3話~上位種?
書き貯め投下中ぜよ
オークを倒した後、音のする方へ向かったヤクモは一応戦闘態勢は取ったまま移動していた。聞こえてくる音の感じだとどうやら少ない数ではないようだからだった。争いの近くに到着したヤクモが目にしたものはあまり良い状況ではなかった。
「おいおい、流石にこの状況は想定外だぞ・・・」
ヤクモが目にした光景は魔物が大量にいてる景色ではなく、人同士が争っている場面であった。オークかゴブリン、もしくは他の魔物がいてると思っていたヤクモとしては予想外もいいところだった。
(3人で男が1人に女が2人、女2人で男の攻撃を何とかしのいでるってとこだな。どっちかが盗賊か?わからん・・・ん?)
理由を考えていると争ってる所から声が聞こえてきた。
「アンタッ!こんなことしてこれからも冒険者としてやっていけるとでも思ってんの!?」
「思っているさ、お前ら2人をここで生贄にして俺は逃げさせてもらう。ギルドではこっちの都合のいいように報告させてもらうからよぉ!だから安心して生贄になりなぁ!!」
「う・・ぐぅぅ・・・下種め・・・」
「下種で結構!自分の命が大事だからなぁ!どうせお前らはここで終わりなんだよぉ!」
男の攻撃が激しくなり次第に受けきれなくなってくる。
(実力的には男が上か、それより生贄ってことはこの冒険者たちで勝てないナニカがこの近くにいてるという事か・・・厄介な)
こんな状況でも手出ししないヤクモは正義感の欠片ももっていなかったようだ・・・そうこう考えてる間にこいつらの争いは終幕にむかっていた。
「これでお前らの生贄は決まりだな、じゃぁ俺のために時間稼いでくれや!」
「うぅ・・くそぉ・・・」
「・・・・・・」
男が勝ち走って去っていった。やられた方は死んではいないようだが動けないぐらいには削られてしまっていた。
すると奥の森からオークが一匹出てきた。いや、ただのオークではなさそうだ。普通のオークより一回り大きく、簡素な鎧を身に着け大剣を担いででてきた。
(オークの上位種ってとこか・・・あぁなるほど女を置いていくとオークは攫ったりするから生贄か。ゲスイ事を考える男だ)
逃げた男はこいつから逃げるためにパーティメンバーを傷つけて生贄にすることで自分だけが助かろうと画策したわけである。その後ギルドには自分の好きなように、逃げた自分が悪くないように報告するだけなのだ。
「くそ・・・あんな奴とパーティ組むんじゃなかったわね」
倒れた女性の1人が起き上がりオークへと向き直す。だが膝が笑っており到底戦える状態ではなかった。もう1人は気絶しているのだろう。
「どうにかこいつから逃げ出さないと・・・」
(ここで立ち去ってもいいのだが、あの位ならどうとでもなりそうだから殺るか。だが裏に回り込む時間はなさそうだから正面からいく)
片手で投げナイフを3本創り出し準備完了。
シュッ・・・投げたナイフは2本が弾かれ1本は鎧のついてない部分に刺さった。ヤクモは投げると同時に自らも地面を駆けオークの前へと猛スピードで迫る!
「死ね・・」
抜刀!・・・!?後ろへと飛んで避ける。
抜刀している途中で持っている大剣を振り下ろしてきやがった。だが肌を切り裂かれた痛みからかオークが雄叫びを上げる。
それに一刀の下真っ二つに切り捨てようと思ったが鎧に阻まれ止めを刺すまではいかなかった。
「あの状態からでも反撃してくるのはすごいな。ちっ・・・鎧のせいで刀も刃毀れしてやがる。まぁ多少のダメージは与えれたからよしとするか」
鎧の上を通ったからか刃がズタズタになっていた。もうほとんど使い物になりそうもない。
「首の部分は何もまとってないからそこを突き刺して引けばいけるな」
呟くと同時にオークの懐に潜り首に突き刺して横に引き裂く。途中で刀が折れたがオークは絶命していた。
「ただのオークと何ら変わらんな」
見た感じでは明らかに上位のオークだったがヤクモにとっては普通のオークと何一つ変わらなかったようだ。
「すご・・・」
背後で声が聞こえた。そこで思い出す、他に2人いてることに。折れた刀を鞘に戻しながら問いかける。
「あぁ大丈夫か?」
「え、ええ大丈夫よ。この子も気絶してるだけみたいだし」
「そうかそれならば問題ないな・・・・じゃぁ俺は行くぞ」
こいつらが誰かに話すとも限らないからオークをしまう訳にもいかず、折れた刀も直すこともできないのだ。
下手に何か言われるのも面倒なのでさらに奥へと足を踏み入れることにしたのだった。
「ちょっと待って!」
「・・・・」
踏み入れることは出来なかった・・・呼び止められた以上一応足を止めそちらへと振り向く。
「こんな状態の女の子を放っておいて先に進むのは薄情だとは思わない?」
「・・・・は?」
この女は何を言っているのだろう?薄情?オークに襲われそうだった所を助けてやった事はもう忘れてしまったのだろうか・・・いや、それとも俺が殺らずとも自分で倒せたとでも言いたいのか?
色々と考えていると我慢できなくなったのか叫ぶようにいってきた。
「だから!・・・~~~~ッ!街まで一緒に帰って欲しいって言ってるのよ!!」
「あぁ・・・」
流石に気絶している人を守りながら街まで帰るのは難しい、だから丁度よく現れた俺に街までの護衛的な事を頼むのだろう。
俺は気絶している女の子と俺と喋ってる子を交互に見る。
「街まで一緒に行くのは構わないが、こちらとしても依頼でここに来ているんだ。それを放置してまで帰る・・・言いたいことは分かるな?」
俺はすでに依頼のオークは始末しているのだがあえてこう言った。わざわざ教えてやる必要もあるまい。
「な、なによ・・・」
若干後ずさりながら聞いてくる。
「報酬だ。俺が自分の依頼を放置してまで、お前たち2人を無事に街まで送ってやるからそれの報酬はなんだと言っている」
「な!?」
予想以上に驚いている。コイツは何の見返りも用意せずに助けてもらえるとでも思っていたのか?甘いな・・・まぁ俺も帰るだけだからそれでもいいのだが、それはなぜか嫌なのだ。
「どうする?何もないなら俺は行かせてもらうぞ」
「待って!・・・けど私たちも駆けだしだし、お金も物もない。かと言ってこの調子で街まで帰れるとも思わないし・・・・・ハッ!?まさか!」
ブツブツと喋ってると思ったが、急にこっちを睨んできた。
「ん?なんだ?」
「まさか私たちの身体目当てってわけね!私たちがお金も何も持ってないから「はぁ・・・阿呆」街まで守ってくれる代わりに・・・何よ」
こいつは自分にどれだけ自信があるのだろうか?いや、この世界だとそういう犯罪行為が元の世界より多いのかもしれないな。だが俺の目的はそうじゃない。
「はぁ、阿呆と言ったんだ。俺が求めているのはそんな事じゃない、俺はあの街には最近到着したばっかりだから報酬として街を案内してくれればそれでいい。物も金も求めてねぇよ・・・それともう1つあった、俺の能力は誰にも言うな」
俺はそう言って倒したオークを収納して見せた。
「え・・・?あんたそれってアイテムボックス。」
予想通りの反応だな、まぁどのみちいずれはバレるだろうが言いふらされるのもいい気はしないのだ。
「質問もやめろ。冒険者ならとっておきの1つや2つ持っているもんだ」
「・・・わかったわよ、その条件でいいわよ」
「交渉成立だな。帰るにしてもその子はどうするんだ?気絶してるみたいだが担いでやろうか?」
気絶してる女の子を指さしながら聞いてみた。
「う~~あんたに任せるのは不安だから、私が背負って歩くわよ・・・」
まぁ困ってる奴に報酬だとかなんとか言う俺は信用されてないんだろうよ。女の子は気絶した子を背負い歩き出した・・・・若干ふらついているがな。
「ほら、早くいくわよ!」
「・・・そうだなさっさと帰るか」
俺たちは街へと帰った。帰りは特に厄介な魔物に出会うこともなくすんなりと帰ることができたのだった。なお途中で背負われた子が目を覚ましたので、途中から3人で歩いて帰ったのである。