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異世界運命記  作者: ドカン
序章
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第11話 戦いの後

 バッタを倒したその日の夜。ギルドはまるで、祭りでもしているかのように賑やかだった。

 生き残った冒険者と、町に被害が及ぶかもしれないとして避難してきた住民、全員が集まっていた。

 「危機が去って、後1年は安泰だな!」

 ひげを生やした中年の冒険者が、木製のジョッキを片手に持ちながら叫ぶ。ここにいるほとんどがこのようなテンションだ。あのバッタはあらゆる作物を食い荒らしてしまう、言わば農家とその恩恵を受ける全ての人にとっての敵であり危機だった。それが去って、安堵と嬉しさが溢れたのだろう。


 その少し前、ファヴニールがバッタを倒した後、両道達は疲れた体を引きずるようにしてギルドに帰ってきた。

 「やっと帰ってこれたね」

 「まずは体を休めましょうか」

 「そうね。もう限界だわ」

 「皆さん、喜ぶでしょうか」

 「そりゃね。それぐらいのことをしたんだから、喜ぶでしょ」

 町にバッタがやってきた時のためか、ギルドの扉は固く閉ざされており、中にいる人達に扉を叩いて自分達のことを伝える。

 すると、硬く閉ざされていたギルドの扉が開き、中から受付嬢が顔を覗かせた。両道達であることを確認すると、急かすように中へ入れられる。

 「おかえりなさい! ご無事でなによりです!」

 「おお! あんた達か!」

 「よく無事だった! 完全に逃げ遅れているものだと思ってたぜ」

 ギルドの中からは、バッタの脅威から生き残った両道達を称える声が挙がる。

 人混みをかき分けて、ギルドの受付嬢がファヴニールの前へやってきた。

 「ファ、ファヴニールさん、無事で良かったです! 他の皆さんも、無事で何よりです!」

 一通り迎えられた後、受付嬢が両道達に状況の説明を求めてきた。

 「それで、あの魔物は現在はどのような状況でしょうか? 詳しく、具体的に教えてくれるとありがたのですが・・・・・・」

 「あぁ、それなら倒しましたよ。皆で。結構ギリギリでしたけど。ははっ」

 両道がさらっと説明した。ギルドに避難していた全員が、バッタの情報を聞くために静まっていたので、ギルド内によく響いた。

 「え、倒した? それは本当ですか?」

 「うん。嘘じゃないよ。バッタの死骸がまだ外に転がってるはずだから、確認してもらっても・・・・・・」

 「あ、いえ! 別に疑ってるわけではないんですけど」

 「そういやアイツらの音が聞こえねぇな」

 「さっきまで聞こえてたから変だなって話してたんだよ。まさかお前らが倒しちまってたとはなぁ」

 「ちょっと見に行ってきてもいいか?」

 「おう、俺も行くわ!」

 そう言って何人かの冒険者がギルドを飛び出していった。もう夜遅くになっているというのに、テンション高くはしゃいでいる子どものようだ。

 ギルドに残った他の冒険者や住民はファヴニールや両道達から話を聞こうとする。

 「なぁ、あんたら本当に倒したのか!?」

 「本当ですよ。嘘だったら、バッタの群れはここまで来てるし、さっき飛び出していった人達も食われてるでしょ」

 「まだ若いのによくやるなぁ」

 「別に。他の奴らが全員ビビって逃げただけよ」

 「それはそうだが・・・・・・」

 「あの近くには私達の田畑がありまして。話を聞いた時はもう駄目かと思ったものです。討伐してくださり本当にありがとうございます。これで今年に無事に収穫が出来そうです」

 「そう言ってくれて私達も嬉しく思います。収穫を楽しみにしていますね」

 「本当に怖かったんだよ! ぜーんぶぶっ殺してくれて気分いいぜ!」

 「はぁ・・・・・・」

 それぞれが質問に答える。これでは休むことも出来ない。さらに奥の方では何やら騒がしいことが始まりそうだ。

 「せっかくだし祝いだ! この町の平和と豊作を願ってのな!」

 「オォ! いいな! 酒持ってくるぜ!」

 どうやら今日は休むことは出来なさそうだ。今欲しいのは祝いでも酒でもなく、静かな休息なのだが。

 「まじかよ」

 両道がため息混じりに呟く。肩を落としながらギルドを一望している横で、ファヴニールは浮かない顔をしていた。

 「どうしたの。元気ないじゃん。君が倒したんだから、もっと自慢気にいてもいいのに」

 「皆、死を喜んでいるように見えます。確かにあれは僕の力を持ってのことでしたが、あの命達も懸命に生きていたというのに、死を喜ばれるのは、なんだか・・・・・・」

 「まるで死神のように傲慢だな」

 「え?」

 「いや、ファヴニールの言うことも分かるよ。あの虫達も一生懸命に生きていて、彼らがやったことの全ては生きるためにしていたことだ。でも、ここの人達だってそれは変わらないと思うよ。今回はそうしたのがぶつかっただけでさ、結果的に今になっただけで、それだけだよ」

 「なら僕は、どう、すれば」

 「ただ受け入れるだけでいいんじゃないかな。あぁ、こういうものなんだなって。それで良いと思う。責任とかなんか色々感じてるのかもしれないけど、俺らも一緒だったわけだし、1人で抱え込んでても良いことなんてないよ」

 両道は微笑んだ。ファヴニールはそれを見た。見てどう思ったのかは分からない。

 そうこうしているうちに、外に飛び出していった冒険者達が帰ってきた。バッタの死骸もいくつか持って帰ってきたらしい。ちょうどいい証拠になるだろう。

 「本当に死んでやがった! ピクリとも動かねぇんだよ! ほら!」

 「そんなもん見せんじゃねぇ! 気持ち悪い!」

 「おう、ちょうどいいじゃねぇか。祝いの準備してんだ。皆で飲もうぜ!」

 「オォ! 気が利くじゃあねぇかぁ!!」


 そうして、ギルドは祭りでもしているかのように賑やかな、いや、両道達からすれば騒がしいかもしれない、ものになったのである。祭りでもしているかのように、という言葉も少し違うかもしれない。本当に祭りをしている。脅威がなくなったことの祝いと豊穣の祝い。その祭りである。

 ギルドは住民達が持ち寄った酒や食事であっという間に溢れかえり、それを冒険者達が簡単に調理だったりなんなりしていく。そして準備はとてつもない速さで進み、日付が変わる前に会は始まっていたのだ。

 「皆、酒と皿は持ったな。それじゃあ少し時間、いいか」

 ある冒険者の声によって場は静まり返る。

 「今回、犠牲となり、この場にいることの出来なかった者達に黙祷を捧げる」

 その言葉によって、この場にいる全員が目を瞑り、静かに頭を下げる。静寂だけが流れ、全員が死を悼む。

 そしてしばらくした後、皆、目を開けて酒の入ったジョッキを高く上げた。

 「んじゃ! 飲むぞォォォォォ!」

 一瞬にして場の空気というものが変わる。この祭りに、両道達も当然参加している。というより、参加せざるを得なかった。帰してもらえる状況ではなかったし、4人はこのギルドで寝泊まりをしているのだ。代わりの宿泊所も町にはあるが、そこの管理人までこの祭りに出席している。それに先程、他の冒険者達から「お前らが主役だかんな」などと言われ、さらに帰れなくなった。

 ここはもう諦めて、なんとか楽しむしかない。タダで酒も料理も食べ放題飲み放題なのだ。それでよしとしよう。

 そうは思いながらも、4人は4人で集まって、他の冒険者や住民達とは少し離れた位置で話すことにした。手には皿と酒。酒である必要はなかったが、飲み物はほとんど酒しかなかった。4人とも、一応はこの地方の酒を飲める年ではあるので大丈夫だろう。

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