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夕日の帰り道

短くてごめんなさい。

 ホク所は陽がまだ沈まない内に閉館となる。

 長時間の労働は体に良くないと親父からの忠告で、俺が定めた定時である。

 ただでさえホク所は毎日開けてなくてはならない。それを俺を含め二十人程度でまわすのだ。

 休日も与えないといけないので、それなりに人手不足である。


 夕日を背に、セレネと並んで家へと帰る。

 途中、手を繫げとせがまれ適当に断っていた。しかし、しびれを切らしたのか無理やり手を掴まれてしまった。


 まあこれぐらいいいだろうと諦めている。


「そういえばさ、私ずっと不思議だったんだけど。魔族と魔物って別物なの? 私普通に今日もゴブリンいっぱい殺しちゃったけどさ……」

「なんでか人間達は魔族と魔物を一括りにしたがるな。いいか、魔族と魔物の関係を人間世界で例えると、人間と野生動物みたいなものだ。お前たちも生き物を殺し、家畜として育て、ペットとして愛でるだろ? 同じように魔物も殺すし、家畜としても扱う。流石にペットとしては飼わないが、人間と同じようにドラゴンを馬代わりに使ったり、兵力として調教したりもするさ」


 補足をするならば、魔物は肉体を持っているが、解剖すれば魔力の塊に過ぎない。

 魔物は生きてはいるが生き物という分類するのは難しい。

 霞のような存在で、魔石を心臓として肉体は魔力を凝固し、実体化させている……いう説が有力らしい。


 残念ながら魔族の俺達でも、魔物のことを全て知っているわけではないのだ。

 むしろ知らないことの方が多い。魔物はどこから現れ、どのように身を隠しているのか……など。


「ふーん。でもちょっと安心した。これで思う存分戦える」

「なんだ? 気にしていたのか?」

「ちょっとだけね。同じ魔のつく存在だから……。魔族たちは魔物を殺すことに抵抗があるんじゃないかって」

「心配ご無用だ。俺も昔、ゴーレム狩りをしていたほどだ。言っただろ? 野生生物と同じ扱いなんだから」


 むしろ気味が悪いくらいだ。

 生理的に受け付けられないフォルムをしてる魔物が居るけど、本当に見ているだけで吐きそうだ。

 何故だかあれが「かーわーいーいー」とか言う女の魔族と人間がいるらしいが、理解不能である。

 キモカワイイ? キモイしか感想がない。


「俺からしたら魔物なんかよりよっぽど動物の方がよっぽど怖い。なんで犬は俺を見るとキャンキャン吠えるんだ? 五月蠅し、噛みついてくるし……一昨日だって村長の犬が――」

「ヘリトって、もしかすると犬が苦手?」


 そこで、はっとなった。

 何故俺は弱点となりそうなことをペラペラとセレネに話しているのだろうか。

 足が止まり、頬を引きつらせながらセレネへ顔を向ける。

 あ、すごくいい笑顔……。


「そっかー。ヘリトは犬が苦手なのかー」

「犬が苦手? おいおい、冗談はやめてくれ。元『紅蓮の番人』と呼ばれ、今じゃ魔王なんだぞ? あんなワンコロに恐れおののくなんて――」

「ほら、ワンちゃん」

「った!? びっくりしたっぁ!!」


 どこからともなく子犬を片腕に抱え、俺の目の前に持ってきた。

 心臓が飛び出るかと思ったが、なんとか冷静さを保つことが出来た……はず。


「って子犬じゃないか」

「そうだよー。最近村に住み着いたらしくてさ、村長がお世話しているんだって」

「犬好きだな……あの人も」


 セレネは俺と手を繫いだまま子犬を抱いている。

 つまりは、俺との距離が近い(犬との)。

 手はがっちりと握られ、逃げることはできない。


「なんで逃げ腰なの?」

「逃げてない。ちょっと体を伸ばしているだけだ」

「ふーん。へー」


 セレネがぴったりと俺に抱きちて来た。

 もちろん手は繫いだままだし、片腕には犬を抱いている。

 びくっと体を震わせた俺は、冷や汗がとまらない。


「こんなに可愛いでしょ? 私とワンちゃん」

「そ、そうだなー。か、かわいいなー」

「こんなに愛らしい目でヘリトを見つめてるんだよ? 可愛いねー」

「お、おう……。あ、いやね、セレネ。ちょーっとだけ手を放してくれないか?」

「じゃあ、今日はご褒美に追加してほしいことがあるんだけどなあ」

「な、なんだよ」

「一緒に寝ようよ。同じベッドでさ。大丈夫、無理やりなんてしないから」

「最後の一言で不安になった」


 セレネと同居はしているが、部屋は別々に分けている。

 理由は俺が気恥ずかし之と、セレネがすぐに襲ってくるからだ。

 結局、夜な夜な俺の部屋に忍び込んでベッドに潜り込んでいるようだが……。

 何もしないというなら……信じてやろう。この状況を打破できるのなら仕方ない選択だ。


「ああ、分かったよ。一緒に寝てやるが俺はすぐ寝るぞ? 寝ている間に俺の体で変な事は絶対するな」

「はいはい。でも抱き着くぐらいはいいでしょ?」

「それぐらいなら……」

「やった」


 セレネは子犬を放す。子犬はそのままどこかへ走り出した。

 あの方向は村長の家があるので、そっちに向かったのだろう。


 空いている左手で流れる汗をぬぐった。

 こんなに緊張したのは戦場で死を覚悟した時以来だ。

 やはり、犬という生き物は侮れない……。あの獲物を殺すような目がどうしても苦手だ。


「ヘリト! 帰ろう!」

「ああ、お前の所為で嫌な汗かいたよ」

「もう、あんなに可愛いのに。何かトラウマでもあるの?」

「いいや……特にないはずなんだが、あの獲物を狙う目がな」

「ごめん。あんなウルウルしているのに、獲物を狙う目をしているって?」

「だってそうだろ! 絶対首に噛みつこうと狙っている目だぞ!?」

「……なるほど。やっぱりヘリトは可愛い」

「おい、そのセリフもおかしいぞ」


 俺が可愛いって、目が腐ってるとしか思えない。


「えへへへへ。まあまあ、いいじゃないですかー」

「突然のご機嫌モードは不気味だからやめてくれ。ああ、はいはい。ひっぱるな」


 セレネに手を引っ張られ、村の道を進む。

 もうすぐ陽が沈み……夜がやってくる。

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