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異世界運命記  作者: ドカン
第3章 星の草原
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第35話 日の下の戦い

 朝。2人の少年が日が昇るまで語り合った後。眠く重い瞼を擦りながら、颯はテントまで戻った。まだ眠っているヒロナとシュリィをそろそろ起こす。

 「おーい、朝だよー」

 肩を揺らしながら声をかける。少ししてから、2人は目を開けた。

 「あんた、もう起きたのー?」

 「珍しいですね。颯さんの方が早いなんて」

 「まぁね」

 その後、3人は支度をしてからテントの外に出た。外ではここの人たちが既に起きて、何やら色々している。その中にケイの姿があった。颯が彼に話しかける。

 「颯か。お前達はもう出発する準備は出来たのか?」

 「うん。もともと荷物も少ないしね」

 「そうか。後少しだけ待ってくれ。そうしたら出発しよう」

 颯はそれに返事をし、待つことにした。しばらくして、ケイはここの人たちに別れを告げ、3人のもとへとやってきた。彼が「ロン」と呼んでいる馬を連れ、揃ったところで出発する。

 移動中、颯はケイとずっと喋っていた。そんな2人をシュリィは怪しく思い、彼女はヒロナと喋り始めた。

 「ねぇ、颯はいつあの子とあんな話すようになったのよ?」

 「さぁ・・・・・・。私もよく分かりません。というか私はシュリィさんとずっと一緒にいたんですから、分かるわけないじゃないですか」

 「それもそうね。私とヒロナが知らないんだったら、寝てる間、つまり夜とかかしら。あいつなんかゴソゴソしてたし」

 「そんな気にする必要もないんじゃないですか?」

 「秘密にされるのが嫌なの。裏でなんか隠れてやってたり、そういうのが嫌なの。だからヒロナも、私に隠し事とか、しないでよね」

 ヒロナは少し間を取った後に「はい」と答えた。

 「そろそろ森に入るぞ」

 ケイはそう言った。4人の目の前には森が見えた。それぞれが話をしている間に、いつの間にか着いていたようだ。とくになんてことのない森の中を歩いていく。変わらず、話は続けられていたが、急に遠くで巨大な音がした。

 4人は周囲の木々に囲まれ見えていなかったが、遠く、音がした方では大量の砂塵が地面から吹き上げ、そして舞っていた。

 さらに、音のした方から、低く重い鳴き声、咆哮のようなものが聞こえる。それは牛の鳴き声にそっくりというよりもそのものであった。全員が辺りを警戒する中、その声の主は木々をいともたやすくなぎ倒しながら、彼らの方へと突撃してくる。

 それと同時に、ケイの持つ弓が光を帯び始めた。そこにいる全員が弓の光に注目するが、彼らに向かって突進してくる声の主の中にも光が見える。その光は赤かった。

 そして、その光を抱えながらやって来た声の主を彼らは目にした。それは、山一つ分はあろうかというほどの大きさの赤い牛だった。4本ある足のどれもが森に生えている木を3本束ねるより太く、足元から背中までの高さは並大抵の山ほどに高い。立派に生えた角は大きくなる半円を描きながら、その先は天を指していた。

 声の主である赤い牛は、何やら興奮した状態であるようで、その様子を4人は下から見上げていた。

 「何あれ!?」

 シュリィが叫んだ。

 「なんだっていい。今はとにかくあれから逃げることだ! 颯、お前らはそっちに逃げろ!」

 「分かった!」

 4人はケイと他の3人の二手に分かれ、牛の進路上から移動した。突進を続けていた牛は、しばらく進んだ後に止まり、その瞬間を狙ってケイは矢を放とうとする。一方で颯はヒロナとシュリィに提案をしていた。

 「多分ケイはあいつの気を引こうとしてるんだよ。そしたらその間、あの赤い牛は俺らに対して隙だらけになるだろ。そこを俺達で叩こう」

 「具体的にはどうするのよ」

 「あれだけの大きさだけど、足が細かっただろ? だから足元とかが弱点だと思うんだよ。姿勢さえ崩せば、後は簡単なんじゃないかな」

 ヒロナとシュリィは颯の言ったことに納得した。考える時間があまりなく、颯自身も即興で思いついただけの作戦とも呼べないものだったが、今この場では十分なほどに分かりやすかった。

 3人が作戦を共有している間、ケイは矢を引いた。弓の中央に空いている穴に擦れるようにし、限界まで引っ張り、なるべく強く牛に当たるようにしようとする。細い矢ではいくら放っても、些細な風やちょっとした衝撃で簡単に防がれてしまう。そう思って、できるだけ強く引く。しかし、ケイのその予想は裏切られることになる。

 矢から手を離し、目標へと飛んでいこうとする。狙った位置に正確に飛んでいく。だが、その威力はケイの予想を遥かに超えていた。まるで光のような速さと輝き。放った反動でケイは後ろへのけ反りかけ、彼が乗っているロンが何歩か下がってしまった。

 その矢は勢いよく牛へ直撃する。当たった瞬間に霧散してしまったが、その衝撃はかなりのもので、牛は痛みから鳴き叫ぶ。自分に直撃した強力な攻撃を無視出来るはずもなく、牛は矢が飛んできた方向、そしてそこにいたケイを睨みつけた。

 痛みからさらに興奮に陥る赤い牛は咆哮を上げた後、ケイに向かって再び突進しようとする。しかしその瞬間、大地が揺れ、辺りに重々しい音が響く。

 「何、地震!?」

 シュリィの言葉は、この場にいる全員の気持ちでもあった。驚きに戸惑っていると、颯達3人のいる場所が段々と上に上がっていく。唯一離れていたケイは、遠くからその正体を目の当たりにした。

 「蟹?」

 それは厚い岩盤を甲羅にした、巨大な蟹であった。森を背負い動くその姿は、まるで歩く大地のようだ。さらに、その蟹にも、ケイの弓や赤い牛と同じく、その中に輝く光を持っていた。その光は緑色に輝いている。

 「おい、無事か!?」

 ケイは3人の様子を確認しようと遠くから声をかける。しかし、その距離ゆえに届きはしなかった。

 「クソッ、駄目か!」

 彼はロンを走らせ、出現した蟹に近づこうとした。

 一方その頃、蟹の上にいる3人は、なんとかして降りようと考えていた。飛び降りるには高すぎる位置だ。さらに考えている間に、牛が出現した蟹に対して、突進した。蟹は避けることも出来ずに正面からそれを受け止めた。その衝撃で3人の居場所はより不安定になっていく。無理にでも飛び降りようかと思っていた瞬間、ケイの声が3人に届く。

 「おい! 無事か!? 今の突進で蟹が動きを止めた! 今なら鋏を伝って降りてこられる! 今しかない!」

 彼の助言に従って3人は鋏を使って地面へと降りようとする。途中、近くにいた牛の行動を封じるため、シュリィが「ボム」の魔法を牛の目に放った。赤い牛は目の前で爆発を起こされ、たまらず1歩引く。その間に急いで地面から降り、ケイと合流した。

 爆発の後、牛は再び蟹に突進する。蟹は今度は、鋏を使って迎え討つ。鋏を振り上げ、牛の角を抑えた。しかし牛はそのまま足を踏み進めることをやめず、次第に蟹の鋏にひびが入る。その瞬間をケイは見逃さなかった。

 蟹の厚い甲羅に牛が傷を付けた。さらに牛も戦いの傷が出来ている。そこから考えを巡らせ、ケイは弓を引いた。できる限りの力を使い、矢を放つ。再び強力になった矢は蟹に抑えられた無防備な牛を横から貫いた。次の瞬間、牛は爆発を起こして消え、そこには赤い石が残った。上から落ちてくる石を掴んだ瞬間、ケイはその石がどういうものなのかを理解した。そしてケイはその石を、弓の中央にある穴へとはめ込み、もう一度弓を引く。石に擦れるように矢を、今度は蟹に向かって放つ。その衝撃は今までとは比べ物にならないほどに強いものだった。辺りに衝撃が走り、その場では突風と砂塵が舞う。まるで、赤い牛の力を宿したような強さで、矢は蟹を容易く貫いた。蟹は牛と同様に爆発を起こし、その場から姿を消した。彼は落ちてくる緑色の石を掴み、笑顔で振り向く。

 「やったぞ! ・・・・・・あれ?」

 そこにはケイが話しかけようとしていた相手の姿はなかった。しかも、彼はその相手の名前と姿すら思い出すことが出来ない。記憶に引っかかる感覚だけが残り、後は何もなかった。

 「なぁ、ロン、この石は、俺達で手に入れたんだよな?」

 呟くものの、答えは得られることはない。彼は残る違和感に疑問を覚えつつも、自らの目的を思い出し、その場を後にした。

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