善意の婚約
「私はいいの」
そう言ったのは、幼なじみのエリーという名の女の子。
幼い頃から、他人の目を気にしているのか、とにかく早とちりが多いし、自分では善意だと思っている行動が多かった。
僕は、幼なじみだから、気心も知れているし婚約もいいなと思っているから、両親からそう言われたときには、心の中では“やった~!”と思ったのに、エリーはやっぱりそう言った。
「アーサーには、もっといい人がいると思うの」
こうなると、エリーは引かないので…
「それじゃあ、いい人が見つかるまでの間でいいから」
そう言うと、少し笑みがこぼれるような表情をすると…
「えっと…、よろしくお願いします」
そう言う風に言ってもらえた。
しかし、それから同い年や前後数年の女の子を片っ端から“どう?”と聞いてくるのには、困った。
彼女としては、これは“いい人”を探すための善意だという。
「エリー、もう少し年を取ってからにしよ。まだ、相手がどういう性格か品格や知識などがあやふやだから」
「アーサー、年を取ると婚約している人が多くなって、自由に決められないからダメよ」
僕自体は、こんな善意の押しつけをする彼女のことが好きだ。
しかし、そのうち善意のために婚約者同士を別れさせて、その女性を私に紹介しないことを祈るばかりだ。
…後日。
もっと、とんでもないことになったのは、想像を越えていた。
善意って、良い言葉です(笑
『善意の婚約破棄』は、このお話の後日の話となります。