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異世界運命記  作者: ドカン
幕間
89/120

第1話 目覚めた力

 「てかどこ行ってたのよ」

 「色んなとこだけど」

 「は? なにそれ」

 「もーね、語り尽くせないぐらいたくさん色んな所行ったんだよ!」

 「ふふっ、ゆっくりと聞かせてくださいね」

 3人は目の前まで来たコダの町に入る。久しぶりにやってきたはずなのに、どこに何があるのか、ちゃんと覚えている。とは言っても、あまり行くとこもないのがこの町だ。とりあえず、宿屋に向かう。部屋が空いていたらしばらくはそこで寝泊まりをしようと考えていた。

 「あれ、空いてない」

 「あの、これ」

 「閉店!? どうして!?」

 入口だった場所にかけられた板、そこには「閉店します」の文字。一体どうしてしまったのか。既に管理人もいないので、この宿屋だった建物を管理している人はいないのだろうか。

 「仕方ないかぁ。次、どうする?」

 「取り敢えずギルドに行きましょうか」

 「そうだね。そうしよう」

 そして3人はこの町のギルドへ向かった。しかしそこもなんだか覇気がなく、閑散としている。中にいる冒険者も少ないし、寂しくなってしまっている。

 「あれ、どういうこと?」

 「お前ら、随分と若ぇな。他所からやってきたのか?」

 ギルドにいる冒険者に話しかけられる。中年のくたびれた風貌をしている男だ。彼以外にも何人か冒険者はいるが、全員似たような感じで、数えられるほどに少ない。

 「久しぶりに帰ってきたんですけど、何かあったんですか? 前と全然違うじゃないですか」

 「お前ら知らねぇのか? もうすぐギルドは解体されんだよ」

 「えっ!?」

 寝耳に水とはまさにこのことである。頼ろうとしていた矢先のことだ。しかしこの町のギルドが無くなるだけなら、他の町のギルドを頼ればいい。そう考えていた。

 「ほら、新聞にも書いてあるぞ。2日前のだけどな」

 颯達は渡された新聞に目を通す。そこには1面に大きく「ギルド解体」の文字。どうやら、消えて無くなるのはこの町のギルドだけではないようだ。ギルドという、組織そのものが無くなるらしい。新聞には続きが書いてある。

 ギルドはゴールド商会が、魔王との戦争後に職を失った労働者や軍人への救済として始めたものであるが、昨今の情勢を鑑みてその必要性は減少した、とされている。

 「いやまだ必要なんだけど!」

 「採算が取れなくなったってことかしら」

 「多分そういうことですね。最近はどこも復興が目覚ましいですし。帝国と神皇国との戦争があったとはいえ、それでも経済的には上向きなはずです」

 どこにも色々と事情があって、颯達はそれに巻き込まれる形となってしまったらしい。こうなってしまった時に誰も責任なんか取ってくれはしないし、リスク管理が甘かったと言わざるを得ないのだろう。

 「難しい話はよく分かんねぇが、残念だったな。ま、お互いうまくやろうぜ」

 「えぇ、はい。そちらこそお気をつけて。あ、新聞ありがとうございました」

 颯は冒険者に新聞を返した。

 「あ、そうだ! 受付の子ってどうなりました?」

 「ん? あぁ、受付嬢ね。さぁ。帝国に行ったことは知ってるが、そっから先は知らねぇな」

 このコダの町で受付嬢をしていた子とは、3人も帝国で1度会っている。戦場に行く前だったので、その後彼女がどうなったのか、見知った顔なので気になりはしていたのだが、この町に帰ってきていないことは確からしい。帝国にいたままなのか、それともどこか別の所へ行っているのか。ギルドが無くなるということは受付嬢の仕事も無くなるということである。

 「このギルドって誰か管理してるのかしら」

 「いや、誰もしてねぇ。職員ももう1人もいねぇから仕事も受けらんないぜ」

 その後、少しだけ話をしてギルドを出た。もうここに寄ることもないだろう。寂しさだけが募る。

 「まさかギルドが閉鎖するなんて......」

 「仕事も失っちゃいましたね」

 「まぁ最近はギルドの依頼なんて引き受けなかったけどさ」

 ギルドを利用しなかったのはいつからだろう。それすらあやふやなほどに、3人とギルドの間の心理的な距離は離れていた。もしかするとこうなることも必然だったのかもしれない。

 「金銭面はどうにかなるとしてもよ、寝泊まりする場所がないわ」

 「それも探さなくちゃいけませんね......」

 「いや、寝泊まりする場所なら、あるじゃん」

 「え? どこよ、それ」

 「夜に使った小屋ですか?」

 「そう、そこ!」

 「でもあそこ汚いじゃない。ボロいし」

 「直せばいいじゃん」

 「ならいいけど。私は手伝わないからね」

 「3人で使うんですよ? 少しは手伝ったほうが......」

 「いや、大丈夫。俺1人で出来るよ。それじゃ行こう」

 そう言って3人は、夜に泊まった誰もいない小屋の前まで汚い。当然ではあるが、相変わらずボロい。

 「で、どうすんのよ」

 「まぁまぁ。すぐに作り直すから」

 颯は若干不機嫌なシュリィをなだめながら、小屋に手をかざす。右手を左から右へ、横にスライドさせれば、目の前のボロボロだった小屋は、いつの間にか新築同様に綺麗な小屋へと変わっていた。

 「......なにそれ」

 一瞬にして元のボロボロだった小屋が見る影もなく綺麗で立派な小屋へとなったことに、シュリィもヒロナも驚きを隠せなかった。しかし当の颯はなに食わぬ顔で突っ立っている。さもこれが当然かのようだ。

 「なにって、直したんだよ。これで今日はここで寝泊まり出来るはずだよ」

 「直した......寝泊まり......」

 「魔法なの?」

 「あー、どうなんだろ。別に魔法って感じじゃないけど」

 「魔法じゃないならなんなのよ」

 「なんだろうな」

 「答えなさいよぉ! こんなの出来るなんて聞いてないわよぉ!」

 「答えろって言われてもなぁ。俺が頭の中で想像すれば、それが現実になるんだよ。例えば、ほら」

 颯はもう一度、手を小屋にかざした。すると今度は小屋が一瞬のうちにして、大きくなった。具体的に言えば、部屋がもう1つ作られたのだ。先程はただ修理しただけであり、言わば元あった形を復元したに近いが、今回は全くの無から創造した。その力が発揮されるほどにヒロナとシュリィは何が起きているのか理解出来なくなる。

 「なんでこんなことが出来るって今言うのよ。最初から言いなさいよね」

 「俺もさっき出来るようになったんだよ。ほら、朝起きたら俺がいなかったじゃん。その時だよ」

 「そんなことしてたんですか......」

 確かな実感として颯にはあった。あれ以降、自分がそれまでの自分とは全く異なる存在になっているという実感だ。まるで神様にでもなったかのように、全てを知り、全てが思い通りになる感覚。悟りを得たとでも言えばいいのだろうか。

 普通、自分が変わってしまったことに気付いたのならば、きっと戸惑うだろう。自分が自分でなくなり、狂うように精神が蝕まれてしまうかもしれない。しかし颯はそうはならなかった。今の自分が何者で世界が何なのか。些細なことから世界中のことまで。全てを知り、そしてそれが何なのかを知っている。結果としてあらゆるものを思い通りにすることが出来るようになった。

 それらは絶えず颯の頭の中に残り続け、颯自身も絶やすつもりはない。つまりは現実は現実でしかなく、それ以上にもそれ以下にも変わることはないということである。

 とにかく、それはさておいて、今は目の前のことを続ける。

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