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美女?と野獣の異世界建国戦記  作者: とりあえず
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暗躍はばれるもの

 やられた!


 こいつは元からそのつもりでおれらをここに呼んだんだ。

 戦争という問題をちらつかせ、おれらからイグサを手に入れるために。底意地悪いことこの上ない。ああまったく、やっぱりおれにはニートがお似合いじゃねえか。


 ここは断れない状況だ。もし断れば、国を裏切った悪逆としておれらの居場所はなくなるだろう。というか、ギルドマスターを敵に回すことになる。そんな汚名があっては、いくら強くても居場所はない。


 おれはすぐに『思考伝達(チャット)』を飛ばし、イグサをごまかせないか確認する。


『ヴァル! 写本は終わったか?!』

『はい、そちらはつつがなく。しかし、解読と、魔法の構築にはいささか時間がかかります。なにぶん古代の魔法ゆえに、即興とはいかない様子。ホリークが全力で読解中ですが、一日はかかるかと思われます』


 焦るおれと対比するかのように冷静なヴァルがいうのなら、そうなんだろう。今この場をごまかすことはできない。それが結論か。


 そんな無体な結末にあらがおうと焦りが脳をせかす状況で、氷のような声が頭で反響する。冷静すぎる狼は、事ここにいたっても冷静すぎる判断をする。


『渡してしまってはいかがでしょうか。姫様の優しさは十分承知しております。しかし、我らの目的を第一に考えるならば、ここはリュシアの策に乗るのがよろしいかと』

『知名度を上げることで、おれらの仲間を探しやすくする……』

『左様でございます。姫様が国を案じておられることは承知で、せん越ながら進言させていただきます。ここはリュシアにおもねり我らの手助けをさせるのが得策ではないでしょうか。知名度さえ上げてしまえば、この国にとどまる必要性は薄れます。ある程度資金をためれば、自由に移動できるはずです。国同士のいさかいに、これ以上姫様が巻き込まれることこそ私にとっては不本意でございます』


 ……反論の声はない。それに、言いたいことは痛いほど理解できる。


 おれらがそこまでこの国に肩入れする理由なんてないんだ。利害の一致があるリュシアのほうに組することこそ最善だというのもわかる。


 リュシアの視線を受けて、おれはただ身を固くするだけ。思考が渦を巻き、おれをからめとる。


 おれが最も優先させることは何だ?

 それはおれの作った子との再会であり、こいつらの保護だ。おれの命令一つで死地にすら身を投げうってしまうこいつらを守らなければならない。


 このままリュシアの策に乗れば、おれらはこの国にとって都合のいい存在へと祭り上げられるだろう。ヴァルは、その過程で知名度だけ持って抜け出そうと言う。それが一番賢い考えだ。


 最善。それはもっとも良いことであり、客観的に見たなら選ぶべき道のはずだ。


 では……では、なぜ。おれはこんなにも躊躇しているのだろうか。


 イグサを見捨てられない。ステラの嬉しそうな笑みを振り払えない。


 なぜ。なぜ。


『姫様は大変お優しい方でございます』


 凛とした声が、する。ブレズがおれを優しく包んでくれる。


『ヴァルの言うことにも一理あるのは確か。しかし、おれらは姫様の意見こそ順守する』


 ホリークがそれに続き、おれの意見を促す。どんなものでもいいのだと、普段とは違う優しい声で。


『それがどんなものであれ、おれらは姫様を裏切らない』


 ハンテルが別人かと思うような硬い音で、おれを肯定する。


 この胸に湧き上がる感情を整理できず、言語化できないくせに服従を要求するのか、おれは。


 それはとても滑稽だが、それこそがおれであるように思う。どれだけ取り繕っても、所詮はただの引きこもりなんだ。一朝一夕でこいつらの主だと胸を張れる自分になんてなれやしない。


 リュシアたちの手前、泣き出しそうな自分で精いっぱい見栄を張る。なんて情けないんだと、笑うやつは周りにいない。だからこそ、おれだけは自分を笑わなければならない。

 この感情を糧にするために。


『本当に、情けない奴ですまない……』

『いえ、私の提案で姫様のご気分を害されたのなら、腹を裂くべきは私でございます』

『さすがに姫様はそんなこと言わないだろうがな。んで、ちょっといいか姫様』


 おれが顔を上げるのと同時に、ホリークが何かを告げる。

 無言で続きを促すと、鷲は滔々と語る。


『イグサを渡すことは得策とは言えないと思うぞ。なぜなら――』


 そこで、今まで周囲を警戒していた幼子の声が鋭く上がった。


『待って! 今、姫様の部屋に誰かが近づいてきてる。武装してる……数は、10人くらい。とにかく、すぐに僕も合流するね』

『見た目は分かるか?』

『獣人種だね。まっすぐ姫様のところに近づいてきてる。ブレズ、姫様を任せたよ!』

『了解した。ご安心を姫様。私の後ろにお隠れください』


 臨戦態勢になったブレズに獅子と幼女は目を丸くしたが、すぐに得心いったようにシニカルに笑んだ。さすが高官となると、呑み込みが早い。


「お二方も私の後ろへ。痴れ者を退治いたします」

「まったくのんびり食事もできぬとは。私は恨まれるようなことをしておらぬし、このホモ猫を差し出せば丸く収まらぬかのう」

「友人に対してひどいことを言うやつだ。もっとも、私の命が目的なのは確かだろうが」


 二人がブレズの後ろに回り込んだのと同時に響く無法な音。ノックというには荒々しすぎるそれは、扉を勢いよく突き破る。


 身元がばれぬように黒を基調とした装束をまとう無頼漢が十人余り。しかし、明らかに人とは違う骨格が、彼らの身元を鮮明に見せつけていた。


「ほれ、お仲間が迎えに来たようじゃぞ。とっとと行ってこい」

「残念ながら私の知り合いではないようだね。私の知り合いにこんな殺気立った奴はいない」

「……どこから情報が漏れた?」

「さあな。これでも慎重に行動したつもりだったのだけど」

「全く、使えない。責任を取ってやられて来い」


 黒装束は無言を貫いているが、リュシアは彼らの目的がビーグロウであるとあたりを付けているようだ。

 それを裏付けるように、獅子はにやりと笑う。


「おや、いいのかい? ここで私が殺されたら、それこそ母国では戦争へと傾くだろうな。なにせ友好的な外交官たるこの私が貴国で暗殺されたのだ。もはや戦火は免れないぞ」

「ビストマルトは裏切り者も処分できて一石二鳥じゃしなあ。お前は元から穏健派として過激派から恨まれておるし……じゃから慎重にせえとあれだけ言ったのに」


 リュシアがため息を漏らしても、ビーグロウは飄々とした態度を崩さない。

 命の危機だというのに獅子は表情一つ変えず、ブレズの背中に熱い視線を送るだけ。交渉事が主だと言うだけあって、表情筋を完全に支配下に置いているのだろうか。その本心はうかがい知れないが、ブレズの後ろに隠れたということはさすがに命は惜しいはずだ。


 ブレズが炎の中から剣を取り出して構えると、黒い集団の殺意が部屋に充満する。この世界に来てから、すでに肌になじんでしまった命のやり取り。皮膚が粟立つような危機感に刺されながらも、おれはどこかそれを受け入れてしまっていた。

 おれはブレズの無事を祈り、そっとバフをかけてやる。ついでに全員にもバフをかけておけば、致命傷は避けられるだろう。


「ありがとうございます、姫様。さて、招かるざる客人に告ぐ。今すぐこの場を離れれば深追いはしない。命を粗末に扱うことを良しとせぬなら、自らの行いを悔いて去るがいい」


 執事服には似つかわしくない大剣を構えるブレズの相貌は鋭い。一目で実力者とわかる竜騎士は、覇気を叩きつけることで彼我の距離を保とうとしている。


 だが、ここまで乗り込んできたのだ。おいそれと引くような奴らではないだろう。

 個性を消した集団のうちの一人が音もなく前に出て、両手に構えたシンプルな短刀をブレズに突きつける。そのまま流れるような体さばきで突撃し、踊るように短剣を振りかぶる。


 おれの目から見ても、それは鮮やかと言える。純粋に相手を屠るためだけの一撃は、余計なものをそぎ落とした最低限の動作で相手の急所を狙い穿つ。躊躇も慈悲もない軌道は正確無比に命を刈り取っていくのだろう。


 しかし、相手が悪かった。


 いくら暗殺に特化した剣といえど、ブレズに見切れないわけがない。騎士は正確すぎる剣先をわずかに身をよじるだけでかわし、大剣の柄頭でアサシンの横腹をぶん殴った。

 おそらく骨の何本かは折れただろうが、命まで奪うような一撃ではない。すぐさま治療を施せば回復するだろう。アサシンは入り口付近まで飛ばされ、うめき声をあげて昏倒したようだ。


 ブレズは曇りなく光らせた眼でにらみながら、油断なく剣を握りなおして問う。


「この程度で私を突破できると思いあがっていたならば、それは片腹痛いと言っておこうか。さて、どうする。今ならまだ穏便に済ませられるのだが。この実力差を見て、よもや何とかなると楽観視するわけではなかろうな」


 返事はない。

 今度は二人、いや、三人がブレズに向かって躍り出た。三方からの同時攻撃で隙を作ろうという作戦か。短剣を持ったアサシンが三人、それはそれは見事なコンビネーションで距離を詰めていく。


 しかし、何度も言うようだが、相手が悪いんだ。


 ブレズが剣を振るうとそこから炎が吹き上がる。一人目の剣を跳ね返し、返す刃で二人目の短刀を弾き飛ばし、三人目は噴き出す炎に阻まれて歩を止めた隙に爆風で吹き飛ばされる。

 実に鮮やかな剣捌き。寸分の狂いもうかがい知ることができないその太刀筋は、眼前の十人余りで突破するなど不可能だ。それに、ブレズにままだスキルがある。向こうのスキルはおそらく暗殺特化だろうけど、ブレズの壁を超えるものはなさそうだし、毒などはおれがすぐに回復できるので問題ない。


 さすがにこの展開を前にしてはいかなる暗殺集団と言えど動揺を隠すことはできなかったようで、張り詰めていた殺気がわずかにたわむのを肌で感じ取った。


 その間隙はあまりに短く、隙と言うにはあまりに微々たるものであった。しかし、それを縫うように、一筋の矢が黒装束の一人に突き刺さる。


「……ぐぅ!」


 正確無比というのなら、この矢の持ち主にこそふさわしい称号であろう。そう思わせるほどに音のない射的は、まるでそこに射られることが決まっていたかのような正確さで一人の命を奪い取った。

 おれらがそれに気づいたのはそいつの倒れる音でようやく。そして、その間にもう一閃、緩やかに二人目が倒れこむ。


『遅くなってごめんね。店に入り込んだ他の賊に手間取っちゃって。とにかく、全員動けなくするから』


 頭で響く幼子の声。こちらに来てくれたのはわかるけど、気配を全く感じ取れない。

 明るいレストランだというのに、まるで暗がりに目を向けているような不安感が満ちている。射るたびに命をかき消す風が吹き、夜半に満ちる死が手をこまねいている錯覚が背筋を駆け上がる。


 ヴァルほどではないが、レートビィも隠密を得意としている。索敵能力と組み合わせれば、相手に悟られないまま射ることなどたやすいに違いない。もっとも、切り札は別にあるのだけど、この世界の基準で考えるとこれだけでも十分に強い。


 暗殺者たちはその数を半分ほどに減らし、もはや脅威には感じられない。

 そもそもブレズ一人を突破できない連中に、レートビィまで加わったのでは万に一つの勝ち目すらもないだろう。前門の竜後門の兎ではないが、こうなってしまっては逃げることさえ難しい。


「ほう、もしものために護衛をもう一人侍らせておったか。意外にしたたかよのう」

「おれらを呼んだのもそのためのくせに……」

「さあてなんのことやら。私はただ、お前らの後ろ盾になるために呼んだだけじゃぞ。しかし、ここまで想定通りじゃと思わず笑いだしてしまいそうじゃ」


 ロリババアは底意地の悪い笑みを浮かべたまま、事の成り行きを楽しそうに静観している。獅子はしょうがないとばかりにため息をついて、そんなロリババアから目線を外す。なんだかこの二人の関係性がだんだんわかってきたな。意外とこの獅子は苦労してそうだ。


「私がへまをする前提で策を練られるなど屈辱だな。はあ、もういい。どうせ過激派の差し向けた私兵なんだろ君たち。ここで息の根を止めてしまおうか」

「ほう、意外だな。お前にしては同族に厳しいではないか」

「ブレズと一緒にいるところを見られたのだから仕方あるまい。彼が名声を得る背後に、私の影を感じてもらっては困るのだよ」


 差別軽減運動をビストマルトの高官が支持しているとばれるのは何かと不都合だろうな。おれらに火の粉がかからないようにするためにも、後輩の憂いは断つのが最良か。

 ……なんだか命のやり取りに慣れてきたんだなあ。そんな自分に少し戸惑ってしまう。

 そこまでの話をまとめたところで、冷静担当の狼が会話に入ってきた。


『逃がして泳がせようかと考えたのですが、そうすると姫様にも危害が及ぶことになります。致し方ありません、ここは捕まえて尋問することにいたしましょう』


 ヴァルの尋問と聞くとえげつないものしか想像できないな……かわいそうに……。


『じゃあ弓矢にしびれ薬とか塗っちゃうね。状態異常耐性がよくわからないけど致死量にならないように気をつけなくちゃ』

『この剣に峰があれば峰打ちしたのですが……。どうやっても一刀両断にしてしまいそうですので、私は守護に専念いたします』


 これで作戦も決まり、闇夜でレートビィが弓矢を構えなおす。あとはあいつらを捕まえて、情報を吐かせればいい。それで黒幕を引き釣り出せればだいぶ楽になる。


 だが、それを行うよりも、アサシンのほうが早かった。


 彼らは一斉に、何のためらいもなく自らに短剣を突き立てたのだ。


「……え?」

「姫様、見てはなりませぬ!」


 噴き出す鮮血は一瞬で、すぐさまブレズがおれを抱きしめて視界を埋めた。

 でも、その一瞬で理解できてしまった。彼らは自決したのだと。


「ブレズ……」


 自分の喉を震わす声のなんと弱弱しいことか。さっきあれだけ慣れたとか言ってたじゃないか。いや、目の前で十人余りの人が死んで狼狽程度で済んでいること自体、慣れてきている証拠なんだ。自殺というショッキングな死に方を見せられて、ようやく動揺するくらいには、おれは慣れてしまったのだろう。


 こういう時に超絶美少女でよかったと痛感する。ブレズに抱き着いても絵になるのだから。血の芳香がむせ返るほど漂う部屋で、少しだけ竜の胸にお邪魔させてほしい。

 すぐ、元気になるから。


『姫様、生存者はなしだね。倒れてる人もいつの間にか死んでる。逃げられないとわかると死を選ぶなんて、すごいね。あと、外に敵の気配もないよ』


 おれを慰めるように蝶が一匹、肩に止まってくれる。外ではようやくこの惨事に気づいた店員の喚き声が聞こえてきており、しきりに兵を求めているのがわかる。


 さすがにこれ以上は迷惑をかけられないと、おれはブレズから体を離す。離れたとたん、おれとブレズの間に血なまぐさい空気が入り込む感覚に悪寒が走るものの、ヒールに力を入れて何とか踏ん張った。


「悪い、助かった」

「いえ、姫様のお役に立つことができて何よりです」


 騎士はすでにいつも通りの柔らかい笑顔を取り戻しており、血なまぐさい部屋で唯一の癒しとなってくれている。


 おそらく普段ならここでビーグロウがブレズを口説きにかかるのだろう。強いだとかかっこいいだとか。だけど、おれに視線をちらりと移して獅子は口を閉ざしている。

 心配してくれている? 案外いい奴なのかもしれないな。

 まあ、ブレズはやらないが。


『あれ、もう来たの。さすがに早すぎるんじゃないかな』

『どうした、レートビィ』

『あのね姫様。どうやら兵隊がこっちに向かってるよ。うん? この人って……』


 店からの通報を受けてから来たにしては、確かに早すぎる。どこか他から情報をつかんだのか?


「いやはや、さすがの私も肝が冷えたよ。狙われることが多い立場なのは分かっていたのだから、護衛ぐらいつけたほうがよかったかな」

「護衛なんぞつけたらさらに目立つじゃろうが。お前はただでさえ目立つホモなんじゃから」

「ホモは関係ないだろう……」


 そうこうしているうちに、大勢の足音が響いてきた。優雅とはかけ離れた足音に装備品の金属がガチャガチャなる音も混ざっており、武装した集団であることは疑う余地もない。

 まあ、レートビィが警告してこないってことは、おそらく大丈夫だろう。


 やがて血の臭いの発生源であるこの部屋を見つけたらしく、足音が大きくなってくる。無遠慮で存在を隠す気のない音はそのまま後ろ暗いことがないと言っているようなもので、さらに権力者がこちらに二人もいるのだから悪いことにはならないと思う。


 あとは権力者たちに何とかしてもらおう。実戦はやったんだ、後始末ぐらい頼んでも罰は当たるまい。おれは何もしていないのだが。


 などと暢気に構えて音の主の到来を待ちわびる。できればこのままこっそり消えたいのだけど、さすがにそうはいかないよなあ。


「姫様、帰ったらお茶をお入れしましょう。温かいものを飲んで気を休まれたほうがよろしいかと思います」


 テーブルの上で無視されたままのポットの温度を確かめながら、ブレズが言う。すでに冷えた茶は会食の終わりを告げているかのようで、今のおれはそれを飲む気にはならなかった。

 おれがブレズに感謝の言葉を投げかけようと口を開いたとき、それよりも早く、聞いたことのある声が飛び込んできた。


「あれー、これはこれは。良からぬたくらみごとの真っ最中って感じかな?」


 いかにも朴訥そうな糸目の通りにふわふわしたしゃべり方。だけど、おれが知っている彼はローブ姿を基本とした魔法職のはず。きらびやかな銀色の鎧姿にその口調が全く似合っていない。


「ふふふ、なんのことやら。私は友人と食事を楽しんでおっただけじゃ」


 対するリュシアの眼光に剣呑の色が混ざりこみ、小さな体から嘲笑するような声が出てくる。


 そりゃそうだ。仲がいいはずがない。

 なにせ、この二人の思想は真っ向からぶつかっているのだから。


「ふうむ、ブレズ君たちがいるのなら僕らは必要なかったかな」

「よく言うわ。我らの動向を探っておったくせに。そうじゃろう、王国騎士団近衛兵副隊長、ハウゼン=ミューレット」


 まじですかい!

 おれは自分が美少女だということも忘れてあんぐりと口を開いてしまった。


 目の前にいるこのいかにも頼りなさそうでへらへらしてる糸目の男が副隊長。ぜんっぜん想像してなかったわ。


「んーなにやら失礼なことを考えている様子。まあしょうがないね。ではではみなさん」


 いきなりどっと兵士たちが部屋に流れ込む。狭い部屋は暑苦しい鎧兵で埋め尽くされ、身動きできない状況だ。


 ハウゼンはにへらと、おれの知っているハウゼンと変わらない頼りなさそうな笑みを浮かべて宣告を下す。


「それじゃあ、拘束させてもらうよ」


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