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異世界運命記  作者: ドカン
序章
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第9話 悩み事と次の目的地

 「はぁ」

 「いつまで溜息ついてんのよ」

 両道は今、机に突っ伏したまま動こうとしない。先ほどの受付嬢の反応を見て、彼を悩ませる種が増えてしまった。

 「無理だよ。どう考えても」

 「恋バナのことね」

 「そんな風に言い換えないでよ。どう進んだって良い気になる気がしないんだからさ」

 「そこを何とかするのがあんたの役目よ」

 受付嬢はファヴニールに思いを抱いていた。彼のために始めたばかりの受付嬢の仕事を頑張り、ギルドを支えられるほどに成長した。ファヴニールが来るまでの彼女の仕事ぶりについては、町の冒険者から新入りなので仕方ないと思われていたそうで、それが冒険者達の迷惑になっていることを彼女は知っていた。しかし、ファヴニールには迷惑をかけたくないとの思いから、受付嬢である彼女は努力をしたのだ。

 ファヴニールの顔立ちは、この閑散とした田舎の、男ばかりの環境にやってきた爽やかな風であり、それはどんな場所へ行っても通用する美しさと男らしさを兼ね備えていた。さらにそれだけでなく、誰もが信頼できる強さがある。強さに似合った鍛えられた身体が鎧の下にはあり、それでいてありすぎない。性格も誰に対しても優しくある。両道達以外から見ればまさに理想の男性像だ。

 「でも彼女にとっては、やっぱり魅力的なんでしょうね」

 「そういえば2人はファヴニールのことカッコいいとか思わないの?」

 「整った顔だとは思うわ。それだけね。好きとかカッコいいとかは全然」

 「私も、シュリィさんと同じですよ。でも顔で言ったら両道さんも結構整った顔をしてますよね」

 「本当!? 俺イケメン!?」

 「うーん」

 「えぇ・・・・・・」

 イケメンかどうかは濁されてしまった。そこが重要だと思ったのだが、まぁいい。あまり大した期待もしていなかったし、仮に顔が良いからといって何かが都合良く好転するわけでもない。

 「でもファヴニールぐらいのイケメンなら、こんな所に置いておくのはもったいないかもしれないわね」

 「どういうこと?」

 「もっと人のいる街に行けば、使えるかもしれないわ」

 「例えば?」

 「そうねぇ、ファヴニールに女を騙して金を取らせるとか」

 「いきなり良くない例えがきたな」

 「奴隸として売るのもありかも」

 「奴隸?」

 聞き慣れない言葉だ。少なくともこの町では聞かないし、見たこともない。しかし、どういったものなのかは大体察しがつく。

 「高く売れるでしょうね。顔が良いから。ここら辺だったら、ドラグニアが1番近いのかしら」

 「売るとかどうとか、そういうことはしないよ」

 「まぁでもドラグニアに行けば、仕事もたくさんありますから、稼ぐのには良いかもしれません。この町にはない物もたくさんありますし」

 「それなら行ってもいいかも」

 「この町にないものっていうと、魔人もそうね」

 「魔人?」

 「知らないの? 勇者が魔王を倒してから、色んなところで魔王に従ってた魔人達が捕虜や奴隸として売られてんのよ」

 両道がヒロナと出会う少し前のこと。かつて人類に多大な恐怖をもたらしていた魔王と呼ばれる存在が世界には存在していた。そこに勇者が突如として現れ、魔王を倒したのだそうだ。魔王が倒される前までは魔人の奴隸なんて極々少数しかいなかった。しかし勇者が魔王を倒してからは、その数は増え続けている。やがてはこの町にもやってくるかもしれない。

 「また奴隸の話かよ」

 「あんたが聞いてきたんでしょ!?」

 「俺が聞いたのは魔人の話。奴隸に繋がるなんて思ってもみなかったよ。まぁでも、ドラグニアって所には行ってもいいかもね」

 「そうね、少し落ち着いたら行ってもいいかもしれないわね」

 「ふふ。今から楽しみです」

 そんな会話をしていると、どこへ行ってたのか、ファヴニールが3人のもとへやっと来た。ファヴニールは何も言わずに両道の隣へ座る。

 「すいません。待たせてしまいました」

 「いや、いいよ別に。予定もないから、待ってたわけでもないし。話してただけだよ」

 「そうでしたか」

 「ファヴニールはどこ行ってたの?」

 「受付の方と話をしてました!」

 「そっか」

 その言葉に両道は再び頭を抱える。止める気はないし、反対もしないが、多分良いことなんてないような気がしてならない。逆に聞いてみた。

 「ファヴニールさ、あの受付嬢のこと、どう思う?」

 「自分の役目を果たしていると思います」

 「他には?」

 「いえ、それだけです」

 「そっかぁ」

 とくに何も思っていない様子。それはそれでどうかと感じる。が、まぁ、進展する気配がないなら、このことにこれ以上首を突っ込む必要もないだろう。

 そしてこの日は、このまま何もなく静かに終わった。


 次の日。両道達は再び森へ来ていた。薬草採集をするためだ。まだ昼前。しかし今までコツコツとやり続けていた分、そろそろ終わりが見えていた。

 「これぐらいでいいかな」

 「そうですね。確かにこれぐらいあれば、十分だと思いますよ」

 「思ってたより早く終わったわね」

 集めた薬草をカゴ一杯に積み、ギルドへ持って帰る。それを受付嬢が確認し、ついに依頼は達成された。始めから終わりまで地味な依頼ではあったが、達成出来た時の達成感は大きい。やっと解放された喜びでもあるかもしれない。

 そして4人はもはや慣れたように席につく。

 「やることがありませんけど、これからどうしましょうか」

 「もう次のこと? しばらく休みでいいんじゃない?」

 「そうよ。ヒロナは気が早いわ」

 まだ午後にもなっていない。こうして暇しているのも悪くはない。ただ他に受けている依頼もないため、暇というよりは仕事がないと言った方がいいかもしれない。なんとなくでも仕事はあった方が変な焦りや不安に駆られることはないが、両道とシュリィは忙しくなるのは嫌だった。

 「でも明日はどうするんです?」

 「明日のことは明日にでも考えればいいよ」

 「そうよ。ウチは懐も余裕なんだから、寝てるだけでもいいのよ」

 「依頼がもうほとんどないんです。それにせっかく見つけた財宝も浪費ばかりしていてはいけません!」

 「つまり、何が言いたいの?」

 シュリィが尋ねる。両道もシュリィも、それにつられてファヴニールも机の上でぐったりしている。こんなところで根性論なんて役に立ちはしない。

 「単刀直入に、ドラグニアに行きませんか、ってことです。依頼もないのにダラダラと過ごしていても怪しまれます。だって仕事をしてないんですから。今までの依頼と今回の採集依頼だけで過ごしてたら本来はギリギリのはずなんです。それを何とか誤魔化してたんです」

 「そうねぇ。でもこの町から離れたら財宝も取りに行けなくなるわ」

 「確かに」

 「あの遺跡なら離れても問題はありません。皆さん以外は立ち入れませんので」

 ファヴニールが遺跡について言う。何か根拠とか証拠とかがあるわけではないが、ファヴニールが言うならそうなのだろうと、妙に納得してしまう。それに、実際に見つけてから今まで自分達以外に誰かが入った痕跡は全くなかった。

 「財宝は取られないようですし、少し経ってからまたここへ戻ってくるというのはどうでしょう? それまでドラグニアで過ごせば良いわけですし」

 「まぁ、それなら・・・・・・」

 シュリィが小さく頷く。

 「シュリィが良いならいいや。とくに未練とかないし」

 「自分も皆さんにお供しようと思います!」

 そんなわけで、行き先が決まった。

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