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異世界運命記  作者: ドカン
第5章 希望と絶望の狭間
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第50話 輝く国に集う、光の欠片

 颯達の乗る魔人の一団が神皇国付近に到着した。魔人は神皇国に入ることが出来ない。一団は颯達を下ろし、予定通り内部に潜入して調査してもらうつもりだ。

 「多分、この道から入れると思うから。別に大したことは望んでないから、よろしく。終わったらここに帰ってきてね」

 ヘラにそう言われ、3人は神皇国へと入国する。手渡された、魔法によって偽造されたパスポートを開示して信用を得る。

 やってきたのは神皇国の中心地、聖都ロンドニア。一目で綺麗で整った街だと分かる。中央にそびえ立つ巨大な城は、この国の強大さと正しさをこれでもかと訴えてくる。すれ違う人のほとんどは、白く装飾のない清潔感の溢れる衣服を身にまとっている。明日の食に困る人はおらず、ここに暮らす全ての人は豊かさに包まれていた。道端に寝転ぶ者はいない。貧しさとは無縁であるかのような、この国の人々は皆、高い教養を兼ね備えている。この統制されたかのような道徳とそれ以外の全ては、国家の景観を限りなく神秘的なものにまで引き上げていた。

 街の中を歩く3人。ぶらりと歩きながら、ここに来た目的を果たそうとする。ちょうど近くを歩いていた青年に話しかける。どういった設定がいいだろうか。

 「すいません。少しお伺いしてもよろしいでしょうか?」

 「外国の人?」

 「えぇ、まぁ」

 「顔見れば分かるよ。外国人って顔してるもん。で、何聞きたいの?」

 青年の方から、こちらに観光にでも訪れた外国人というようなレッテルを貼られた。半分は正しいし、そう思い込んでくれているのならそっちの方が都合がいいので、それに話を合わせる。

 「この国に来るの初めてなんで、色々ですかねぇ・・・・・・」

 「随分と大雑把だね。でも神皇国は語ることの尽きない国だから、何だって教えてやるよ。まずは、そうだなぁ・・・・・・」

 そう言った青年が話したのは、この街の中央にそびえ立つ城に住む聖騎士についてのことだった。聖騎士というのは、特別な資格を得た者たちであり、一人ひとりが聖剣と呼ばれる特殊な武器を扱う。彼らの選定は教皇と教会が行い、啓示を受けた教皇が選ばれた者に聖騎士の資格を与えるということだそうだ。

 聖騎士は、教会が掲げる神に忠誠を誓い、その正義のもと活動をするらしい。この国を守護する聖騎士は、神皇国民の憧れであり希望である。彼らの扱う聖剣が、人類が扱う事の出来る兵器の中で最も強力な力を有しているということも、聖騎士が希望となる理由の1つでもある。また、聖騎士の中でも、騎士王と呼ばれるものは特別な存在だ。王は一人ひとりが強力である聖騎士を束ねる存在であり、この神皇国の統治者でもある。

 「帝国との戦争でも、立派に活躍してくれるはずさ」

 ありありと聖騎士への信頼が伝わってくる眼差しに見つめられ、その情熱に聞き入ってしまう。そして、やがて自らの国を誇りに語るその口からは、敵となる国に対する侮蔑が出てくることになる。

 「そもそも帝国ってのはさ、せっかく魔人との戦いが終わったっていうのに今度は自分達が自分より弱い奴らを狙って攻撃するってのは、とてもじゃないけど理解出来ないね。そんなことをしたって世界は平和にならないんだよ? 平和を壊して戦争を起こすのなんかやっちゃいけないことじゃん。あいつらはそういうことが理解出来てない馬鹿なんだよ。だから神皇国がちゃんと倒さないと、世界は良くならないんだよ。勇者もそう思ってるに違いないよ」

 どこかで見たような言論を並べ、神皇国の正当性を一市民でしかない青年が主張する。周囲の人々がなんてこと無い顔で聞きながら通り過ぎていくのを見るに、この国の多くの人がそう思っているのかもしれない。

 「あー、少し話し過ぎちゃったかな。じゃあ、僕はこの辺で失礼するよ。お幸せに!」

 別れの言葉を述べた青年と離れ、3人は再び神皇国の中を歩いていた。

 「意外と皆心配してないみたいだね」

 神皇国にいる人々に不安の影は付き纏ってはいない。先程話した青年からも、それ以外の街行く人も、皆、少しの興奮と共に日常を送っている。

 「まぁね。だって聖騎士がそれだけ強いもん。安心して当然だわ」

 「帝国に向けてる気持ちも、憎悪って感じじゃありませんでしたね」

 「あー、ね。これから警察にしょっぴかれる犯人を見てるって感じ。大した余裕よね」

 これから起こる戦争に、温度差を感じていた。帝国と神皇国では、目的や事情が異なりすぎていて、どちらも相手を理解出来ていない。起こるべくして起こる戦争にどこか納得のいかない気持ちを抱えながら進む。

 その途中、見知った顔とすれ違った気がして、振り向く。そこにいたのは幼い少女、カグヤだった。

 「あ」

 「ん? ん!」

 お互いに気づき、近づいて声をかける。

 あれからどうなったのか心配だったカグヤと再び会えて、颯は嬉しさで胸が一杯になる。

 「良かった、良かった!」

 「久しぶりー! 元気してた?」

 嬉しさで鼻を赤くする颯と、そうとは知らずに呑気なカグヤ。そんなカグヤの隣に1人の男がいることに気づいた。

 「あの、あなたは」

 「あぁ、自分は・・・・・・」

 「シグル! シグルっていうの! ね?」

 「そうそう。改めて、雑賀シグルと申します。あなた達はこの子のお知り合いでしょうか?」

 当たりが良い好青年。好青年と呼ぶには、その表情にどこか曇りが見えたが、悪い人ではないというのは一目で分かった。カグヤも全幅の信頼を置いているようで、颯は頭の上がらない思いだった。

 「はい、まぁ、知り合い、というか、なんというか・・・・・・」

 「家族! でしょ!?」

 「え」

 「信頼されてますね。・・・・・・向こうで話しましょうか。ここじゃ人通りもあるし、立ったままじゃ疲れますしね」

 彼の言葉の通りに一同は街の隅に移動する。ここは先程よりも人通りが少なく、落ち着いた雰囲気の場所で、日当たりも良く、とても安らぎのある空間であった。

 「あの、1つだけ聞いてもよろしいでしょうか」

 話しかけたのはヒロナだった。珍しい。

 「はい、何でしょう」

 「先程、お名前をサイガシグルと仰いましたが、勇者も同じ名を名乗っていたはずです。服の上からでも体が鍛えられていることが分かるほどですし、隣にいたカグヤさんをいつでも守れるような体勢と気を放っていたように見えました。それは並大抵で出来ることではありません。あなたは、勇者となのではないでしょうか?」

 勇者。帝国でも、神皇国でも、他の国でもその名を聞いた。数年前に魔王を倒し人類を救うも行方をくらませた英雄。目の前の彼はその勇者と、同じ名前だという。もし本当だったら、世界中が放ってはおかないだろう。誰もがその帰還を待っている。こんなところにいていいはずはない。

 「いえ、自分なんかは勇者じゃありませんよ。それはきっと別の誰かですよ。僕にそんなことは出来ません。同姓同名なんてよくある話です。気にしないでください」

 「そう、ですか。答えてくれてありがとうございます」

 「すいません。その、希望に応えられなくて」

 気の抜けたような声で話す雑賀。彼は自らを勇者ではないと言った。そのことにどこか残念そうなヒロナ。もし勇者だったら、一体何を話すつもりだったのだろう。少しばかり、いや、かなり気になっていたのかもしれない。しかし、今はまだそのことに颯は無自覚なままだった。

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