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美女?と野獣の異世界建国戦記  作者: とりあえず
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(番外編)ホリーク君の解説講座

うまく説明できていないかもしれませんが、これまでのネタ晴らし補強回です。

 まったく、なんでまたおれが。

 そう溜息を吐いて、全員へと向き直る。前に魔法について講義をしたような形式で、今回のことについて解説しろとヴァルからのご命令だ。お前がしろよ、と言いたいところだが、あいつが壊滅的に先生に向いていないのは周知の事実。おれが折れるしかないんだろう。


 というわけで、今回の出来事についてのおさらいだ。ビーグロウの奴に一杯食わされた経緯について、何が起きたのかまとめたほうがいいとヴァルが言うから。


挿絵(By みてみん)


 地図があったほうがわかりやすいだろ。今はおれらもビストマルトだが、昔の地図なんでしょうがないと思ってくれ。

 ヴァルとハンテルに関しては説明する必要を感じないが、補足要因のつもりなのだろうか。あの虎は絶対面白半分に決まっているだろうがな。


 軽く咳払いをして、さっそく本題だ。こういうのはとっとと終わらせるに限る。


 まあ、最初に滅論だけ述べると。全部あのくそホモ獅子のせいだ。


 おれらをひっかきまわした諸悪の根源。おれら全員の裏をかいたくそったれな明敏。


 これは推測交じりなんだが、ビストマルトには過激派と穏健派があり、獣人を差別するノレイムリアへの対応が分かれていた。そこまではいいよな、ハウゼンも両派閥のことは知ってたし、ビーグロウを穏健派筆頭と言ってたんだ。


 んで、今回の差別騒動の裏にいたのが穏健派か過激派かは未定、っつうかどうでもいいな。もう調査する必要性もないんだ。

 差別騒動を前提に考えて、穏健派は無血でおれらがいるネースト周辺の土地を狙い、過激派は戦争の口実として攻め込む隙を狙っていた。大方こんなところだろう。


 ビーグロウの動きしか注目されていないが、過激派の動きとしても間違いはないはずだ。そうじゃないとさすがにハウゼンらも騙されてはくれないだろう。


 そういうことさ姫様。リュシアとハウゼンがすっかり騙されたのは、なにも大国二つが共闘してたせいだけじゃない。

 そもそもビストマルトが一枚岩じゃなかったからなんだ。というかだな、あのくそ獅子はそこに目をつけて余計場をかき乱すように動きやがったんだな。リュシアにさも仲間面して近づいて、戦争が起きる起きると危機感をおあり、その実土地をかすめ取るつもりだったんだから。


 話をまとめる限り、ハウゼンの情報源であるガングリラはヨルドシュテインの属国となることに賛成派だ。まあでも、あっちに関して言うならおれらはそいつにあってねえし、ただ騙されたハウゼンが情報を流してきたってだけであんまり考察の余地はねえ。だから、今回は横に置いておくぞ。


 んで、ビストマルトが一枚岩じゃないせいで、ここまでややこしくなったってのは言ったよな。


 ちょっと考えてみてほしいんだが、たとえ過激派が戦争を吹っかけても、穏健派が土地をかすめ取っても、だな。


 ――――ヨルドシュテインの行動は変わらないんだ。


 ノレイムリアを属国として、ビストマルトへの先兵にする。どっちの派閥が行動しても、一緒なんだ。だから、めんどくさくなった要因の一つに、ビストマルト両派閥のせめぎあいがあったってわかる。


 で、さらにガングリラの動きもそこまで重要じゃないのもいいよな。ヨルドシュテイン側は、ビストマルトの行動をきっかけに動くだけの後攻さ。ただハウゼンらを煙に巻いておけば、勝手にビストマルトが混乱させてくれるし、ノレイムリアが勝手に差別を助長させてくれる。あの国は状況を整えさえすれば待っているだけでいいんだ。


 今回のきっかけは穏健派だったが、過激派が戦争を吹っかけてくれればもっとスムーズに行っただろう。なぜなら、目の前にはすぐ脅威があり、連合にも見放された。すなわち、もうヨルドシュテインに頼るしかなかったからだ。

 まあ、そんなわけで差別騒動の発端は過激派なんじゃないかとおれは思うんだがな。そのほうがヨルドシュテインにとっても都合がいいし、巻き込みやすい。


 だが、そこまで状況を整えた上で、ビーグロウが死んだ。あいつが死ぬということをわかっていたのは、穏健派の連中だ。だから、過激派よりも早く動くことができて、ネースト周辺をきれいに奪い取った。

 過激派の連中が戦争をちらつかせているんだ、これはスムーズに行くだろう。戦争の火種を抱え込んだノレイムリアにとっては選ぶしかない選択肢だからな。それで戦争を回避できれば、あとは売国奴さえ何とかすれば立て直し出来る可能性があるんだ。

 もっとも、それもあの獅子の思惑通りだろうがな。


 ここまでがおれの考えだが、もしこの考えが正解だとするとあの獅子は相当食わせ物だぞ。過激派の考えた策を穏健派の利益にすり替えたんだから。これによってビーグロウの派閥が勢いを強めるのは間違いない。どこまで考えてやがったのか。最悪、あの獅子が偽物だって言われてもおれは驚かねえよ。


「それはおれも思ってた。ビーグロウ家の当主、だっけ。名門一家の当主を失ってまで派閥の利益を得たって、家にとって恩恵が薄いと思うんだ。なら、自分の死という演出だけして、あとは政界に潜っておけばいい。そのほうが派閥の恩恵を十分に使えるはずだ」


 ふむ、さすがだなハンテル。その可能性は十分にある。姫様があった獅子は偽物で、本物はビストマルトで悠々と利益をむさぼっているのかもしれない。

 ま、あくまで可能性だが。


 その通り、これは名門であればあるほど難しいことだ。特にビーグロウの家はビストマルトではかなり名の通った名家である。その家長ともなれば、相当な地位にいる者だ。自分の死をやすやすと演出できるほど、軽いものを背負っているわけではない。


 だが逆に、これはビーグロウ家ならできるとも言える。


 ビーグロウ家とは代々、優秀な孤児に与えられる冠だ。あの家はな、ハンテル。血筋という考え方を自ら遠ざけた家なんだよ。


「ははあん、なるほどね。なら何の不思議もねえや。つまり自分の跡取りをもう用意してるってことか。あの獅子かなり若そうだから跡取りとかどうするんだろうと思ってたが、年なんて関係ないし、さらに言えば種族すら関係ないのか」


 そういうことだ。偽物の可能性もあるし、本物の可能性もある。どちらにしても、今は表舞台から退場している。出てくるのはまだ先のことだろう。


 ……すまない、脱線してしまった。今はあいつが生きているかどうかより、その痕跡を話すべきだった。


 穏健派が、というかビーグロウが作戦勝ちした今、ノレイムリアはじわじわと削られている。

 連合に見放されたと気づき、ビストマルトはネーストを奪いまだ圧をかけている、ノレイムリアの売国奴はまだヨルドシュテインとつながろうとしている。


 このままいけば、結果は一緒なのさ。ただ、ビーグロウはそれを無血で成し遂げた。自分の命と引き換えにして、だ。


 いや、正直うまいと思うぞ。

 過激派が戦争を吹っかけて奪っていれば、確かに土地は多く奪えただろう。

 だけど、この後でヨルドシュテインがノレイムリアを伴ってすぐに攻めてこられたら不利だ。戦争後の疲弊ってのは結構馬鹿にならねえからな。

 ビーグロウはあえてじわじわ攻め落とすことにして、自国の態勢を整える時間を稼いだんだ。得た土地こそ少ないだろうが、資源を守りつつヨルドシュテインを属国獲得へ動かざるを得ない状況を作り出したんだから。これにより、ビストマルトだけが、悠々と戦争に備えることができるんだ。


 それこそが、ビーグロウの目論んでいたことだな。差別騒動をうまく使い、来る戦争に一歩リードすること。今思うと本当にあの獅子はむかつくな。まあ、下準備にかかる時間を思えば苦労してそうだが。


 こんがらがった一端を説明したが、ここまではいいか?

 ……レートビィ、わからなかったら寝ててもいいぞ。後でもうちょっと詳しく教えてやる。――ハンテルが。


 んで、次なんだが、なんであの二国がそこまでするのか、だな。これは歴史的問題だからおれらが全く知らなくてもしょうがない。だから、ここからはまじめに聞いておけよハンテル。


 これまた結論から言うと、ヨルドシュテインとビストマルトは絶対に戦争をする。というか、そのためだけに動いているし、だから間にあるノレイムリアが邪魔だったんだ。


 これはヨルドシュテインが信仰する聖教に絡んでる。


 姫様があの国と相いれないのは、あいつらが姫様の素晴らしい生命改造の魔法を禁忌として扱っているせいだ。

 それで実を言うと、あいつらが禁忌としていたのは『人間以外』の生命の創造。つまり、昔は聖教にとって人外も異端だったんだ。その名残で姫様の魔法が禁忌扱いされているってわけ。


 でも、これは大昔の話だ。今では人間人外問わず、聖教の名のもとに平等をうたっている。……実際はそんなことねえらしいけどな。名残というのは根強い呪いみてえなもんだから。だから姫様は絶対に行くなよ。あんたが見るには少々刺激が強すぎる。


 大昔、聖教のもとで迫害された獣人が逃げて作った国、それがビストマルトだ。だから、ヨルドシュテインとは国としてつながってないし、そもそも最初はもっと遠かったらしい。

 そこからビストマルトが勢力を伸ばして大国になってようやく、ヨルドシュテインとあと一国というところまで近づいた。ノレイムリアをはさんで、な。


 ビストマルトからすれば悲願だろう。先祖代々受け継がれた怨恨を、ようやく晴らせるというのだから。ビーグロウが命を賭した理由も、まあ何となく察せるな。


 つまりだ、これまでの話をまとめるぞ。


 ビストマルトはヨルドシュテインと戦争をするために、邪魔なノレイムリアをどかしたかったんだ。でも、普通に攻めたら連合すべてを敵に回すことになる。だから、こんな回りくどい手を使って、ヨルドシュテインへの道を整えたってわけ。


 ヨルドシュテインがなんでそんなことに協力したのかは謎だが、勝てば大陸の覇権をとれるんだ、別に不思議じゃない。それに、ヨルドシュテインには獣人根絶を掲げる派閥もあるしな。平等をうたっても、名残はとれねえんだ。


 とまあこんなところかな。おれらが今いるネーストがビストマルト領になるっていうんで、ここまでの流れを解説させてもらった。ここは、もうすぐビストマルトとヨルドシュテインとの接点だ。


 ……そういうことだなブレズ。この町はかなり改造される。兵が来て、砦が作られ、壁が作られる。来るべき戦争のために。だから、ビストマルトが誇る15将軍のうち、誰かが常駐するだろう。そいつらに関しての説明はまた今度な。さすがに脱線しすぎだ。


 というわけで、これでお開きだ。質問その他はヴァルかハンテルにしてくれ。おれは疲れたぞ。


 姫様、そんな不安そうな顔をしなくてもいい。おれらは姫様の行くところならどこにだって行くと言ってるだろう? 15将軍だろうと誰であろうと、おれらに勝てる奴は存在しないんだ。安心してくれ。


 ――――大丈夫だ、何が起きても、おれがいる。


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