第15話 到着、ドラグニア
森の中に敷かれた整備されている道を4人は歩いた。途中、魔物に出会うこともなく順調に進んでいき、無事にドラグニアに到着することが出来た。
街の入り口には、門があったが門番がいるわけでもなく、容易に入れてしまった。何はともあれ、これでドラグニアに到着である。
「やっと着きましたね」
「ちょっと拍子抜けね。思ってたより簡単だったわ」
シュリィがヒロナの言葉に異議があるように言う。どうやら簡単すぎて、やっとというほどでもないらしい。しかしそんなことは両道には関係がない。初めて見る街の景色に満足そうにしている。
「ここがドラグニアかー!」
そう言って街を見渡す。建物は煉瓦造りと木造が入り混じっているものの、煉瓦の建物の方が多く、それでいて新しく建てられたものばかりだ。建物自体も、平屋ではなく2階や3階まであるものが多く、見る者を圧倒してくる印象を持つ。道路に関しても、街の中のほとんどの道が舗装されており、街の中を走る馬車が走りやすいようになっている。また、幅も広くとられており多くの人が人混みの中でも余裕を取れるスペースがある。
「人が、多いですね」
そしてファヴニールが言ったように、この街には人が多い。その理由として、この街には港があるということが大きいだろう。海のように広いとされるレイシュタ湖。その湖の岸にこのドラグニアの街は出来ている。このレイシュタ湖は、ドラグニアの街を抱えるフィリッツ王国だけでなく、世界に名だたるオズマ帝国やブリテッシュ神皇国とも接しているため、それらの国との貿易が非常に盛んに行われているのだ。
そうした国から船を使って多くの人がやってきており、ドラグニアの街は現在大きな発展を見せている。森の中に敷かれていた道路も、そうしたドラグニアの発展の影響なのだが、冒険者であり、そして街のことにも詳しくない4人は知るはずもない。
「どうしましょうか。早いとこギルドに行っちゃう?」
「えー、せっかくだし街を見て回ろうよー」
4人はドラグニアに来るまでに予想していたよりも、だいぶ早く到着していた。夕方に着く予定だったのが、今はまだ昼過ぎだ。かなりの時間がある。
「ヒロナはどうしたい?」
「私はどっちでもいいですよ」
「ファヴニールは?」
「僕もどちらでも」
「じゃあ、せっかくだし街を見て回りましょうか」
ということで、ドラグニアの街を見て回ることになった。
街の中を歩いていく4人だったが、どうも周囲からチラチラ見られている気がしていた。
「ねぇ、なにこれ。俺たち何かおかしいの?」
「分からないわ。一体何なのかしら」
「私、あんまり見られたくないんですけど・・・・・・」
ファヴニールを除く3人がコソコソと話しをしていると、道の端から1人の女性がファヴニールの目の前に飛び出してきた。
「あ、あの! 旅の方ですか!? もしよろしければ私が案内しましょうか!?」
「え?」
「あ、ずるいわよ! 抜け駆けしないで!」
「そうよ、ずるいわ!」
「そうよそうよ!」
その女性がファヴニールに話しかけたことを皮切りに、次々とファヴニールの周囲に女性が集まっていく。それは波のように街中からやってきて両道達は次々とやってくる女性達にはねのけられてしまった。
「うわ、うわわ!」
「ちょ、踏まないで!」
「ああああ・・・・・・」
ついにはファヴニールが遠く見えないほどにまで追いやられてしまった。声も完全に周囲によってかき消され、聞こえない状態である。
「凄いわね・・・・・・」
「ファヴニールがまさかここまでモテるなんて・・・・・・。俺だって同じ男なのに・・・・・・」
「これじゃあ、完全にファヴニールさんに近づけませんね」
「人がいなくなるのを待ってもなぁ」
「いつまでかかんのよ、それ」
3人にはこの状況をどうすることも出来ない。待つしかない状態だが、この様子ではいつになっても終わりそうになかった。
「ここは一旦、ファヴニールと別れるしかないわね。ファヴニールも、ギルドに来てくれるでしょ」
シュリィが提案する。確かに後で合流した方がいいのかもしれないと、両道の思っていた。
「でもギルドってそんなすぐ見つかる? 迷わない?」
「迷わないわよ。だってほら、あそこ」
シュリィが右に指を差す。そこには周りよりも目立ち、そして大きな建物があった。
「あそこがこの街のギルドよ」
「ギルドドラグニア支部」デカデカと看板にそう書かれているのが、離れた場所からでもよく見える。また大きさも、周囲の建物の何倍もある。
「あれなら、迷わないね」
ファヴニールならギルドにやってくるだろうと信じ、3人は先にギルドへ向かうことにした。ギルドへ向かうには街の中央にある、噴水の広場を通らなければならない。その場所を通った時、広場の真ん中にてなにやら人だかりが出来ていた。人だかりの中心には目立つ格好をした男性がいる。その後ろには銅像が立っていた。
「昔々のそのまた昔、世界には「恐ろしきもの」がいた。「恐ろしきもの」は人からあるものを奪うそうだ。それは人の眼には到底見えるものではないが、確かにあると分かるものだ。それを奪われると人は動きを止めてしまう。目も開けず、息もせず。そんなことになってしまう。さらには人だけでなく、他の生き物にもそうらしい。どんなに強い魔物でも、それだけには敵わない。だから世界で生きる者たちにとっては怖くて怖くて仕方がなかった。なんとかならないかと、誰もが願った。するとそこに現れた1人の男。男は無口で、白い衣服に身を包み、神から与えられし聖剣とその身体であっという間に「恐ろしきもの」を封じ込めてしまったそうだ。そしてこの街こそが、男が「恐ろしきもの」を封じ込めた地に他ならない! 男の名はジークフリード! 神が愛した英雄である!」
男性は高らかにそう言った。
「なにあれ」
それをおとなしく聞いていた両道がヒロナとシュリィに質問した。
「あれは伝説ですよ。英雄ジークフリードの活躍を語った伝説です」
「まぁおとぎ話ね。知らない人はいないわ」
「ふーん」
納得したように頷く両道。しかしここでまた疑問が浮かんだ。
「ジークフリードはその後どうなったの?」
「「恐ろしきもの」にあるものを奪われて動かなくなったのよ」
「え、封印したじゃん」
「そうね。でも奪われたのよ」
「それでどうなるの」
「愛した神様が嘆いて終わり」
「え、終わり!?」
「そうよ、てかこんなことも知らないの?」
「・・・・・・悪いかよ」
少しバカにしたような態度をとってくるシュリィに両道はふてくされた。
「それにしてもあのお話って、この街が舞台だったんですね」
語り部の男性の足元にある看板には、「本場で聞く伝説なんてどうですか」などと書かれている。
「それは私も初めて知ったわ。なんか意外ね」
街の広場で足を止めていた3人はギルドへ向けて歩き出した。先に進む2人に比べ、両道の足は少し遅い。気になっているものがあったからだ。
「ねぇ、あの銅像の人さ、なんかファヴニールに似てない?」
「まさか! あの銅像はジークフリードの銅像よ。似てるはずないじゃない」
両道の足が遅かった理由はシュリィにあっけなく一蹴されてしまう。それでも両道は、銅像への不思議な気持ちを消すことのできないまま、ヒロナとシュリィの後を追いかけた。




