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異世界運命記  作者: ドカン
序章
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第9.1話 招かれた災い

 時刻は昼過ぎ。ドラグニアに行くことにはなったが、他をどうするのかまでは何も考えていない。考える時間はたっぷりあるので、さて、4人で考えようとしたその時だった。

 ギルドに1人の冒険者が飛び込んできた。息を切らし、慌てた様子で言う。

 「き、来たぞ! アイツらが来た!」

 それを聞いてギルドにいた冒険者達が一斉に反応した。アイツら、というのはおそらくバッタのことだろう。前に別の冒険者から教えてもらった魔物で、季節に合わせてやってくるらしい。

 「おう、そうか! やっとか!」

 「あまりにも遅いもんだから、今年は来ないかと思ったぜ!」

 皆が装備を整え、外へ向かおうとする。が、ギルドに飛び込んできた冒険者は、また慌てて他の冒険者たちを止めようとした。

 「ま、待て! 行くんじゃねぇ!」

 「何だよ、冷めるじゃねぇか」

 「ん? お前その恰好はどうしたんだ? やけにボロボロじゃねぇか」

 見れば、その慌てている冒険者の防具は傷だらけだった。全身を覆っている防具で、防御力や耐久力も悪いわけではない。しかしそんな防具のあちこちが傷だらけになっており、完全に中身が見えてしまっている箇所もあった。この町の周辺ではこんな傷はつかない。嫌な予感がギルドの冒険者達に漂い始めた。

 「こ、これはアイツらにやられたんだ。アイツら、いつもとは違う・・・・・・。とんでもないバケモノになってやがった!」

 「バケモノ?」

 「あぁ、そうだ。アイツら、人まで食うようになったんだ。俺の仲間も何人かやられた!」

 その情報に、この町の冒険者達の間に衝撃が走る。アイツらことバッタの大群は毎年のようにやってきてはいたものの、バッタの大群は草や木、特に薬草ばかりを食べており、肉、それも人を食べるというようなことはなかったからだ。もし傷だらけの冒険者の言った通りならば、これまでの経験とは全く違うことが起こるだろう。

 冒険者達が話を聞いてざわついていると、ギルドの職員達も何やら慌ただしくなってきていた。焦りや混乱を感じる。穏やかではない。ただ何となく察しはつく。おそらくアイツらについてだ。

 冒険者の1人が職員に声をかけ、何に慌てているのかと聞く。

 「それが、町の外の家畜や作物が空飛ぶ黒い塊にやられたと。多数の方から報告が届いていまして。おそらく、その、例年通りバッタなのではないかと思われるのですが、過去のデータとは異なる点が多くありまして。危険かもしれないとギルドも確認ができない状況なんです」

 冒険者達の不安がさらに増す。やってきたのは毎年恒例の虫けらのはずだ。しかし、それと話がどうも合わない。死の危険を感じる。そして実際に被害者が出ている。この町ではまずなかったことだ。

 「ねぇ、もしかして今ヤバい感じ?」

 現状を把握出来ていない両道が小声でヒロナやシュリィに聞く。

 「そうみたいですね。皆さん慌てているようですし」

 しかしヒロナやシュリィもこの町に来たばかりで、今どういったことが起こっているのか理解出来ていない。もちろんファヴニールもだ。ギルドの隅でひっそりと事を見守る。これからどうなるのか、それ次第では自分達に何か影響が出るかもしれない。

 「何を怖がっていやがる! ただのバッタだ! どうせ大したこともないだろう!? そんなんじゃ他の町の奴らに笑われちまうぞ!」

 1人の男が、そう言って勢いよくギルドを飛び出していった。彼もまた冒険者だ。こんな田舎のような町にいるが、かつてはベテランとして活躍していた過去を持つ。その中には死と隣合わせの依頼というのも数多くあった。また、戦争では従軍していたこともある。死線をくぐり抜けてきた者の使命感からか、不安に染まりかけていた空気を何とかして奮い立たせる。

 そんな彼に他の冒険者たちも触発される。さっきまでとは一変して、闘志に満ちたものになった。

 「そ、そうだな! 少し大げさ過ぎたんだ!」

 「俺らも行くぞ!」

 次々とギルドから勢いよく走っていく冒険者達。年数の差からか、あまり同調出来ない4人ではあるが、ここで自分達だけが置いていかれるのも何だか忍びないので、他の冒険者達の流れに付いていくことにした。

 「でもこんなに多人数だと案外すぐに終わりそうだよな」

 「そうね。どんなのが来るのか分からないけど、言ってもただのバッタでしょ? 楽勝よ、楽勝」

 「そうだといいんですが、他の冒険者の方々もあんな風でしたし、あまり油断しない方がいいんじゃないでしょうか・・・・・・」

 「大丈夫です! 何があっても僕が皆さんを守りますので!」

 「おっ、頼もしいねぇ」

 両道とシュリィは楽観的。ヒロナは慎重。ファヴニールも楽観的ではあるが、彼なら言葉通り何があっても大丈夫だろう。

 バッタの群れが出現したと報告があったのは、ギルドから少し離れた場所にある草原だ。

あの一帯は豊かな土壌が様々な種類の植物を育てる。また、昔から穀倉地帯としても活用され、多くの地域にとって重要な場所でもある。誰かにとって重要な地域というのはそれ以外の者にとっても重要ということでもある。それは人同士でもそうだし、人以外であっても変わらない。

 4人は冒険者集団から距離を開けて付いていく。

 「いたぞ! アイツらだ!」

 やがて、先頭を走っていた集団がバッタの大群を発見し叫ぶ。剣が風を切り裂く音や魔法が放たれている様子から、既に戦いが始まったことが分かる。ここでバッタの群れにやりたい放題させては、この辺りは大きな被害を受けることになる。そうならないためにも、ここで出来る限り数を減らしておく必要がある。

 遅れて4人が他の冒険者集団に追い付く。そこで目の前に広がっていたのは、冒険者達と黒い塊のようなものが宙に浮かびながら戦っている光景であった。黒い塊は自分達が冒険者から攻撃されていることが分かっているのか、放たれる魔法を躱し、振り回される剣を避けながら冒険者達に噛み付く。

 その黒い塊は分裂と合体を繰り返しながら、冒険者達を攻める。1匹では噛まれても大したことはないが、それが何百匹、何千匹と一気にやってくる。やがてバッタ達が1人の冒険者を覆った。

 「離れろ! 離れろ!」

 噛み付いたバッタ達を必死に払おうとするが、全く離れない。他の冒険者達の攻撃は、どうやってもその冒険者に当たってしまうためにうかつに攻撃ができない。見ていることしか出来ないのだ。

 「痛い痛い痛い痛い! だ、誰か! 助けてくれ!」

 悲鳴を上げるその冒険者。やがて声が聞こえなくなり、黒い塊は覆っていた冒険者から離れた。そしてそれを見て、誰もが驚愕した。そこにあったのは、その冒険者が身につけていた装備と、綺麗なほどに肉一つついていない白い骨だった。

 「う、うわぁ!」

 あまりの出来事にそれを見ていた冒険者が声を上げるが、その隙に他の冒険者が黒い塊に飲み込まれた。そこに魔法が放たれる。

 「お、おい!」

 「仕方ないだろ! 早く倒さないと皆やられちまうぞ!」

 混乱がその場を支配していた。あらゆる攻撃は意味を成さない。なぜならば、どんなにバッタを倒したところで、それ以上の数のバッタ達が周囲を飛び回っているためである。想像以上にバッタの数が多い。これではキリがない。

 ある程度、冒険者を飲み込んだところで黒い塊は空中で動きを止めた。その間に誰も攻撃しなかったのは、黒い塊の動きがあまりにも奇妙なものだったからだろう。

 「なんだ、あれ」

 その場にいる誰も答えられなかった。黒い塊は周囲の群れと次々に合体し、大きさを増していく。やがて姿を変えた。現れたのは、人より大きな体と手足。翼を生やし、空に漂う。

 「ドラゴン・・・・・・?」

 誰かが呟く。皆、同じことを思った。

 「ba、bababababababababababababababababababa!」

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