二日目05
戦闘シーン有ります
「さて、
ショウ・タイムだ」
コート着た異様に背丈の高い男らしき乱入者が告げる
その言葉一つだけで喫茶店内の空気は奇妙な男によって支配さつつあった
空は状況について行けなかった
なんだ、こいつは?
何で、此処に来るんだ?
どんな目的でこの場所に居るのだ?
そして、彼自身が抱いた一番の懸念は
(俺かマスターに…用が有るのか?)
あまり急な出来事に体が緊張と男の放つ異様な空気のお陰で金縛り状態にある空は眼球のみを動かして男の様子を伺う
勿論、コートの下に隠された男の素顔は見えないが、フードの奥から突き刺さってくるギラついた雰囲気から普通の穏便な目的を持っているとは思えない
ただただ、不気味な非日常だけがそこに鎮座して彼を見つめていた
すると、唐突に男が空を向いた
「お前」
「な、何だ!」
男はいきなり空に声を掛けてきたのだ
戸惑う空に男はさらに淡々と続ける
「俺達の元へと来てもらおう
尤も…」
男はマスターの方を向いた
空もつられて彼と同じく喫茶店の優しい店主に目をむける
「…そいつは抵抗したいらしい」
空はマスターの変化に気付いた
マスターはコートで今もなお素顔を隠している男に対しての一分の隙も見せずに佇んでおり、それでいて自分を遠慮なくかつ挑発的に覗いてくる男を威嚇するように睨みつけていた
それはいつも優しく空に接してくれるマスターとは違った人物に見えた
空の知らない顔をしたマスター
コートの人物
今現在この場でおこっている事
そのどれもが平凡すぎる日常から、危険で、世の道理が通用しない非日常と化して空の今と化していた
喉が見えない力によって押さえつけられている気がした
息が出来ない
空気は有る
だが、空間に漂うそれは現実感を伴っておらず吸い込むことを思わず躊躇してしまうほどにマスターと男の放つ殺気に満ちていた
周りが一瞬にして空気から毒ガスに変わった気がする
吸い込んだら死ぬのではないか?
そんな錯覚すら覚えてしまう
しかし、場の重さに耐えきれずに喫茶店内に充満する無色透明の気体を半ば無意識に吸い込んでしまう
只の空気だった
空気だと解り安心した矢先に空の喉がゴクリと音を立てた
それが合図だったかどうかの様にマスターと男は同時に動く
マスターは空の方向へ、男は右腕を振り上げてマスターへと突進する
男の右腕からは何故か三本の鋭い鍵爪が伸びていた
それが大気を切り裂きマスターへと降り降ろされる寸前にあらかじめマスターが男に向けていた手から音が出た
否、それは音と呼ぶには大きい炸裂だった
それが、連続的に発せられその都度男の体が後方へとのけぞるように震える
空はマスターの腕に握られているモノを見た
それはゲームかサバゲーの雑誌でしか見たことのないサブマシンガンだった
名前は忘れたが、昔見た映画で敵役が使っていたかのような取り回しの良さそうな小型機関銃
それが今もコート姿の男に向かって放たれている
空は再び混乱した
(マスターが何でこんな銃を?
マスターが人を撃った?
あの優しいマスターが人を殺した!)
マスターに手を掴まれどこかへと引っ張られていくのを感じながら空の脳裏には無数の驚愕と疑問が頭を飛び交っていた
そして、唐突にサブマシンガンからカチと短い音が鳴り連続していた銃声が止んだ
マスターが男がいるから入り口から反対側を指して叫んだ
「早く裏口へ!
ヤツはまだ死んではいないッ!」
マスターの荒々しい雰囲気に圧倒されながら空は言われた通りにした
去り際にマスターの方を見るとマスターはサブマシンガンの弾装を慣れた手つきで交換し、再び男へと向けていた
ワンカートリッジ分の銃撃を受けながらも男はコートが多少破けているのみで対してダメージを受けているようには見えなかった
それは信じられない光景だった
自分はマスターに宗と話してくれることだけを頼みに訪れただけだったのに
こんな出来損ないの映画みたいな場面に出会すなんて全く理解できない
一気に日常が非日常に侵食を受けたみたいだ
それに、自分を狙ってくるあの男は何なのだろうか?
走りながら思考していく中で空は泡のように浮かび上がってくる疑問を打ち消し、喫茶店の裏口のドアから外に向かって駆け出した
「行ったようだな」
あれだけたくさんね銃弾を体に受けたにもかかわらず、まるでダメージを感じさせない声で男はマスターに告げる
一方のマスターはに服ごと切り裂かれた胸を片手で抑えながらよろめきつつも男に銃を向けていた
そんな満身創痍な彼を見て男は鼻を鳴らす
「あのガキを庇ったのか
無駄なことを」
「無駄じゃない
少なくともお前から逃げる時間は稼いだつもりだ」
男はクク、と笑いながら言葉を返す
「どうだかね?
外には別動隊が待っている
逃れられるとは思えんな」
マスターの驚愕ぶりを見て男は満足そうに鼻を鳴らした
「済まないが、此方も必死なんでな。
色々と手を込ませて戴いた」
次の瞬間。マスターが憤慨した
「この外道!悪魔め!
お前達はあれだけの非道を犯しながらまだ実験を続けるか!」
「さあな。
俺達だって好きでやってるわけじゃないが、これで喜ぶ奴がいるんだとよ
詳しくは知らん。興味は無いし、関係無いとは言い切れないが俺も直接は関わっていないからな」
マスターはあらん限りの憎悪を滲ませ男を睨み付ける
決して少なくない量の血で床を濡らしながら猛々しく敵意を噴出させるその姿はまさしく修羅にだった
男はそれを嬉しそうに眺め、さぞかし楽しそうに告げた
「さて、あんたも長くはないだろうからさっさとケリを付ける
なるべく俺を楽しませてくれ」
男が人の枠を遥かに超えた速度で一瞬の内にマスターへと飛びかかった
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