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異世界運命記  作者: ドカン
序章
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第3話 依頼を終えて

 「はい、これが今回の依頼の報酬です。お疲れ様でした!」

 ギルドに戻り、受付嬢から報酬をもらう。報酬は2万ゴールド。ゴールドはこの世界での基本的な通貨単位になっている。世界中、この通貨で渡り歩くことが出来る。とにかく、この2万ゴールドを2人で分けて、それぞれの取り分は1万ゴールドずつになった。

 「俺、何もしてないけど・・・・・・」

 両手に乗ったお金を見て、両道が不思議そうな顔でヒロナに聞いた。彼は今回、ゴブリンを相手に腰を抜かしていただけだ。

 「いいんです! ちゃんと貰ってください!」

 「わ、分かったよ・・・・・・」

 威圧するかのようなヒロナの視線にされるがまま、報酬の半分を受け取った。

 依頼を終えて、報酬を受け取った今、すっかり夕方になっていた。1日が終わるのかと、脱力感が身体を包む。

 「そういえば、休憩も何もしてませんでしたね」

 「うん。もう本当に疲れたよ。ヒロナもそうでしょ?」

 「はい。どこかで休みましょうか」

 立ちっぱなしだった2人はギルドの休憩スペースに向かい合うようにして座った。

 「あー、疲れたー」

 椅子に重々しく座る両道とヒロナ。身体を休めつつ、両道がヒロナを見ると、彼女はギルドの左側、両道の後ろにある売店をじっと見ていた。

 「なんか買ってこようか?」

 「え、いや、大丈夫ですよ!? そんなの申し訳ないですし!」

 「いいんだよ。あまり高い物とかは買えないと思うけど、色々とお礼もしたいしね」

 「そ、そうですか。じゃあ、少しだけ甘えさせてもらいます」

 「ん」

 両道は席から立ちあがり、売店へと向かっていった。残ったヒロナは机に伏せた後、大きな息を吐いてから呟いた。

 「緊張したなぁ。初めての依頼。とりあえず大丈夫だったけど・・・・・・」


 売店には色々な物が売ってある。物珍しい気持ちで商品棚を見る。ただ、あまり品揃えは良くないようだ。

 「食べ物は干し肉とビスケット、飲み物は水だけか。反応に困るラインナップだな」

 店の棚に並べられているのは、一体何の肉か分からない干し肉と不揃いな形のビスケットだった。飲料水も何かさっぱりとしたものがあればと思っていたのだが、あったのはそこらへんでとれるような水だった。けれどもこの水は、文句の出ないほどに綺麗な水ではあった。

 両道は干し肉と水を1個ずつ手に取る。だが会計がない。これらはタダではないので、どこかで支払わなければならないが、どこで支払えばいいのかが分からない。両道が困って周囲を見ていると、休憩スペースからこちらを見守っていたヒロナが受付の方を指差す。会計も受付で済ませるのだろうか。

 「あの」

 「は、はい! なんでしょう!?」

 暇だったのか、読書をしていた受付嬢。話しかけられ、とっさに姿勢を整えた。

 「売店の会計って」

 「ここでやりますよ! 干し肉と飲料水ですね。150Gです」

 先程の依頼で手に入れた報酬から支払う。その後、両道は座っていた席に戻る。

 「おかえりなさい。どうでしたか?」

 「そんないい物はなかったかな」

 「両道さんが買ったのは・・・・・・」

 ヒロナは両道が買ってきたものを見る。

 「買ったのは、この干し肉とただの水。あー、あと店にならビスケットがあったよ」

 「そうですか。これでいくらでした?」

 「150Gだったよ」

 「え!? や、安くないですか!? 干し肉と水で150G!?」

 両道から聞いた値段を聞いたヒロナはとても驚いていた。席から勢いよく立ち上がり食い入るように両道を見る。他の場所での物価を知らない両道はなんとも言えないが、ヒロナにとっては安いらしい。この町では家畜を飼っていたし、綺麗な水の流れる川も近くにある。そのまま持ってきているだけなら、きっと安く済むのだろう。

 「そ、そんなに?」

 「そうですよ! 私のところじゃ、こんなに安く手に入ることなんてありえません! これは・・・・・・少しこの町を侮っていたみたいです」

 「そう。あ、干し肉、要望とか聞かずに買っちゃったけど、食べる?」

 「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて」

 ヒロナは両道から差し出された干し肉を手に取り、かじる。思っていたよりヒロナの一口がデカく、両道は少しばかり驚いた。

 「どう?」

 「ちょっとしょっぱいですね。塩っけが多いというか」

 「ふーん」

 「両道さんも食べます?」

 「じゃあ貰おうかな」

 元々は両道が買ったものを、逆にヒロナから貰う。少しだけ食べて、すぐにその味が分かった。確かに少ししょっぱい。両道は一緒に買った水を流し込んだ。

 「そういえば、両道さんは泊まる場所とかあるんですか?」

 「いや、ないな」

 「私が知ってる宿があるんですが、そこでいいなら案内しますけど」

 ギルドから出て、ヒロナに案内される。彼女が両道を連れてきた場所は、町の端にある、ボロい建物だった。そこらの家と比べても、そこまで広くなく、むしろ多人数でいる分、こちらの方が狭いのかもしれない。

 「外から来た人が使うことの出来る、この町だと数少ない宿です。食事は出ませんし、お風呂もないので寝ることしか出来ませんけど、個室がある分ここの方がまだ良いと思うんですが、ここでいいですか?」

 「あぁ、いいよ。ありがとう」

 横になって寝れるだけありがたい。本当のところは食事も風呂も用意して欲しいところだが、それは仕方がない。食事はギルドの売店で買えばいいし、風呂に関してもどうやらギルドの近くに、公衆浴場があるそうだ。

 宿泊の手続きだけして、2人はそれぞれの部屋に向かった。

 「じゃあ、また明日」

 「はい。また明日」

 部屋の前で別れる。とは言っても、2人の部屋は隣なのだが。扉を開けて、中へと入る。部屋といってもそんな大きくはない。ベッドが1つと窓が1つあるだけのとても狭い部屋である。本当に寝るためだけにあるみたいだ。両道はベッドにボフンと倒れる。今日は本当に疲れた。ちゃんと依頼をこなすことが出来たとは自分では思わなかった。ほとんどをヒロナに任せてしまった。

 情けない。ヒロナは気にしないでいてくれたみたいだが、両道としては恥ずかしいことだし、もう、こうはならないようにしたいと思っていた。

 倒れた状態から寝返って、仰向けの状態になった。なにかを考えようとする体力もなくなってしまった両道はそのまま眠りにつく。彼の1日が終わった。

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