#111 見学! 〈裁縫課2年生〉マリー先輩の1組!
「ふむう……これは良いものですね」
「うむうむこれは良いものです」
「とても良いものです」
「ドヤァ」
コンテスト審査員の先生方や学生さんたちが、出品されたとある品を見て唸りを上げます。
そうしてその傍らでドヤァしているのは、私が応援するマリー先輩でした。
「まさか、あんなもの、あんなものがあるだなんて」
隣の席に座るアルストリアさんもそれを見てプルプル震えながら言いました。
とんでもない衝撃だったみたいで、目がミールになりかけています。
「か、会場のどよめきがしゅごいでしゅ」
そう言って萎縮しているのは私を挟んで反対側に座るシレイアさんです。
現在、私たちは会場の観客席に座る観客です。
この〈裁縫課〉の〈作品コンテスト〉はちょっとした建物内で行なわれています。
しかし、信じられますか? この建物、校庭に建っているんですよ? はい。【大工】や【クラフトマン】さんが即行で建てていました。すごいですよね。
私たちはその会場の観客席、その最前列に座って見学していました。
どうやら〈裁縫課2年生〉のクラスは4組まであるらしく、〈30人戦〉でいくつもの作品が登場していました。
そうして今は〈1組〉の番、その大体中盤で会場や審査員さんを大きく唸らせ、どよめかせる作品が登場したのです。それが、
「マリー先輩。まさか本当に〈勇者君横断幕〉で挑むなんて」
そう、それは私も先日ギルド部屋で見ました、真ん中に〈勇者君〉と描かれた大きな横断幕でした。
そういえば、アレの作製をマリー先輩に頼んだとマリアさんたちは言っていた気がします。
本当に〈1組〉と描かれていなくてもいいのか、〈勇者君〉なんて個人を指す言葉の描かれた横断幕が売れるのか、私にはよくわからなかったのですが、その答えがここにありました。
司会者さんのお姉さんがここぞとばかりに盛り上げます。
「さあ! いよいよ行ってみましょう! この〈勇者君横断幕〉にはいったい何ポイントが付くのかーー! 審査員の方、観客席の方、採点お願いいたします!」
「10点!」
「10点!」
「10点!」
「10点!」
「10点!」
「おおーーー!!!! 審査員がオール満点です!? 〈1組〉が最高得点を出しましたー! 観客席から選ばれた学生さん方も文句なく満点の50点を提示しています! 合計100点が〈1組〉に入りましたーー!!」
「よっしゃー! 兄さんおおきに~~! あ~、この〈勇者君横断幕〉はCランクギルド〈ワッペンシールステッカー〉で販売中でーす! お求めはお早めに~」
現在〈総評価ポイント〉の部でマリー先輩が個人で出せる最高得点をたたき出しました。
そしてマリー先輩が両手を挙げて勝利のポーズを取っていました。かっこいいです。でも、その後のセールスと共に観客席の人が一斉に消えていきました。し、強か!
ゆ、〈勇者君〉横断幕がすごい……。まさか、ここまでだったなんて。ゼフィルス君は知っているのかな?
「失礼、少し離席いたしますわ」
「そうはさせませんよアルストリアさん。座ってしっかり見届けましょう! 明日に響きますよ!?」
「そうはおっしゃられてもハンナさん! あれの人気は相当なものでしてよ!? すぐに動かなければ噛めなくなりますわ!」
「マリー先輩はその辺抜け目なく立ち回っていると思いますので多分行っても無駄ですから!」
ふう、なんとかアルストリアさんを抑えることができました。
私たち【錬金術師】はアイテムも作れますが、素材を錬金することにも長けています。
アルストリアさんは今後のことを考え、素材供給で一枚噛もうとしたみたいです。さすがは大商会の娘さんです。
ですが、あのマリー先輩ですからね、多分大人気大ヒットするのを見通して十分な素材を確保出来る状況をすでに作っていると思うのです。
ふと大量納品でマリー先輩に悲鳴を上げさせているゼフィルス君の姿が頭を過ぎりましたが、多分気のせいですね。
「むむむ、勉強になりますね」
「結局マリー先輩の〈勇者君横断幕〉が単独で一番点数が高かったみたいですね」
「満点だったわけですしね。しかし、人気な人の横断幕という、このクラス対抗戦という中、観客の衝動を的確に抑えた手腕は見事でしたわ。観客50点なんて、そうそう出ませんわよ」
〈作品コンテスト〉の〈総評価ポイント〉は点数評価です。
この点の付け方は審査員枠と観客席枠があって、その両方で合計点数が決まります。
今回の審査員の方は5人、それぞれが10点満点を付けることが出来て、最大50点満点。
そのため観客席側も最大で50点を付けることが出来ます。
観客席側は不正を無くすためにランダムで50人の観客に1点を付けられるアイテムを渡して、点を付けるか否かを選ばせることができます。
50人全員が評価すれば50点が付くわけですね。
「た、多分、雰囲気に負けて、点をポチッとした人が多かったのかも」
「そうですわね。むしろこれで押さなかったら女性からの視線が大変な事になったかもしれませんから、それも含めて策士ですわね、あのマリーという先輩は。勉強になりますわ」
「あ、あはは」
確かに横断幕が広げられたときの会場のどよめきは凄かったです。
「あれ欲しい、あれで勇者君を応援したい」「あれは売り物なの!?」という声が観客席の何カ所から上がっていましたからね。あれで点を付けなかったとバレれば大変な事になったかもしれません。
50点満点という数値には色々な事柄が混じっているんですね。
そこから〈総評価ポイント〉の結果は〈1組〉が有利に終わり、続いての〈作品対決〉では〈1組〉が圧勝。
最後の〈作品作り〉でも〈1組〉が、なんだかこれを着て絶対に表を歩けないむしろ動けない、というような巨大スカートの純白ドレスを仕上げて審査員の美人教師に着せ、大絶賛を貰って勝利。
結果を見れば〈1組〉が圧倒的勝利で終わっていました。
す、すごい見応えある〈作品コンテスト〉でした。
後書きに告知失礼いたします!
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