#011 ハンナちゃんにはじめてのともだちできました。
「うはぁ。やっぱり下層はすっごいですよー。採取ポイントがたくさん残ってます!」
「発掘ポイント、ある」
「このダンジョンは釣り系がメインだけど、やっぱり下層は色々と残っているみたいだね。木が無いのが残念だわ」
私たちが目的地である第8層に降りるとモナ君のテンションが上がりました。
あまり話さない【炭鉱夫】のソドガガ君も歓喜の声が出ています。
ただ地下で伐採する木が無いため【コリマー】のアンベルさんはため息をついていますね。
「フィィィィッシュ!!」
あ、【フィッシャー】のタイチ君はもう一匹釣り上げています、早い。
これが〈採集課〉の人たちの雰囲気なんですね。〈生産専攻〉とはまた違う感じです。
「近くに敵影は、無いようです」
「あら、〈弱敵反応レーダー〉じゃない。いいもの持ってるわねサティナさん」
「はい。父が持たせてくれました」
こちらでは〈支援課〉で【アイテム士】のサティナさんが何か大きなペンダントのようなもの持っていました。
ミーア先輩によると、「これは周囲の弱いモンスターの位置を探るアイテムよ」と教えてくれました。
凄いアイテムですね。お高いものでしょうか?
「でも使いすぎると低確率で壊れるのよ」
「へ!?」
なんてことでしょう。そんな貴重なものを使ってもいいのでしょうか?
しかし、ミーア先輩の言葉の後でもお構い無しにサティナさんは使ってくれます。これはお礼を言う場面です。
「サティナさん、そんな貴重なものを使ってくれてありがとうございます」
「いえ、ハンナさんは誤解しています。私の職業は【アイテム士】ですから、これくらいのものはリスク無く扱えるのです」
聞いてみると【アイテム士】とは、どちらかというとアイテムを使う専門職という位置にいるみたいです。
メインはアイテムの能力の増加ですが、低確率で壊れるアイテムを壊さずに使えたり、回数制限のあるアイテムを時々回数を減らすことなく使えることも出来るそうです。
「凄いですね!」
私は羨ましくなりました。
「いえ。そんな使い勝手はよくないです。確かに強力であります、ですがアイテムを使うので支出で死にます」
「死ぬのですか!?」
どうやら探索時も支出のほうが嵩むことが多かったみたいです。
あまり表情の変化に乏しい感じのサティナさんから、何やらどんよりとした空気が流れます。擬音にすると「ずぅーん……」という感じです。
しかし、それも次の話で変わりました。
「ですが〈採集無双〉のパーティーに入れてもらえたのは幸運でした。おかげで素材の収集が捗ります。それに生産職のつながりまで持っていようとは、福音でした」
表情からは読めませんが、なんとなく喜んでいるのは伝わってきます。
支出が厳しかったけど、上手く採算が取れる手段が見つかったということでしょう。
それに生産課のつながりということは。
「もしかして、私ですか?」
「はい。ハンナさんが作られたアイテムの数々。感服しました、よろしければ素材を取ってきますので私にアイテムをお作り願えますでしょうか?」
まさかの商談でした!
こんななんでもない話の流れで!?
「あら、ハンナちゃんに初めての顧客? よかったじゃない、おめでとう~」
「えう、で、でもミーア先輩、私の品なんて、それに値段だってわかりませんよぉ」
「そこはわたくしにお任せくださいですわ」
「アルストリアさん!?」
振り向けば興味津々で目をキラキラさせたシレイアさんと、自信ありげに胸を張るアルストリアさんがいました。
そういえばアルストリアさんは大手錬金術師の商家の娘とのことです。目利きには自信があるともおっしゃっていました。
「わたくしもハンナさんに多くを教わったのですもの、お友達ならお返しをするのが礼儀ですわ」
「はうっ、お、お友達!」
「一方的な関係なんてすぐ破綻してしまいますもの、ハンナさん、こういうことは得意ですからどんどん頼ってくださいませ」
「かふっ!」
なぜかアルストリアさんの言葉にシレイアさんが打ちひしがれていましたが、私にはそれを気にする余裕はありませんでした。
ジーンと感動します。アルストリアさんの言葉が凄く嬉しかったです。
「あ、アルストリアさん。頼ってもいいのですか」
「いいのですいいのです。お友達ですもの」
うう、クラスで孤立しているような気がしていたのは私の気のせいだったみたいです。
アルストリアさん、なんていい人なんでしょう。
わ、私だってアルストリアさんのお友達になりたいです!
「アルストリアさーん!」
「わ、わあ。も、もうハンナさんったら、急に抱きつきますとビックリしますわよ」
「私たち、友達です!」
「ええ、わたくしたちは友達ですわ」
思わずアルストリアさんを抱きしめる手に力が入ってしまいました。
私、もしかしたらギルド以外で初めての友達かもです。
お父さん、お母さん、ゼフィルス君、私、お友達が出来たよ!
「ひう、オーラが、オーラが眩しいっ!」
「シレイアさんはあそこに混ざらなくていいの?」
「ミリアス先輩、私には、私には、あのオーラは眩ししゅぎましゅ!」
なぜかシレイアさんが溶けそうになっていました、なぜでしょう?




