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異世界運命記  作者: ドカン
第1章 竜と魔王
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第14話 次の街へ

 騒がしい夜が明け、朝になった。ギルドは災難が来る前のいつもの光景に戻り、まるで昨日の戦いも宴も無かったかのようだ。唯一、ギルドの職員が酔いが取れず頭痛に苦しみながら忙しそうにしていることだけが、昨日のことを思い出させる手がかりでしかない。

 そして両道達はこの町で依頼をこなすよりも、より大きな街に行った方が多くの依頼があると考え、この町の北にあるドラグニアというここよりも大きな街へと向かうことにした。

 「よし、準備は出来たわね? それじゃあ、行くわよ!」

 ギルドでシュリィが張り切って声を出したので、どうやら他の冒険者にも聞こえてしまったようだ。あちこちから、「行ってらっしゃい!」という声や「気をつけてな!」だとか、「たまには帰って来いよ!」などといった言葉が聞こえてくる。そして、ギルドの受付の方から両道達の方へと駆け足でやってきた人物がいた。

 「あ、あの! ファヴニールさん!」

 ファヴニールにそう声をかけたのは、ギルドの受付嬢だ。ファヴニールがこの町からいなくなってしまうことを知り、彼女は最後に彼に声をかけた。

 「えっと、頑張ってください!」

 精一杯の気持ちを声で伝えた。さすがにこれ以上のことを言うのはきっと恥ずかしかったのだろう。そんな受付嬢にファヴニールは笑顔で「はい」とだけ答えた。

 「あ、あと、お三方も頑張ってください!」

 取って付けたように両道達にも受付嬢は言葉を伝えた。彼女はその後、顔を赤くして受付へと戻ってしまった。

 「じゃあ改めて、出発するわよ!」


 ついにコダの町から出発した4人。見送られながら出発した町の外に広がっている草原の中をひたすら歩いていく。ドラグニアまでは、草は生えていないが、舗装もされていない砂利の道を歩くしかない。

 「ねぇ、いつになったらそのドラグニアっていう街に着くの?」

 「夕方ごろには着くんじゃないかしら」

 「もしかしてそれまではずっと歩くの?」

 「そうよ」

 えーっ、と両道は声を上げた。ドラグニアに着くまでは休みなしで歩かなければならないからだ。そう駄々をこねたところで何かが変わるわけもなく、4人は道を進み続けた。

 しばらく歩くと、森が見えてきた。かなり広大な森のようで奥の方は暗く見えない。

 「ここ行くの?」

 「えぇ、この道が一番近いの」

 「魔物がいるかもしれないので、気を付けていきましょう」

 ヒロナが言ったその一言が両道のやる気をさらに削いだ。どのような魔物がいるかは分からないが、両道には嫌な予感しかなかった。

 森の中を進んでしばらく。かなり奥の方まで来たようだ。周囲に気を配るヒロナとシュリィ、その後ろにファヴニール、そしてだるそうに歩く両道が続く。「ちゃんと後ろを確認しなさいよ!」とシュリィから言われてはいるが、ファヴニールとは違って両道にはそんなことをしっかりやるようなやる気はなかった。

 そうしていると、向こうからガサガサと木の枝をかき分ける音が聞こえてきた。4人は音のした方に注目する。どうやらその音はこちらに向かってきているようだ。徐々に近づいてくる音とその正体が姿を現す。それは人よりも巨大な熊であった。

 「gaaaa!」

 両道達のことを見るなり叫ぶ熊。敵として認識したのか、明らかに優しくない目でこちらを睨んでいる。

 「フォレストベアー! 魔物よ!」

 シュリィが叫んだ。確かにこの圧倒的な感じは並みの動物なんかとは比べ物にならない。魔物と言われて、やっとそうかと納得が出来る。目の前にいるフォレストベアーという魔物の放つ恐怖を感じた証拠に、両道の足が動かなくなってしまった。あまりの恐ろしさに竦んでしまったようだ。

 魔物に対して、ヒロナは剣を抜きシュリィは杖を構えた。

 「gaaa!」

 再び魔物が叫んだ。

 「「ファイア」!」

 その瞬間にシュリィが魔法を放つ。火を出現させ、魔物の体へと付けるが、難なく振り払われてしまう。

 「はぁぁぁぁぁ!」

 次にヒロナが魔物に対して剣を振るうものの、魔物の持つ爪によって弾かれた。フォレストベアーという魔物の爪は非常に硬く、武器としてとても優秀だ。動物の骨すら爪によって切れるという。

 さらにフォレストベアーには巨大な体もある。人間の大きさを簡単に超えるその大きさは、突撃すれば樹木すら簡単にへし折ってしまう。もちろん、当たればただでは済まない。

 ヒロナとシュリィが魔物に攻撃を次々と行っていく。怯ませれば隙が出来る。2対1の戦いは、魔物の方が個体としての強さは上回るものの、その差を埋める数がこちらにはあった。そうして魔物には少しずつ傷が出来ていく。だというのに魔物には引く気配が全くない。下がれば殺されると思っているのか、とにかく必死に生きようとする生命力が魔物からは感じ取れた。

 魔物が立ち上がる。その瞬間、今まで息を殺していたように静かだったファヴニールが、ヒロナとシュリィの間を潜り抜け、一瞬にして魔物の胸を刺した。心臓と、それを守るように覆う骨もろとも貫き、一撃で魔物を仕留めたのだった。

 しかしその一瞬は恐ろしく長く感じられた。心臓がその鼓動を止めるのを何倍にも水に薄めたかのような一瞬だった。まるで目の前の大好物の料理を最大に味わって食べるかのような殺し方だった。それは料理を少しずつ食べるといったようなものではなく、逆に一気に口の中へと放り込んで潰した時に生まれる旨味を口の外に出ないように味わうといったようなもので、決して時間をかけているわけではない。ファヴニール、彼が魔物を刺した剣が血を飲み、彼の腕が魔物の中の剣から伝わってくる肉の感触に癒される。

 命という料理の最高に美味しいと感じることの出来る食べ方というのを彼はやってみせたのだろう。この料理の感想だけは聞くことは出来ない。

 そして一瞬は終わった。魔物はファヴニールが剣を抜いたと同時に声を出すこともなく、地面へと倒れた。抜かれた剣には血がこびりつくことなく、一滴も残さずに地面へと滴り落ちた。剣を下げ、振り向きこちらを向いたファヴニールの目はまるで違うものに見える。その目は血の通っていない手の驚くべき冷たさを放っていた。

 バッタを倒した時もこのような目をしていた気がする、と両道は思い出す。

 「ファヴニール?」

 「あ、は、はい」

 声をかけるとファヴニールは居眠りから覚めた時と同じ返事を返した。

 「大丈夫?」

 「はい、僕は・・・・・・」

 魔物を倒したファヴニールが両道達の知っているファヴニールとは別人のようだったように、今のファヴニールは先ほどのファヴニールとは全く違う。

 よく分からない感覚を抱くも、どうすればいいのか三人は分からない。とにかく魔物は倒した、ということで一旦前へ進むことにした。

 そしてしばらく進んで、木々の間から光が見えてくる。やっと森を抜けたと期待したが、別に森を抜けドラグニアに到着したわけではなかった。そこに生えていた木々を抜き、新たに作ったちょうどいい形のものを敷き詰め、人が通りやすいものに変えた、いわば舗装された道路がそこにはあった。

 しかし、道路がここまでしかないことと、端の方がまだ完全に敷き詰められていないことからまだ途中のものなのだろう。それでも、その道路を見た4人は驚いた。そしてこの先にあるドラグニアというまだ見ない街への期待を大きく膨らませたのだった。

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