第19話 依頼達成
「おい、起きろ!」
焚火を囲んでいた5人。途中までは団らんを続けていたが、段々と眠くなってきていた。5人は交代制で見張りをすることにし、他は寝ようということにした。
そうして見張りの当番ではないので寝ていた両道だったが、寝ている途中にルカに起こされた。重いまぶたをこする両道が見たのは、辺りにいるフォレストモンキーの群れだった。
「準備しろ! 早く!」
見れば他の4人は既に準備を整えている。後は両道だけだった。両道も、手持ちの短剣を手に取る。
「Gyaaaaa!」
魔物たちの鳴き声が夜の森に響く。武器を持っていることを分かっているのか、魔物の方からは威嚇だけで、攻撃してくる気配はない。
「こっちは依頼なんだ。睨んでるだけなんてことはしないよ!」
ルカの杖の先が光に包まれる。白色の光だ。
ルカの持つ杖はシュリィの物とはだいぶ形状が異なり、比べるとかなり小さい。シュリィの杖は彼女の肩までの長さがあり、手で掴んでも親指の先と中指の先が触れない太さなのに対して、ルカの杖というのは摘まむようにして持つ細長い物だった。例えるならば、シュリィの杖が木の幹でルカの杖は木の枝程しかない。
そんなルカの杖の光が一定の明るさになり、彼が叫ぶ。
「「サモン」!」
ルカが使った魔法は「サモン」と呼ばれ、特定の魔物を使用者のもとに召喚することが出来る魔法だ。
そして彼が叫んだのと同時に杖の光は瞬く間に広がる。その後すぐに光が消えるとそこには1体の魔物がいた。鳥の姿をした魔物だ。大きさもかなりある。鋭い目つきに、尖った足の爪を持ち堂々とそこにいた。
「ヴェル、お願い! 力を貸して!」
ヴェルと呼ばれたその魔物は、リアの呼びかけに鳴いて答えた。
「ねぇ、この魔物は?」
「あぁ、これはね、フレイズヴェルグのヴェル。私達と一緒に戦ってくれる仲間だよ」
リアから紹介される。
ヴェルは両道達を一瞬だけ睨みつけ、敵であるフォレストモンキーを見た。
「ヴェル、その魔物を倒して!」
リアの命令のために、翼を広げ飛び立つ。
一方、ルカは再び魔力を流し、杖の先を光らせていた。今度は緑色の光だ。
「「ウィンド」!」
彼の杖の先から突風が吹く。ただそれだけだが、その風がヴェルを高く飛び立たせる。
風に乗ったヴェルは、より高く、より速く飛んだ。翼に風を受けた彼は大空の狩人となってフォレストモンキーたちに襲い掛かった。ヴェルの持つ爪が、魔物達の身体を容赦なく貫く。体格で劣るフォレストモンキーは最早ヴェルの獲物でしかなく、なすすべなく次々と狩られていった。
「私達も早くしないと!」
ヴェルの華麗な狩りの様子をただ見ている両道達だったが、シュリィが杖を手に魔法を唱える。
「「ボム」!」
フォレストモンキー達の背後で爆発が起こる。小規模なものだったが、魔物を怯えさせるには十分であり、なおかつ逃げ道も塞いだ。
行き場を失ったフォレストモンキー達は5人へと襲い掛かる。こうする他に道はないと知った魔物達は全力で向かってきた。
そこをヒロナが大剣で魔物を順番に斬っていく。
「Gya! Gya! Gya!」
次々とやられていく仲間達を見たフォレストモンキーが悲しみと怒り、そして戸惑いと恐怖も混じったような声で叫ぶ。
焚火が出来るほどの開けた場所ということもあり、ここはちょうど上空から狙いやすい位置でもあった。木の上から降りてしまったばかりに、よりヴェルに狙われやすくなったのである。彼らが自分達の失敗に気づいた時にはもう遅かった。
しばらくして、襲ってきたフォレストモンキーの群れの最後の1匹がやられた。5人の周囲には数多くの魔物の死骸が転がっている。
「これで終わりか」
ルカが言う。
上空を飛んでいたヴェルも、リアの近くに降り立った。魔物の死骸を爪で引っ掻き皮を剥いで、中の肉を食べている。
「この死骸ってどうすんの?」
「もちろんここに置いてくよ」
森の中に放置していれば、ヴェルのように他の魔物が餌として食べることで処理される。厳しい弱肉強食の中で生きる者達にとってはありがたいごちそうになるはずだ。
「俺らとしても、持って帰ってどうにか出来るわけじゃないし。都合がいいだろ?」
「毛皮とか売れたりしないの?」
「ドラゴンの鱗とかだったら売れるかもしんないけど・・・・・・」
今回倒したフォレストモンキーはあまり売れないらしい。毛皮は悪く、肉の味も人間の舌にはあまり合わないのだそうだ。売れる魔物というのは、その多くが家畜化されているため、素材に関しては十分市場に行き渡っているとルカは説明した。
そんなこんな話していると、次第に朝日が昇り5人を照らした。腹の膨れたヴェルは、自らどこかへ飛んで行ってしまった。召喚すればまた来てくれるので心配はないそうだ。
明るくなり周囲も見えやすくなったところで、街へ戻りギルドへ報告しに向かう。
「じゃあ、ここまでだね」
ギルドから受け取った報酬を5人で山分けする。少しの差は出てしまったが、ケチでなければ気にしない程度の差だ。
「2人はこれから帝国に行くんだっけ」
「うん。港から帝国行の船が出てるから、それに乗ろうと思ってるの」
「そうなんですね」
「3人も頑張ってね」
「えぇ、ありがとう」
「また会えたら一緒に依頼、受けような」
「覚えとくよ」
そして両道達はルカとリアをギルドの外まで見送った。
「ねぇ、シュリィ、俺達も帝国に行かない?」
「別れが寂しいんでしょ。でも私達にそんなお金なんかどこにもないわよ」
「えー・・・・・・」
「まぁ、これからも頑張りましょう! 両道さん!」
「そうだね。ってかお金って後どれぐらいあるの?」
「そうねぇ、大体次の街に行くぐらいはあるわね」
「結構ある感じ?」
「だからないって言ってるじゃない。行くのにも馬車とかじゃなくて、徒歩が前提だからね」
えー! と両道が嫌な顔をする。駄々をこねる子供のような態度だ。
そんな両道を無視して、次はどこに行こうかしらとシュリィが聞いてきた。もう次の街に行くの? と両道が尋ねるとどうやらこのドラグニアのギルドにはもうあまり依頼がないらしい。ここにいても大して稼ぐことも出来ないと感じたシュリィの考えだ。
「それなら、この街のまだ見てない所とか行ってみたいんだけど」
「見てない所?」
「中央から外れた道とか」
「あー、いいわよ」
快く承諾してくれた。シュリィだけでなく、ヒロナも賛成してくれたので、3人はすぐにそこへ向かうことにした。
そして3人は目的の通りを歩いていた。そこは華やかな中央道とは打って変わって、暗い雰囲気の漂う場所だった。落書きだらけの壁、片づけられていないゴミ。道もあまり整備はされておらず、煉瓦は敷いてあってもぐらついたものが多かった。
「うわぁ、全然違うじゃん」
「こんなものじゃないですか?」
「え、ヒロナは驚かないの?」
「ありふれた景色だと思いますよ」
「ありふれたって、それ他の街もこんな感じってこと?」
3人は辺りを見渡しながら道を前に進んでいった。途中、両道が屋台に惹かれることはあっても、そこまででもないと2人に諭され寄ることもない。
そうしてしばらく歩いている時だった。




