちなみに観客席の評価は不当だったため、人員を変えてやり直すことに決まりましたー! お? どうやら審査が終わったようです! では審査員に話を聞いてみましょう!」
色々と事態が動きすぎて私はちょっと足下が覚束なくなってきた気がしました。
しかし、担任のアイス先生が後ろで見ているため背筋が伸びてしまいます。
いったいどんな評価が下されるのでしょうか。ドキドキが最高潮になりました。
「では審査員の方、コメントをお願いします!」
「これは良いものです。とその言葉だけでは片付きません」
「素晴らしく良いものです。僕はこれに最高の評価を点けることにしました」
「いや好きですねぇ。まさか〈作品コンテスト〉で〈ホラーパンプキン〉が見られるとは。これはね、上級素材を半分以上使って作るレシピなために下級職では作製不可能とされているアイテムなのだよ。いやはや、素晴らしい」
「おおっと審査員の方々がべた褒めだーー! というか、今聞き逃せない言葉がありました! 下級職では作製出来ないですって!? ではいったいどうやってハンナさんはこれを仕上げたのでしょうか!? ――ハンナさん、もし差し支えなければで結構です、その作製の秘密を教えて貰えませんか!?」
「え、ええ!? その、普通に作っただけですけど。あ、でも私上級職ですよ?」
「は、はぁぁぁぁ―――――!? さらっと! さらっと爆弾発言来ましたーー!!」
「「「「おおおおおおお!?」」」」
私が上級職と言った途端、会場が爆発したみたいな歓声に包まれました。
「なんと、なんと言うことでしょう! あまりにも貴重すぎて生産職ではまったく手に入らない〈上級転職チケット〉! それを使ったと言うのでしょうか!?」
「すげぇ!」
「さ、さすがはハンナ様だ!」
「ハンナ様がとうとう生産会のトップに躍り出たんだ」
「こりゃあどうなるんだ!? いったいどうなるんだ!? 誰か俺にも分かるように説明してくれ!?」
「とりあえずハンナ様すごいって事だよ!」
「それはわかってんだよ!?」
なんだか想像以上に会場が盛り上がっています。
確かに生産職が上級職になるなんて珍しいですよね。私もゼフィルス君に言われたとき驚きましたもん。
そうしてしばらく司会者のお姉さんの言葉で会場が盛り上がりを見せ、収拾が付くのかと心配になったときです。そこにアイス先生が前に出てひやりとする声で司会者さんに告げたのです。
「コンテストを進行しなさい」
「イエスマム!!」
ピタリ。
その言葉がまさに合うほどの静けさがそこにありました。
司会者のお姉さんは変な汗をかいて敬礼していますし、会場の人は大人しく席に座って、立ち見をしていた人は地面に座って大人しくなります。
す、すごい効果です!? さ、さすがアイス先生。
「盛り上がるのは結構ですが、度を超えてはいけませんよ? では、審査員の方々、評価を」
「「「「「はい!」」」」」
そう言うと、ニコッと一つ笑ってアイス先生が帰ってきました。
恐れられているように見えますが、私からすれば神にも見えます!
戻ってきたアイス先生に早速お礼を言います。
「あ、アイス先生! あの、ありがとうございます!」
「ふふ、いいえ。それよりごめんなさいね、あなたが上級職だと告げればこうなると分かっていたのだけど、私の方からハンナさんが上級職に就いたと言うわけにはいかなかったの。だから騒ぎを収めることくらいしか出来なくて」
「い、いいえ! 気にしないでください! 私なら大丈夫ですから!」
「そう。では私は後ろから見ているわね。ハンナさんの作品、期待しているわ」
「ひゃい!」
き、期待されてしまいました!
ど、どうか良い点数でありますように!
そう念じて、結果発表。
私の1作目、〈ホラーパンプキン〉の点数は。
審査員、50点。観客席50点。
計100点満点と表示されたのでした。
「……ほえ?」




