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一日目02

パソコンが欲しいなぁ―

7月23日8時58分:空のバイト先のスーパー









「・・・間に合った」


先に結論からいうと空はバイトに間に合った


早起きしたはよかったものの、朝食の件で浮かれはしゃぎ過ぎたお陰で、何時も通り遅刻間際でバイト先に滑りこむことになり、

務め先のスーパーの店長に労い(殺意の)籠もった視線を浴びせられたのだが、ギリギリ始業時間前に来れたので其処は不問となった


しかし、その後店長に


「もう少し早く来てね空クン。じゃないと次はクビかも、ね」


とすごい鬼気の迫った笑顔とセットになった説教を食らってしまったので次回からはそれなりに気を付ける事にしようと決意した空であった


そして彼は今メインのレジ打ちの仕事に取りかかる前に10時の開店に備えて、店頭に並べる商品の整理に追われていた


デリケートな発砲スチロールに梱包された惣菜を棚に並べたり、肉売り場の商品を冷凍庫から引っ張り出して惣菜同様に並べたりするなど忙しかった


(くそっ、毎度ながらここのバイトは忙しいなァ

こんな事になるのならば都会に出てフリーターにならずに何処かの会社に勤め正社員になるか、地元で大学又は専門学校に通って親のスネをかじりながらもう少し楽を、、、やいや

将来的に他の道を模索する道を選べば良かった


流石にニートなんてだらしない者にはなれんからね)



こんな事を考えている内にあっという間に店は開店


レジ打ちに仕事をシフトチェンジした空は、今夜のメニューや昨夜放送されたお笑い番組に付いて考えながら仕事をこなしているとあっという間に12時半の休憩の時間のチャイムが鳴った


パートの人間ばかり居る休憩所(仲は悪くないのだが)で飯を食いたくなかった空はいつもスーパーの近くにある茶々丸という変な名前の喫茶店で食事を取っている


そこのマスターは気の良い中年の、と言うよりは、ダンディー膳とした影を持った大人の男という風情な感じで、空も此処に上がって職を探していた当初はよく世話になり、マスター特製コーヒー牛乳をご馳走してもらっていた


「ちわーす」


ドアから店に入るとコーヒー豆の香ばしい匂いが空の鼻をくすぐる


クラシックという単語がイメージ通り様になっているバーの奥では、丁寧にガラスのコップを磨いているマスターがいた


「よう空、バイトお疲れさん。今日もここで弁当食うのかい?」


「そうっす、今日もお邪魔、、


マスターが前に居る席に座ろうとすると、ちょうど今、テレビで放送していたニュースに俺は完全に目を奪われた


「ーーーでは、次のニュースです。

今世間を騒がせている多発的連続通り魔殺人事件ですが、今度は〇〇県〇〇市にて合計8人の変死体が山本商事裏のビルにて発見されました。情報によれば遺体の損壊部分は激しく、所々で欠損部分があるようです。警察は猟奇的犯罪の線で捜査を進める方針でーーー」


最近世間で話題に上がり、多局でニュースになる頻度もかなり高い同時発生通り魔事件だ

発端となった最初の事件が発生したのは半年前で被害者は今より少ない二人程だったのだが、

その内一人の遺体は体が所々欠損していたらしい


そんな感じでニュースで勿論知り得ない情報をある友人(と言うより悪友)先程と同じく変死体と放送されていたが事実以上にネット上掲示板などの噂で聞くような情報にまで踏み込んでいた


それによれば通り魔に遺体を喰われただの、犯人は悪魔の儀式を行っていただの、悪魔が取り憑いていた等の事が面白半分に囁かれていた


空個人としてはそのような噂を鵜呑みにしなかったものの、

今まで生きてきた中でこの事件がどれだけ異質であるかを彼なりに感じ取ってはいた


この事件は邪悪かつ醜悪な企みによって齎された物であると


そして空の悪友も同じ様なことを言っていた


しかしいくら同じような事件が過去にあったとしても同時期にこれほどまでに不気味な犯人が多数存在して同時期に通り魔事件を起こすなんてことは非常に考え辛い


同じ時間にて散発的に行われる犯行自体は以前悪友と共に個人的な興味で調べていたアメリカの同時多発テロに似てはいるが、あの事件とは異なり、この通り魔事件は半年前を皮切りに長期に渡って先程の殺人事件に酷似した犯行が各地で所々続いている


まさか有り得ないとは思うが、こうも不透明で先の見えない事件はネットで囁かれていた悪魔が蘇って取り憑かれた人間が凶行を行っているという説も奇妙な真実味を浴びてきてしまう


しかしそれ以上に腑に落ちない点は犯人の動機だ

俺は悪魔説を受け入れた訳ではないが、何故か、今までの事件に潜む黒幕が存在するかもしれないと疑っていたのだ


根拠はないし、陰謀説もマスコミやネットで言われている事もあった、それにこれは事件の傾向も考慮にいれた上で半分くらい空本人の直感も入っている


しかしながら騒がれている話はやっぱり事件を楽しんでいる連中が下手なSFや映画を元にしたジョークに当てはめて笑い話にしているだけで確実な根拠が在るわけでもない


不気味で黒幕を赦せない事件だと思いつつも、空も事件を楽しんでいるという点では、やはり世間の連中と変わらないと言うだけの話だ


そこでふと、空はマスターに尋ねた


「マスターは、この事件の事をどう思います?」


「妙な事件だと思う。少なくとも私がいままで生きてきた中でこれほど奇妙な事件は知らないよ」


そう答え、言葉を続ける


「犯行の異常さについては何か不気味な組織めいたものがバックに居るのではないかとを感じている」


なるほど、論点は空とそれ程変わらない


「そこは俺と同じ意見ですね」


マスターは再び話す


「だがやはり、この同時多発連続通り魔事件に関して言えるのは、個人の欲望なんかより巨大な無機質な意思が介入している点だと思うよ

犯人の経歴は至ってバラバラで共通点が見えないし、容疑者の全員が全員そうではないかもしれんが、犯行を起こすような人格の持ち主は極めて少ない」


そこでマスターはいつ用意したのか、コーヒー牛乳の入ったガラスコップを空の眼前に滑り込む


その時のマスターの動作が洋画で主人公に注文した酒を渡す際にバーの奥から細長いテーブルを伝って中身の入ったグラスを主人公の前へと滑り込ませる動作にそっくりだったために、今は見慣れたとはいえ、空は初見の際にびっくりしたものだ


勿論マスターから空への奢りである


空が礼を言ってそれを飲み干すまで待った後に言葉を続ける


「それに犯行の共通した特徴ーーー逮捕いや、中には行方不明になったものも居るらしいが全員が錯乱しているような事を言っている」


「さぁ?殺人犯なんてみんな頭おかしいことばかり考えているんじゃないですか?」


「さてな、それについては私でもよく知らん。知りたければ専門書でも読むか、キミの好きなネットから真実を探り出すのだな」


「流石に其処までしたくないですよ、、、」


げんなりとしながら答える空を無視して続けるマスター


「それに時点の共通点であり重要な情報でもある被害者の死体状況だ。テレビなんかのマスメディアでは変死体としか発表してないが、君との会話の話題になると思い少し調べみたのだ。

しかし、驚くべき事が判った」俺は気になって聴いてみた


「判った事って一体何なんです?」


マスターは静かな表情を作った後、静かに答えた


「体のあちこちが欠損していたという死体には、何者かに食い破られた跡があったそうだ、当然の事ながら野犬やカラスの仕業ではない、人間がやったのかと言われてもまるで違う。そう、それはまるで、、、」


空は弁当を食する手を休め、重要な事実を聞き逃さんとマスターの声に静かに意識を傾ける


「人間に極めて近く、、それでいてかなり身体能力を誇り、これまでに全く確認のなされていない未知の生物の痕跡だったらしい」


「何ですって?」


意外過ぎる事実に空は思わず立ち上がっていた

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