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6話~盗賊

 周囲には変な緊張感が走っている・・・木の上に潜んでいる奴に、影に隠れている奴、誰も仕掛けてこない。刀を構えている以上相手も気付かれてることに気付いてるはずなんだが、どうも動けずにいてるみたいだ。

「出てこないなら仕方ない、そこの木の陰に隠れてる奴出てこい・・・もし出てこないなら木ごと切り殺す。5・・4・・3・・2・・・1・・」

「はぁ~待て待てそっちに襲い掛かるつもりはねぇよ。」

 木の陰ではなくそれよりも後ろから1人の男が現れた。強そうな男だ。

(こいつ強いな・・・少なくとも俺が今まで戦ってきた冒険者よりは確実に強い)

「襲い掛かるつもりはないならどうして俺らを包囲している。こんなことされちゃぁそっちにその気がなくても襲われると思うだろ?」

 構えはまだ解かずにそう言った。

「完全にバレてんのな。おい!全員引かせろ!こいつ等はターゲットじゃねぇよ・・・これでどうだ、そっちももう少し緩めてくれや」

 そうして部下に包囲を解かす指示を出し、その指示を受けた部下たちは統制のとれた動きで包囲を解除して見せた。その動きからも相当訓練していることが伺える。

 俺も完全には警戒心を解きはしないが空気が張り詰めないくらいには緩めた。


「よしよし、これで話できるな。俺はザンザスってんだ。ここら辺の盗賊を取り仕切ってる頭目ってやつだな。よろしくな。」

「そうか、俺はヤクモだ。一応冒険者でDランクだ。以後よろしく。」

 とりあえず自己紹介だ。

「ほぅ盗賊って聞いて普通に話してくる奴は初めてだ。大抵の奴らはその時点で攻撃してくるんだがな。」

「他の奴らなんざ知らん。むしろ盗賊の方が俺らを問答無用で殺しに来るもんじゃないのか?」

 俺の知ってる盗賊ってのは私利私欲のために犯罪を犯すことに何も感じてないような奴らってイメージなんだが、コイツは違うみたいだな。

「俺が仕切ってる盗賊は腐った貴族どもをメインターゲットにしてるからな。後は俺らを狙ってくる冒険者とかな」

「なるほどな、ちゃんとやるべき相手を見定めてるって訳か・・・俺も俺に危害を与えようとしなければ何もしないさ。今回ターゲットにしてるのは誰なんだ?」

 それでやっていけてるのだからこの盗賊たちの技量は高いんだろう。とりあえず俺らと敵対することはないみたいだから、引き出せるだけ情報を引き出そう。

「あぁ・・・最近王国からこっちに腐れ貴族がくるって噂されてるからそいつらを襲おうと思ってな。そいつんところに手練れもいてるみたいだから用心してんだよ。」

 貴族がアローンの街に来る?面倒だな、普通にしてたら大丈夫かもだが万に一つも会いたくねぇ・・・

「なるほどな・・・ザンザス達盗賊団がその貴族を狙ってることを秘密にしておけばいいんだな?」

「まぁそういうことだ。俺らは腐っても盗賊だからな、最初にメインターゲットは腐れ貴族だって言っても、俺らの存在を感づいたお前にギルドに報告されるとやりづらくなる。お前が弱いなら殺して終わりだが、そうじゃねぇ。だから取引だ」

「取引か。俺らが黙ってることによってお前たちは何をしてくれる?」

取引に応じると分かったからか、部下に命じ後ろから1人の少女を担いで連れてきた。

「まずそこで震えてる少女2人にだ。勘違いしないで欲しいのは俺たちが襲ったわけじゃねぇ。ゴブリンメイジにやられてるとこを助けてやっただけだ。丁度いいし取引のカードとして使わせてもらうぜ。この少女を渡してやるから俺らの事黙っててくれや」

 確かに少女に目立った傷はないし、良い手だ。見たところ同い年位だから2人の同情を煽る事ができるだろう。

「わ、わかったわ。今日あなたたちに会ったことは誰にも言わないわ」

 現に2人はその申し出を受けていた。

「よし、後はヤクモだが・・「それ、こんなんでもいいか?」お?なんか欲しいものがあるのか言ってみろ」

 俺はカレン達には聞こえないようにザンザスの耳元で喋った。

「何々・・・・ほ~~いいぜそれで。そん時はまたこの森にこい」

 ダメもとで言ってみたが保険は出来たな。俺は気絶してる少女を渡された。

「それじゃ今回はこれで解散だな。取引終えるまで死ぬなよ」

「そう簡単にくたばる俺たちじゃねぇよ。じゃぁまたな!」

 ザンザスたちは森の中へと消えていった。


「俺らも変に疲れたし帰るか」

「ヤクモさんはあの人に何を頼んだんですか?」

「そうよ!あんただけなんで特別なのよ!」

「そりゃお前らと違って強いし気にするな。それよりも絶対に誰にも言うなよ」

 俺は少し強めに脅しをかけて置く。これはこいつらの為でもあるのだ。

「「わ、わかってるよ」」

「じゃぁ帰るぞ。ある程度は戦えるって事がわかったし、次からはもっとキツくやるからな」

こうして俺たちは来た時より1人多い4人で街へと帰ることになった。


 街に帰っている間に気絶した子は目を覚まし、同じくらいの年頃というのもあるのだろうが、街につく頃には三人とも仲良くなっているみたいだった。

 この子の名前はシェレンという名前らしい。武器は弓で冒険者ランクはEランクだ。

 この3人でパーティを組むのなら少し戦略が広がりそうだが、ヤクモの負担は更に増えることだろう・・・



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