第16話 夜の森
ドラグニアのギルドに入った3人。コダのギルドよりも何倍も大きかった。
「すげー! 人もめっちゃ多い!」
「これなら依頼も期待できそうね」
と、シュリィは言ったものの・・・・・・。
「うーん、あんまり良い依頼が無いわね」
依頼が貼られている掲示板に見に行ってみたものの、どれもピンとこないような依頼ばかりだった。原因として、街の外に舗装された道を建設するために、森に住む魔物達の数が減ったことがあげられる。それでも、魔物が完全に姿を消したわけではないので魔物退治の依頼はあるが、それらはすぐに他の冒険者が取っていってしまう。
そんなわけで、両道達は簡単に依頼にありつけていなかった。
「まさかこんなことになってるなんて・・・・・・」
「もう少し早く来てれば良かったですね」
思ったようにはいかず、ギルドの机で少し落ち込んでいた。するとそこに、3人と近い年の2人組がやってきた。
「ねぇ、あなた達も冒険者だよね?」
話しかけてきたのは軽い装備に身を包んだ若い女性だった。女性の隣には服を着こんだ男性が1人いる。年は2人とも同じぐらいだろう。女の問いに両道が「そうだけど」と答えると、女は隣に立っていた男と目を合わせ頷く。
「それならさ、この依頼を一緒に受けてくれない?」
そう言って女は両道達の座っていた机に、依頼の紙をドンと置いた。
「えっと、これは」
「フォレストモンキーの依頼だよ」
男が説明する。最初は2人だけで行こうと思っていたが、少し不安に思い他に仲間を探していたようだ。
内容はフォレストモンキーという魔物の群れの討伐。報酬も悪くない。
「どう? 受けてくれる?」
その問いに、3人は「はい」と答えた。
「ねぇ、フォレストモンキーってどんな魔物なの?」
依頼に参加することになった3人と2人は目的の魔物の群れを探し、森の中を歩いていた。今は夜。森の中は少し不気味に暗かった。
「あぁ、フォレストモンキーっていうのは、肌色の顔に黒い毛の、人よりも少し小さめの大きさしかない魔物だよ。群れを作って森の中で暮らすみたいなんだけど、近くに村や町とかがあると物を盗んでいくらしいんだ。この依頼もどっかで奴らになにか盗まれたことの仕返しかもね」
2人組の冒険者の男の方が、両道の質問に答えた。フォレストモンキーという魔物は、見た目は猿にとても近い。夜行性の魔物であり、いたずら好きなため、時々フォレストモンキーの被害にあったという報告と依頼がドラグニアの街では届く。
「へー、そうなんだ。えーっと・・・・・・」
「あ、名前? そういえば自己紹介がまだだったね。俺の名前はルカ、よろしく」
「私はリア。よろしくね!」
男の名前がルカ、女の名前がリア。2人の名前を知ったところで、両道達も自分達の名前を教えた。
その後しばらく歩き、森の中にちょうど良い広さのある場所を見つけた。
「ねぇ、ここでいいかな?」
「あー、うん。そうだね、ここにしよう」
「なにするんですか?」
2人はその場所に周辺から拾ってきた木の枝などを集め、火を起こした。それを両道達3人はただ見ているだけだった。
「焚火だよ。いつまでも歩いているわけにはいかないしね。それにこうしていた方がやつらも寄ってきやすい」
今回の目的であるフォレストモンキーという魔物は、遠くからでも火の存在を察知できる。彼らは火を見れば人がいる、と分かるらしい。街にも平気な顔をして入ってくるような奴らなので、焚火をしている人間に寄ってくることなどおそらく彼らにとっては、遊び半分でやっても出来てしまうことなのだろう。そして、焚火をしている人間から道具を奪っていく、というのもよくある話らしい。
ルカが説明してくれたことを聞きながら両道は、気を付けようと心に留めた。
「アイツらはきっとやってくるだろうから、その時に皆で討つ、ってな感じでやろうと思うんだけど、いいかな?」
「あ、はい」
両道だけでなく、ヒロナとシュリィもそう返事した。
その後、5人は魔物が来るまでの間、焚火を囲んで話でもしながら時間を潰すことにした。話をすることも、フォレストモンキーを誘う方法の1つだそうだ。
「もしかしてだけど、3人は冒険者については初心者?」
ルカの質問に3人とも頷いた。ヒロナもシュリィも、冒険者になったのは最近らしい。だからルカとリアが準備をしている時も両道と同じように、積極的に参加できていなかったようだ。そのことに、両道は驚いた。両道にとってはヒロナもシュリィも、とても頼りがいのある存在であり、初心者には見えなかったからだ。
「ねぇ、冒険者になった理由とかってある? あ、言いたくないんだったら言わなくてもいいんだけど」
「俺はヒロナに誘われたんです。パーティー組んでくれませんかって。で、パーティーになるためには冒険者になる必要があるんだって知って、なったんです」
両道はそう答えた。ヒロナとシュリィは答えるのかと思ったが、2人はどうやらあまり言いたくないらしく、結局聞くことは出来なかった。まぁ、始めたきっかけなんてどうでもいいか、と両道が思っていると今度はルカとリアが自分達が冒険者になった理由を語り始めた。
「俺らは幼馴染でさ、同じ村の出身なんだ」
ルカとリアは元々は田舎の村で暮らしていたらしい。しかし人間と魔人との戦争によって、食料などあらゆる物資が不足。日を追うごとにどんどん貧しくなっていたらしい。ついに耐えられなくなり、2人で故郷から飛び出し冒険者になったとのことだった。
「リアは獣使いでさ、たまに狩りとかしてたから、運良くこうしてられるんだ」
獣使いというのは、剣士や魔法使いといった冒険者が選ぶことの出来る職業の1つだ。魔物と心を通わすことで、その魔物を使役することが出来る。使役する魔物は個人によって異なるが、魔物の力とあってどれもそれなりの強さがある。
2人はリアの獣使いとしての素質を頼りにしてきたらしい。
「あ、でもそれだけじゃなくて、俺もちゃんと冒険者としてやってるよ。職業は魔法使いだから、後ろにいるのがほとんどなんだけど・・・・・・。そういえば、その杖、シュリィさんも魔法使いなんだよね?」
「え、あぁ、はい。そうですけど」
「シュリィさんはどんな魔法を使うの?」
「えーっと、火属性の魔法、ですけど」
魔法には属性が存在する。魔法は基本的に、火、風、土、水の四つのどれかに分類される。例外が存在する場合もあるが、それらが属性として語られることはない。シュリィの場合は使うことの出来る、「ファイア」と「ボム」の2つの魔法はどちらも火属性の魔法に分類されている。
「そうなんだ! 俺は風属性の魔法しか使えなくてさ、良かったら教えてくれない?」
「え、えー・・・・・・」
魔法使いを目指す者は普通、ウィザーニア連邦という国にある魔導学校を目指す。そこで魔法の基礎などについて一通り学んだ後に、魔法使いを名乗る。しかし、学校に通うには高い学費を払わねばならず、貧困な者であったり庶民にはそんなお金はない。つまり魔法使いにはお金持ちの家系であることが多いのだ。そこで、お金持ちの家系にない者にとっての強い味方となるのが、魔導書である。魔導書も本としては高いが、学校に払う学費よりは格段に安い。故郷を抜け出してきたルカも、覚えた魔法は魔導書に書いてあったものである。
それに加え、魔法使いにとっての強さとは使える魔法の多さとも同義だ。使える魔法は積極的に増やしていかなければ、いつ捨てられてもおかしくはない。さらに、他の魔法使いに使うことの出来ない魔法を使うことが出来るというのも、その魔法使いの価値を高めることになる。
「お願い!」
「えー・・・・・・」
両手を合わせて頼むルカを見て、シュリィはとても悩んだ。




