君と彼女の物語
彼女は人を殺すために生まれてきた。
それは本能であり本質であり、それ以外の思考がなかった。
彼女はロボットだった。
当時人工知能界最高の権威者であったヤナギ教授と、
米国最高の兵器開発研究チームARMS.の技術によって生まれた。
彼女は世界初の人型ロボット兵器として第一次アジア大戦を駆け巡った。
無人ロボット兵器が実戦投入されてから僅か半年の事であった。
彼女は殺すために生きた。
☆ ☆ ☆
彼は生きるために殺してきた。
それが目的であり手段であり、それ以外の感情は殺していた。
彼は人間である。
祖国が戦場となり、家族や友人をロボット兵器に殺された。
彼は自分が生き延びるためにロボットと戦い、それを壊してきた。
それしか彼には道がなかった。
☆ ☆ ☆
道があいつにはあった。
あいつは与えられた道を歩きだした。
あいつは一国の王子であった。
ロボットの所属しない、世界で唯一の軍にあいつがいた。
あいつは気づいていたんだろうか。予期していたんだろうか。
いつか、人とロボットが争うことになるこの世界のことを。
☆ ☆ ☆
君は世界で戦争があっても無関心だった。
隣国の核戦争も無人兵器も他人事にしか思っていなかった。
だが君は正義感だけは人一倍に持っていた。
身の回りの人が何よりも大切だった。
そして、この戦いへ君も巻き込まれるだろう。
君が彼女を守るんだ。