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異世界運命記  作者: ドカン
第5章 希望と絶望の狭間
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第52話 陰謀

 シグルやカグヤと別れた3人は、神皇国内でやるべきこともなくなったのでファヴニール達のもとへ戻った。

 「あら、帰ったのね。で、どうだったの?」

 ヘラが3人をまた迎えてくれた。

 「うーん、なんて言えばいいのかな。全然戦争に対して心配もなにもしてなかったよ」

 「ふーん、興味なしってことね」

 3人の報告を聞いた魔人達からは、「神皇国は国民にすら責任感がない」だとか「奴らは考える頭を持たない」といった声が聞こえてくる。

 「いや、興味なしってよりかは、余裕があるって感じかな。少なくとも戦争に対しては消極的じゃなかったよ」

 神皇国の市民と話して得たことをヘラ達に伝える。ここにいる魔人は、明確な敵である神皇国を脅威に感じてはいるが、見下したいとも思っている。そのため、颯達が伝えたことが彼らにとって都合よく変えられてしまいがちになる。ヘラでさえ、若干自分達に都合よく分析しがちだ。

 それはなんだか良くないような気がして訂正を付け加えるように、より具体的に言った。少なくとも颯はそのつもりだった。すると今度は「神皇国は調子にノッてる」だとか「奴らは現実を見れていない」などと言い出していた。

 颯達はこれ以上、神皇国について積極的には語らなかった。

 「まぁいいわ。教えてくれてありがとう」


 神皇国の中央に位置する円卓にて、召集された聖騎士達が並んで席についていた。ここでは、神皇国とそれに属する国や地域の統治についての会議が行われている。

 聖騎士が全員揃った後、彼らを束ねる若き騎士王モルドレッドが部屋に入った。前騎士王アーサーの立場を継ぐ彼は、この国の最高権力者である。彼は聖騎士達よりも一段高い席につき、一息ついた後に会議を始めた。

 「今回の議題は、帝国との戦争についてだ。勝敗に関してはここにいる誰も心配はしていないだろう。探し物の滅神大剣も手に入ってはいないようだしな。つまり私達がここで話すべきは、この戦争の大義名分についてということだ」

 神皇国は自分達が帝国に対して制裁を課すのは、実に正当なことだと信じて疑っていない。しかし、そうした正義を実行するためには大義名分は不可欠である。この場で正義を定めることにより、聖騎士達の意思統一をし、国民や諸外国に対しても一点の曇りのない真っ当な正義を示すことが出来る。そのための会議だ。

 初めに話しだしたのは、ランスロットという聖騎士であった。

 「王よ。最近の帝国の行き過ぎた、目に余る行動を見れば、我々が正義であるということは間違えないと思えます。魔人達の領地は人類が公平に分配すべきであったはずなのにも関わらず、一方的に帝国だけに有利になるようにせしめた。その頃の帝国は疲弊しきっていましたから、我々は目をつぶりましたが、しかし、それだけで飽き足らずに他国にまで侵略を仕掛けている。中には神皇国の庇護下である地域にまで手を出しているとか。これは我々が正義に則って秩序を取り戻さなければならない。大義などそれだけで十分に足りるのですよ」

 ランスロットの語ったことは事実であった。帝国は他国を侵略し、領土を拡大し続けている。神皇国はメンツを潰されているし、損なことも多い。国民からも帝国に対しての不満は高まっており、応えなければならない。

 しかし問題はそれだけではない。別の聖騎士が話す。

 「帝国に気を配るのはいいですが、最近は魔人達の動きが活発化してきていると報告に上がっています。こちらはいかがなさいますか」

 ここで話題に上がった魔人とは、ファヴニール達のことだ。彼らは既に小競り合い程度のものだが、接触しておりお互いに注意を張っていた。

 「そのことも話そうと思っていた。教会が口煩くてな。魔王はもういないというのだから、大した脅威ではないと言っても聞こうとはしない。困ったものだ」

 「奴らは奴隸を解放して勢力を拡大しているとのことです。そして帝国の奴隸のほとんどは魔人だとか。それなら、魔人の奴隸が残党に解放される前に我々が処分をする、という風に説得するのはどうでしょう」

 「帝国の奴隸をか?」

 「えぇ」

 「良い案なのではないでしょうか。おそらく帝国はこのまま市場に奴隸を流通させ続けるでしょうし、何を言っても変わるとは思えません。教会を納得させつつ、戦争の大義をまた1つ増やすことが出来るのです」

 「確かに、悪くはないな」

 モルドレッドは出された意見に頷いた。

 「他に意見のある者は?」

 誰も異を唱えるものはいない。こうして正義を実行するための大義名分が、ここに出来上がったのだ。

 円卓での会議は終わり、騎士王は自室へと戻った。扉を開ければ、我が物顔でそこにいたのは、神皇国の宮廷魔導師マーリンだ。女性でありながら、神皇国で最も優秀な魔術師として、彼女はこの城にいる。

 「あら、もう終わったの?」

 「あぁ、別に意見を争わせるようなことでもなかったしな。意思統一を図るためのものでしかない」

 「そっ」

 「興味なさそうだな。まぁ、君の願い通りに帝国とは争うことになるよ」

 「勝てるんでしょう?」

 「・・・・・・当然」

 モルドレッドがすぐ答えられなかったことにマーリンは引っかかる。

 「不安なの? 騎士王ともあろう御方が。まるでアーサーみたいね」

 「あんな奴とは一緒にするな! 見てろ、すぐに勝つさ」

 そう言ってモルドレッドは部屋を出ていった。自分の部屋であるにも関わらず。よほど嫌だったのだろう。扉を閉める音が大きかったことからも分かる。

 そもそもアーサーとは、先代の騎士王であり、モルドレッドの父親である。騎士王アーサーは優れた王だった。彼は民から慕われ、教会とも上手くやっていた。しかし、魔人とも戦争において、非戦派だったアーサーは積極的に戦争に参加しようとはしなかった。前線で戦っていたモルドレッドは、そのやり方に強く反発していた。彼以外からも、不満の声が上がり始めていた時、表向きには病死ということにし、数名の仲間と共に父親であるアーサーを暗殺、自ら王の座につくこととなった。その後、人類は魔人に勝利することとなる。

 結果的にはモルドレッドが率いる神皇国が本格的に参戦したことにより、人類は魔人との戦争において優勢に立つことが出来たとの評価もされている。新たな騎士王は多くの人々から支持された。

 モルドレッドが自室を飛び出していったことによって1人残されたマーリンは、深く寛ぐ。静かながらも綺羅びやかな部屋で、マーリンも自らの思いに耽る。

 戦争がいずれ起こることは初めから確定していたことではあるが、帝国との戦争にあまり乗り気ではなかったモルドレッドを焚きつけ、争いが早期に起こるようにと図ったのは彼女である。帝国との戦争は、彼女にとっても大事な意味を持っていた。かつての師であるべンガーのもとで共に学んだグンナルがいるからだ。マーリンは彼に一生忘れることのない恨みや憎しみを抱いている。元々、神皇国とは何の関係もない彼女が今こうして、この国の宮廷魔導師をしているのも、帝国にグンナルがいて、それに対抗出来そうな、勝てそうな国というのが神皇国だったからでしかない。

 簡単に言ってしまえば、彼女は大国を使って個人的な復讐を果たそうとしているだけであった。それ以外のことはとくに頭にない。この戦争で帝国に勝利すれば、遂にあの男の鼻をあかすことが出来る。それさえ出来ればもう思い残すこともないほどに自分の人生は満たされるに違いないだろう。来ると確信しているその時を夢想しながら、彼女は微笑んだ。

 「ふふ、ふふふふふ!」

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