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美女?と野獣の異世界建国戦記  作者: とりあえず
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戦争が始まる


 この日のことを、おれはずっと忘れないだろう。


 結界都市となったネーストはビストマルトの軍勢に囲まれた。ビーグロウを送り返した数日後に軍はこちらに向けて動き出し、今やだれ一人として逃げ出さないように包囲網が敷かれている。


 どうやらビーグロウとの交渉は失敗に終わったようだ。まあ、『それは予定通りなのだけど』。


 ネーストの住民は家の中でひっそりと息を殺しており、ゴーストタウンのようなさみしさに満ちている。戦争という圧倒的な力の流れが空気を緊張で満たし、ひりひりと肌をさすようだ。


 おれらはギルドのホールに集結し、今後の展開を話し合っていた。普段よりずっと真剣な雰囲気で満ちていると思いきや、なんだか拍子抜けしてしまうほどいつもと変わりない。

 だが、それはおれらだけの話であり、ゴウランやイグサは緊張にこわばった顔を隠しきれていない。確かにどうみても戦力差は圧倒的で、現状が絶望的だと信じて疑っていない。

 それでも戦意が消えていないあたり、この二人もなかなかのつわものだとは思うけど。


「レビィの方はどうやら問題なさそうだな。あっちはあいつ一人でも何とかなるだろう」


 ハンテルが気の抜けた声で状況を説明し始める。あの後何度か攻め込まれたが大量に設置したトラップによって阻まれ、今は拠点でおとなしくしているそうだ。一人でなんとかなったのかとゴウランが瞠目するが、その気持ちはおれもよくわかるぞ。おれも報告を受けたときは一人で何とかできるのかよって内心ではつっこんだし。チートだチートだと思ってはいたけど、実際にやられるとやっぱり驚く。


「それにしても、交渉は失敗したみたいだね。やっぱり、ポータルの設置なんて荒唐無稽と思われたんだろうか」


 次に口を開いたのはイグサだ。この灰色狼は魔法職としてポータルの設置などという技の難易度をよく理解している。普通に考えたら、大国でようやく3つくらいの管理しかできないのに、おれらがそれをできるのかといぶかしく思うのも無理はない。


 しかし、それを疑われて攻めてきたのかといわれると違うと返答するしかない。説明を求める雰囲気をヴァルが察知して、なんでこんなことになっているのか教えてくれた。


「いえ、むしろ逆でしょう。信じられたからこそ、攻めてきたのです」

「どういうことか、教えてもらっていいかい?」

「……ヴァル」

「かしこまりました。それでは端的に」


 こいつはもう、おれが言わないと積極的にほかの奴と絡まないんだから。そんな簡素な説明で他の奴がわかるわけないだろうに。


 名前を呼ぶだけで狼は理解してくれるので助かっている。謝ろうとは思ったけど、どう切り出していいかわからなくて困ってるんだ。別に喧嘩してるわけじゃないから、切り口がつかめない。

 こーいうところでコミュ障なんだよなあ。素直にごめんなさいって言えればいいのに、チャット(現実世界の)だったら簡単なんだけど対面は難しいよ……。


 そんなおれの情けない葛藤に当然気づくわけもなく、ヴァルは粛々と言葉を積み上げていく。


「我らが今まで放置されてきた理由は単純です。『せめても利益が何もない』これにつきます。結界を突破するには膨大な兵力が必要で、また突破できたとしても利益はこのわずかな土地だけです。一応町を覆っている結界の技術目当ての可能性もありましたが、ノレイムリアとのにらみ合いの中でそのような暴挙には出られないでしょう」

「ああ、そのためにハウゼン君は残ってたのか。ビストマルトが動けばすぐにでも対応できるように。抑止力ってことかな」

「左様でございます。しかし、それを我らは崩しました」

「……そういうことか。ビーグロウとの交渉は、『土地と技術がある』ということをひけらかすためのものだったんだね」

「そうでございます。もちろん、姫様としてはそのまま争いなどなく交渉が進めばよろしかったのでしょうが、こんな国とも言えない国を攻め落とすだけで土地と技術が手に入るのですから、それは当然攻めようというもの」

「待ってくれるかな。それじゃあ、まるで君らが『この絶望的な状況で勝つつもり』のように聞こえるのだけど?」

「もちろんそのつもりです。そのためだけにわざわざホリークの力を見せびらかしたのですから」


 外を覆いつくす軍隊相手に勝利を収めるなどと平気でヴァルは言う。これまでのおれらのチート具合を鑑みて、赤鬼と灰色狼の二人はそれをどう受け止めていいか迷っているようだ。

 おれらの強さは十分に知っている。だが、果たして軍隊を相手にできるほどなのだろうか、と。


「だとしたらよ」


 今度はゴウランが疑問を投げかける。赤鬼のいかつい顔に浮かぶのは不敵な笑みと試すような視線。肝の据わった男はおれらのことをここに至って値踏みするように扱う。


「なんでこっちから攻めなかったんだ。こっちが攻めればそんなめんどくさいことしなくてもよかっただろうが」


 その時ヴァルが浮かべた笑みはとても凄惨で、他者を見下す愉悦がにじみ出ていた。思わずゴウランが身構えるほどの笑みを浮かべて、狼は言う。


「そんなことをしては――――あの国を滅ぼしてしまうではありませんか」


 さすがにこれには二人も絶句して、二の句がつげないようだった。


 驚くのも無理はない。けど、レートビィ一人でヨルドシュテインの軍隊を足止めしたことを考えると、あながち嘘とも言い切れないんだよなあ。

 そもそもこっちにはまだ大量殲滅を可能とするブレグリズやホリークとかいう兵器がいる。レートビィは守護なら一応大軍と戦えるが、攻めるとなると不得手だ。そんな兎一人に後れを取るようだったら、彼らがでたときはどうなるのか想像もつかない。


 あいつらはもともと万能に戦えるように作った奴だ。ブレズは剣技を使えば対人戦も大軍戦も可能だし、切り札を使えば攻城戦も、もしかしたら対国戦も可能なんじゃなかろうか。

 さらに加えて随一の攻撃力を持つ竜騎士には召喚用の竜兵がいるし、魔法力ならずば抜けている鷲魔導士には使い魔召喚技術がある。国を亡ぼせると言われると、納得してしまうんだなこれが。


 それに、おれらが攻めては周りから危険視されるだろう。今回ビストマルトが攻めてきたのは、あくまで独立を許さないという建前に基づいてだ。おれらが勝手に独立を経て攻め込んで、あげく大国を亡ぼしたら世界中が騒然とするだろう。次は我が身と思われてしまうと、どうしたって敵視されて動きにくくなる。

 なので、今回は防衛だからしかたないよ! っていう体裁を整えて打ち破りたかった。そうでないと周りから警戒させすぎるだろうし。最悪全世界から敵対される。

 そうなるといくらあいつらが強くても数の前に負けるかもしれない。それは背負うには大きすぎるリスクで、だからできるだけ避けたかった。


「あとは、なんつったってブレズの晴れ舞台だ。観客は多いほうがいいだろうさ」


 ハンテルがにやにやしながらブレズを見ると、かの竜騎士は複雑そうに眉を寄せる。


 今後この国を作り上げる設定に、ただ一人文句を言っていたのがブレズだ。この竜にしてはめったにないであろう抗議をうけて、おれらの誰もが同情してしまった。誰だってこんな役回りはいやだと思うが、適任がこいつしかいなかったんだ。


 人数的にはどうみたって絶望的。しかし、おれらの誰もが余裕を宿している。


 それはそうだ。レートビィの防衛とヴァルの暗殺がすんなり行き過ぎたことでおれの心配事が杞憂だと突きつけられたんだ。これ以上無駄な心労を重ねたくはないさ。


 ブレズはいまだに不満げな顔をしていたが、理詰めで考えればわからないわけではない。それが最善というのなら、ましてやおれの命令もあって、一応は受け入れてくれている。


「完全に力不足かと思いますが、最善を尽くすことをお約束いたします」

「ありがとうな。大変な役割を押し付けて申し訳ない」

「いえ、わかってはいるのです。我らの中でその役割が最も似合うのが私であることくらい。しかし、姫様を押さえつけての役割ということで、差し出がましいまねをと自責の念に駆られているだけです」


 竜の口角が緩やかな弧を描き、おとなしくブレズは覚悟を決めている。

 性格的には合わないだろうけど、そこはぜひ頑張ってもらいたいところだ。


 さて、もはや戦争を前に猶予はないだろう。観客は十分。ならば、あとは魅せるだけ。

 おれらの国の華々しい幕開けを、今ここに示す時が来たのだ。


 しかしその前に、おれはヴァルに言わなければならないことがある。なあなあで流すには申し訳なく、今後も付き合っていくのだからしっかりしなければならない。さすがにこれ以上こんな空気をこいつとの間に置きたくないんだ。

 おれは主だろ! と自分を叱咤して、狼を見上げて声をかける。


「なあ、ヴァル……」


 だが、それに水を差すように轟音が響き渡った。地震かと思わせるほどの振動でおれが危うく椅子から崩れ落ちそうになったが、ヴァルが即座に支えてくれた。

 しっかりと手袋をしたヴァルの毛皮に触れることはなかったはずなのに、なぜかヴァルは痛ましそうな顔になってしまった。

 ……そんなにおれに触れるのが嫌だったのだろうか。


「何事だ!」


 だが今はそんなことを問うている場合ではない。狼が鋭く声を上げ、状況の理解に努めようとしている。

 ヴァルやブレズが目をやるのは縞模様の守備隊長。この町を囲っている結界を管理しているハンテルなら、何が起こったのかわかるはずだ。


 そのハンテルは耳を伏せ、困ったようにひげをしおれさせていた。それだけで、よくないことがあったのだと容易に想像がつく。


「……ありゃー、やられちまったか。これはちょっとばかし大変そうだな」


 そこでハンテルはにこりと笑う。ああ、そうだよな。おれの泣き顔を知ってるんだから、おれを前に不安そうな顔なんてできないんだな。こいつはいつだって、笑顔でおれを支えてくれる。

 まるで何も心配なんてないぞと態度で語ろうとするこいつを前に、おれが崩れるなんてできるわけもない。白銀の髪をかき分け、ハンテルに問う。


「結界になにかあったのか?」

「どうやら破られちまったようだな。確かに強度は絶対ではなかったが、まさか本当に破られるなんて思わなかった」


 結界の強度は信頼できるもので、それこそ上級モンスター程度なら問題ないとまで聞いていたのに。それが破られるなんて想定の範囲外だ。


「というか、この感じだと穴が開いたというよりかは結界全部が消えた感じだな。ふうむ、一応穴が開いた時のために自己修復機能を付けておいたはずなんだが、それが作動していないとなるとモニュメントに異常が起きてる可能性がある」

「そんなものまでつけてたのかよ」

「そりゃ国の要だからな。おれにできる最高の技術を使ったつもりだぜ。でも、それを一撃で吹っ飛ばすっていうのもすげえな。こりゃ連射されたら勝ち目ねえよ」

「ならなんでそんなに落ち着いてられるんだよ……」

「まあ現実的に考えて、それはないだろうと思ってるからな。それができるんなら今この瞬間にでもやられてる。それに、おそらく結界のぶっ壊れ方から考えて、対魔術兵器とかそんな感じだろう。そういうのって実質的な攻撃力はあまりねえんだ。だからこそ、連中は兵力にものを言わせて突っ込ませてるはずだ、なあそうだろレビィ」


 話を振られた幼子はいつの間にか部屋に来ており、黒蝶をまといながらゆっくりと頷いた。遥か北方から『一足飛び(ショートカット)』で距離を詰めた兎の仕事は早く、戦況を的確に分析する。

 レートビィによると、この町を目がけて軍団が突っ込んでくるとのこと。ただ、兵器に巻き込まれるのを恐れてかどうやら遠くに陣取っていたようで、まだ少しだけ時間があるだろうと予測した。


「大体読み通りだな。だから、そんなに心配しなくていいぜ姫様。この町を覆う程度の結界なら、即席で作り出せる。姫様には何人たりとも近づけさせねえよ」


 ハンテルはおれを安心させるように笑い、すべて任せておけと言う。おれの涙を知っているからこそ、失敗なんて何もないと取り繕うのだ。

 だとしたらおれはそれを受けてきちんと立つべきだ。せっかくこいつが支えてくれているのに、情けない真似なんてできない。


「心配しなくてもいい。たとえあの結界を破った兵器みたいなものをもう一回使われても、姫様だけは絶対守って見せるからさ」

「そんなことされても、おれが喜ばないのは知ってるくせに」

「まあな。なので姫様」


 ハンテルが言葉を切ると、その間隙に研ぎ澄まされた空気が流れ込んでくる。

 誰もかれも真剣な面持ちで身じろぎ一つせず、おれの言葉を待っている。

 予想外のことに対しておれはもっと取り乱すはずなのに、なぜか、その雰囲気に尻を叩かれるように勝手に背筋が伸びた。まるで命令を下すのが自分だと理解しているように、自分こそが支柱だとわかっているように。


 慣れてきたのかもしれない。仕草だけじゃなくて、本当に自分が王様であることに。だからハンテルが代表しておれに話しかけたときも、すんなりと頭が回ってくれる。


「ご命令を。姫様の意をなすために、どうか、我らを動かしください」


 おれは全員を見渡す。竜も虎も狼もウサギも鷲も鬼ですら、臆すものは一人もいない。彼らの決意をひめた各々の目を受け止めて、つややかな口唇を動かそう。


「目標は、おれらの独立を守ること。そして、ブレズの策を成功させること」


 だから、ブレズはここから動かせない。こいつこそ作戦の要なのだから。


「あれができるようになるまで、どのくらいかかる?」

「はっきりとは言えませんが、おそらくは一時間もあれば十分かと」

「結構かかるんだな」

「申し訳ありません。なにせ一度もしたことがありませんので、どのくらい周囲に被害が及ぶのか未知数なのです。この町を慮って慎重に行うとして、そのくらいの時間をいただければと思います」


 確かに、急がせてあたりを焼野原にされては元も子もないからな。それはしょうがないことだろう。本来なら、結界の中でゆっくりするつもりだったんだから。


「なら竜の召喚はできるか?」

「可能ではありますが、私が近くにいないため制御できない可能性があります。遠隔で支持を出すには、私ではレートビィのような索敵技能を有しておりません」

「だったら敵陣に突入させて暴れさせよう。それくらいならできるはずだ」

「了解しました。すぐさま召喚して向かわせます。ただ、なにぶん強力なモンスターです。巻き込まれないようにお気を付けください」


 これで戦力は少し増えたか。だが、やっぱり数が足りない。いくら個人が強くても、うち漏らしは必ず出るんだ。


 数が必要だ。あいつらクラスじゃなくてもいい。時間を稼ぐことだけできるような。


 だから、おれがこの提案をするのは至極当然なこと。


「なら、おれもでよう」

「お待ちください! 差し出口を挟むようですが、姫様は戦闘に不慣れです。我らの旗頭を失っては、ブレズの策が意味を成しません!」


 悲鳴のような声でヴァルが待ったをかける。この狼がおれを第一に考えてくれているのはとてもよく知っている。だけど、それでも譲れないものがあるんだ。

 おれらの間に流れるぎこちない空気など忘れているかのように狼は振舞う。おれにしていた遠慮など吹き飛ぶ驚きが、この提案にはあった。


「もちろんそれは分かっているさヴァル。だけど、数が必要なのだってわかってるだろう?」

「それは、そうですが……しかし、姫様の身に何かあれば、我らはもうおしまいなのです」


 これは全員の意見だ。ヴァルだけでなく、おれの子はみんなそう思っている。おれはそれをしっかりと受け止めて、立ち上がらなくてはいけない。あの時のハンテルが言うように、寄りかからせてもらって、それでも立ち上がる。


「たとえ何万という軍勢が押し寄せようと、我らがいれば敗北はあり得ません。広範囲に渡りせん滅を可能とする我らにすべてお任せくださいませ!」

「でも、おれらがすることはせん滅じゃない。大事なのは町を守ることだ。これから国となるその基盤がやられては、先が立ち行かなくなる。そうだろ?」

「それは、その通りでございますが……」

「だから、大事なのは敵兵力を分散させること。いくらハンテルが結界を張れるって言っても、手をこまねいていては破れる可能性もあるし、またあの兵器を使われては意味がない」


 ハンテルは結界を張ったらモニュメントの修理に行き、メインの結界を起動できるか確認するのが第一だ。それさえ起動できれば戦況はだいぶ楽になる。

 それに、限りなく低い可能性だが、後ろからハウゼンらが攻めてこないとも限らない。二つの軍に挟まれている以上、メインの結界起動が最優先。そのために町を守らないといけない。

 確かにヴァル達なら一人でも勝てるだろう。だが、必ず討ち漏らしは出る。怖いのは、それが町に入ってしまった場合だ。結界がまた破られた場合を考えて、それを食い止める人材が絶対に必要になってくるんだ。


「おれは自分が戦闘に不慣れなのは知っている。お前らにだって勝てないのも承知さ。だから、入口を守るだけにする。それなら比較的危険も少ないだろ」


 町は一応塀で囲まれているし、入口に群がる兵士を散らしておけばもしもの時も何とかできるはずだ。

 こんなもの、即席で思いついたつたない言い訳みたいなものかもしれない。いくら戦略シミュレーションで遊んでいたって、実戦で通用するなんて思いあがっているわけじゃない。


 でも、おれにできることはしたいんだ。ただ守ってもらって祈るだけなんてまっぴらごめんだ。


 ふわりと、虎の毛皮の感触が手に残っているようだ。おれが浮かべた笑みも、そんな柔らかいものになっていただろうか。


「何度も言ってる。おれは死なない、お前らの前からいなくならない。だから、おれを信じてくれ」


 唯一の蘇生魔法持ちが前線に出るなんて馬鹿げていることだろう。だけど、町を、みんなを守るにはこうするしかない。固く結んだ唇が緊張を示しているけれど、おれはそれを叱咤する。かかとを鳴らして立ち上がり、ヴァルと向かい合う。


 まだ何か言いつのろうとしたヴァルだったが、最後の一押しをしたのはまさかのゴウランだった。


「姫さんがここまで言ってんだ、その意思を尊重してもいいだろうが。おれが一緒に行く、それならまだ姫さんの回復も活かせるだろう」

「そうだな……ゴウラン、ありがとう」

「別に礼を言われることじゃねえ。おれ一人だけなら何も出来ねえからここにいるしかねえけど、姫さんと一緒なら大軍を何とかできる算段がついたってだけだ」


 確かにそれならヴァル達の力を借りなくても、戦える。おれが足を引っ張ることもないはずだ。

 ヴァルはそれでも悲痛な顔を浮かべていたけれど、それをぐっと飲みこんで頭を垂れた。


「承知いたしました。ですが、どうか、どうかお願いでございます。ご無事でお戻りくださいませ。我らにまた、その笑顔を与えてくださいませ」

「もちろん、約束する」


 積極的に命の奪い合いをするなんて初めてかもしれない。だけど、それでも止まってはいられない。

 ここから始まる戦争に、号令を。すべての責任はおれにある。


 さあ、始めようか。


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