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異世界運命記  作者: ドカン
第3章 星の草原
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第33話 夕食

 颯達の前を歩いている男、ケイは後から来た馬に乗る髭を生やした男達と何やら話していた。3人のことを説明しているのだ。

 「おい、ケイ。あの3人は何だ?」

 「俺も詳しい事情は分からない。だけど、どうやら迷っているみたいだ。あんな服装に、見慣れない地図。ここらへんの奴らじゃないことだけは確かだ」

 「それで、あいつらはなんて言ってた? 金と水を寄越せって?」

 「そんなことは言ってないけど、道を教えろとは言ってた。どうやらあいつら街に向かいたいらしい」

 「街? じゃあ、あいつらは商人なのか?」

 「商人にしては荷物が少なさすぎじゃないか?」

 「じゃあ、何なんだよ」

 「だから分かんねぇっつってんだろ」

 ケイは聞いてきた男に対し、呆れからか少し口調が雑になった。言われた男は「それもそうか」とブワハハハと笑う。それに続くように他の男達も笑う。

 「んで、結局どうすんだ?」

 肝心の答えをケイは急かした。男の1人は彼の背中を叩き、笑ったまま言う。

 「悪い奴らじゃ、なさそうなんだろ? それに街へ行きたいんだったら、ちょうどいいじゃねぇか。お前が一緒にあいつらを連れてきゃいいんだ!」

 それもそうだ! と男達はさらに笑った。ケイも笑った。

 彼は再び3人に言う。

 「てことで、お前達はしばらくは俺と一緒だ。それでいいか?」

 颯達はケイの言ったことに反対しなかった。他にどうすることもできず、アテもなかったのでそうするほかないというのが、正直なところで、さらにそのことが3人にとって何か悪い意味を持つようなこともない。黙って従うというのが、一番の方法だった。

 移動してしばらくすると、見慣れないテントのようなものがいくつか現れた。太い円柱の上に円錐形の屋根がある。白く、布か何かで出来たものだ。ケイはそれを指差して、「あれが俺たちの家だ」と言った。

 「あれが?」と颯が聞いた。

 「あぁ、そうだ。何か不満か?」

 「いや、全然そんなことはない、です」

 颯にとって、ヒロナとシュリィにとってもだが、慣れない住居の形をしていた。あれこれどうするのだろうという疑問と不安が頭の中を駆け巡るが、変なことを聞いてケイ達の機嫌をあまり損ねないようにしようと思い、聞かないことにした。

 とりあえず、休憩が出来るということで、テントの中に入り腰を下ろす。中に入ってくる光が赤くなってきており、日が落ち始めている。気がつけばもうそんな時間なのかと3人はぐったりとしながら思った。

 「なんかあったら俺に言えよ。隣の家にいるからさ」

 急にケイがテントの垂れ下がっていた幕を、ガバっと開いた。それに一瞬だけ驚いた後、颯が自分の体が汗だくなことに気づいた。風呂はあるか、入れるのかと聞く。

 「風呂? まぁ、入りたいの分かるが、水はそんな多くないんだ。タオルで体を拭くぐらいならできるぞ。必要なら持ってきてやる」

 そう言ってケイはタオルを取りに行った。テントの中でおとなしく待っている颯の肩をシュリィが叩く。

 「タオル、ちゃんと3人分持ってくると思う?」

 「え、そりゃそうなんじゃない?」

 「もし1人分しかなかったら、私が使うからね」

 「いや、それはちゃんと3人分持ってきてって言えばいいだけなんじゃないの?」

 「ばかねー。ここまでお世話になっておいて、その上さらに注文つける気? いい加減出てけ! って怒られちゃうわよ。だからタオル、1枚しかなかったら私が使うから」

 シュリィの言っていることに颯は部分的に納得した。確かにここまで世話になっているのに、これ以上世話になることなんて出来ない。とんだ恥知らずだ。そういう意味では、シュリィの言っていることは正しい。しかしだからといって、せっかくのタオルを1人占めされるのは気に食わない。颯がここまで疲れてはおらず、少し前に変な言い合いをしていなければ、遠慮なく言い返していたところだった。

 そうして言い返されなかったシュリィが、満足気な表情を浮かべていると、テントの幕を開けケイが再びやってきた。

 「ほらタオル。男と女で1枚ずつな」

 彼はタオルを2枚持ってきた。颯とシュリィ、2人の予想はどちらも外れてしまった。それがあったか! と2人が思っているがケイはそのことを気にせず続きを言う。

 「あと、飯な。もう出来てるみたいだから、そっちの準備が出来たら来てくれ」

 分かった、と答える。ケイはテントの幕から手を離し行ってしまった。準備、といってもそれほどすることもない。渡されたタオルで体を拭いた後、3人はテントを出た。

 外に出ると、香ばしい香りがモクモクと立つ煙とともに風に流されてくる。煙がやってきた方を見ると、大勢の男女が炎を囲みながら、赤みがかった肉を焼いていた。颯達はそちらへと向かう。ケイが声をかけてきた。

 「お、来たか。こんなもんしかないが、まぁ、遠慮せず食べてってくれ」

 彼が差し出してきた串に刺さった厚みのある肉を3人は受け取った。肉汁が垂れており、縦に持てば、それが手にかかり後で処理が面倒くさくなることは明らかだ。ずっしりと重みのかかるそれを横に持って、一口噛んだ。未だに熱を持っていて、少しして肉を口から剥がすと、そこには歯型だけが残っている。

 少し待ってからもう一度そこに噛み付く。熱は耐えられるほどになっているものの、今度は分厚さが颯を阻んだ。噛みちぎろうと格闘している間に、地面に肉汁がボタボタと垂れる。

 なんとか噛みちぎり、口の中で噛み続ける。生臭さが広がり、さらに奥歯で噛み続けると、次第に噛むことに疲れてくる。噛み切れない部分もあり、それなりの大きさにしてからようやく、呑み込む。そうして再び肉に噛み付いた。

 3人は集団とは少し距離をとって、隅の方に固まっていた。ケイに渡された肉がそれなりに大きかったこともあり、そこから動くことはなかった。

 「これしかないのね」

 「そうみたいだね。ここの人達もみんな、肉しか食べてないし」

 シュリィが「ふぅ」と息を吐いてから一言呟いた。

 「飽きるわね。野菜もないから栄養とか悪そうだわ。・・・・・・まぁ、私は太らないから、いいんだけど」

 「へぇ」とだけ返す。しかしその後黙ったままなのも味気ないような気がしたので、颯は周囲を見渡す。真っ先に見たヒロナの方を見ると、彼女はすでに食べ終わっていて、肉汁の付いた指を舌先で舐めていた。

 「もう食べ終わったの?」

 「はい! なので私、おかわりを取ってきますね。2人の分も取ってきましょうか?」

 「いや、いいよ」

 颯とシュリィは揃って首を横に振った。まだ2人は半分も食べていない。ヒロナもほぼ変わらない量であったはずなのに、彼女だけが厚みのある大きな肉を食べっ切っていた。

 ヒロナが再び肉を取りに行った後、シュリィが言った。

 「ヒロナって意外とよく食べるわよね」

 「まぁ、身体が大きいしね」

 ヒロナは3人の中で最も背が高い。男として颯の立つ瀬などどこにもない。それに加え、背中には大人の男性の肩までありそうなほどの大剣を背負っている。さらには武器と振り回すこともあり、体力なら3人の中で最も使うのだろう。ヒロナが少しぐらい大食いでも、あまり驚きはしない。

 「それに、ヒロナはまぁ・・・・・・色んなところも、大きいというか・・・・・・」

 「最低。後でヒロナにあんたがそういう目で見てたって言っとくわね」

 「やめて」

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