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夢幻酷法  作者: SOR
第二の反乱
6/14

後輩と決闘

サラ国についた私たちは、さっそく話をすることになった。


「これに見覚えはありませんか」


優が四季剣を取り出し、サラ様に見せる。


「見たことあるような、ないような…。これがミロックに売っていたってことかしら?」

「はい、これは本来出回ってはいけないものなんです」

「うーん…実はね、私たちは取り決めをしているだけで、実際の製造とか配達までは関わっていないのよ。ミロックだけじゃなくて、他の国にも輸出入の管理もしているし…

工場の場所を教えるから、もしよければ訪ねてみる?」

「はい!お願いします!」

「了解、少し待っててね」


そういってサラ様は部屋を出て行った。


「要するに、私は知りません他をあたってください、ということか」

「ちょっと、ストレートに言い過ぎ」


確かにそうだけど…それから数分後、サラ様は地図を持ってきた。

ルートは書いておいたから、わからなかったらその辺の人に聞いてとだけ言われた。

なんか、たらい回しになりそうな予感がするなあ…

そうして私たちは、工場を目指すことになった。


数十分歩いたところに、工場はあった。

話はサラ様がしてくださっているらしく、私たちはスタッフ専用部屋に案内された。


「はじめまして、ルチアさん、優さん」


部屋で待っていたのは、幼い男の子だった。


「俺は、出背圭太(でせけいた)といいます。

よろしければ、お話聞きますよ!」


またすごい名前の人が出てきたな…


「えっと、四季剣がミロックに輸出された件について話をしたいんですけど…」

「四季剣…?なんのこ…あぁ、あれね!あのキーホルダー!!」

「知ってるんですね。どうしてミロックへ輸出したんです」


優はそんな圭太の態度に少しキレ気味だ。


「実は、うちに四季剣の作り手がいましてねぇ。どうしてもミロックに送りたい!というもので」

「四季剣の作り手!?」


職人さんってこと?そんな人がいるの!?


「でも、迷惑だったみたいっすね。失敬失敬!」

「どう対処してくれる?」


やばい、優がキレそう。カルシウム、早くカルシウム取って。


「では、今から回収に行きますのでミロックへ案内してくれますか?」

「わ、わかりました。案内します」


ということで、なんかよくわからないチャラい感じ男の子をミロックへ連れて行くことになった。


「へえ、高2なんすか!俺の一つ上ですね!」

「そうだよ!にしても圭太は若いね…一つしか違わないとはおもわないよ」

「あはは!よく言われます。じゃ、これからむつき先輩って呼びますね!」

「はっ!?」


変な声が出てしまった…


「先輩…先輩……あぁなんていい響き……」

「おい脳内でお花咲かせるな」


そう言い、優はクールにコーヒーを飲む。かっこつけちゃって。カルシウムを取れ。


「それで?優先輩は、むつき先輩のこと好きなんですか?」

「ブフォッ」

「うわ!きたな!!」


コーヒーを豪快に吹き出した。


「わかりやすいなあ…」


圭太がつぶやく。わかりやすい?


「あっ、あれがミロック城ですね!すごい綺麗だ!!」


もうミロック城が見えてきた。私は軽くため息をついた。


「はじめましてー、出背圭太です!よろしくお願いしまっす!」

「え、あぁ…よろしく……」


圭太のいきなりのテンションにクルミル様は戸惑いを隠せていなかった。


「あっ影が薄いと定評のあるクルミル様ですね!」

「!? ななななにを言ってるんだ薄くなんてな」

「その隣にいるのは、お付きのりゅうさん!」

「どもども」

「最後まで言わせて!?」

「あ!!利愛先輩と白空先輩もいる!

噂通り、すごいバカ面!」

「えへへ…それほどでも〜」

「白空、褒めてないわよ」

「おーっと、鋭いツッコミ!あなたは零先輩ですね!俺、ミロックメンバーに会えて光栄っす!」


こいつ頭大丈夫か?


「あれ?竜先輩の姿がありませんね?」

「圭太、なんでそんなミロックのこと知ってるの?」

「俺、ミロックのことが大好きだからですよ!」


圭太は無邪気に笑った。そんな圭太を、優はずっと疑いの目で見ていた。


「おっ、むつきに優おかえ…」

「竜先輩、はじめまして、圭太です!!」

「お、おう?」


圭太は竜のところへすっ飛んで行き、握手を交わす。そこへ、優が割って入る。


「詳しい、話を、するん、だよ、な?」


優、怖い、顔、怖い。


「いやだから、謝ってるじゃないすか」

「謝って済むことじゃないから言ってるんだろ。外を見て分かっただろ今のミロックがどんな状態か。その原因はこの四季剣にあるんだよ」


優が圭太に詰めよる。


「はぁー…わかりました。なんとかします。むつき先輩と二人っきりにしてもらえますか?」

「えっ?」


突然の提案に驚く私。


「ミロックの王と二人きりで話をしたいんです。いいですか?」

「…そういうことなら」


優は、席を立った。そうだ、私ミロックの王なんだ…私の判断で、ミロックが変わっちゃうかもしれないんだ……。

取り残された私と圭太。部屋がシンと静まる。


「むつき先輩、そんな構えなくていいですよ。勝負しませんか、先輩」

「勝負?勝負って?」

「僕は、今ミロックに何が起きているか、知っています」

「知ってるの!?」

「はい、そりゃあね。そこで、もし僕を負かすことが出来たら、その情報をむつき先輩に教えます。負けたら…どうしようか」


圭太はいつも以上に楽しそうだ。


「わ、わかった。その勝負とやらを受ける。それで、なんの勝負をするの?」

「決まってるじゃないですか」


そう言って圭太は、私のポケットを指差した。


「むつき先輩には、四季剣というものがあるでしょ?」

「つまり、四季剣を使って圭太と戦えってこと?」

「そういうこと!」


どうしよう…私の四季剣っていうと竜や優と違ってただの能力アップなのに…


「じゃ、もしむつき先輩が負けたらその四季剣、僕がもらいますね」

「でも、もし私が勝ったら情報教えてね」

「当たり前です!それじゃ、一週間後、ここで。ミロック城には、戦闘場もあるのでそこで戦いましょう!それでは!」


そう言うと、圭太はそそくさと帰る準備をしはじめた。負けたら四季剣を奪われる…

でも、勝てば情報を得られる。

情報を得られるのは、とても大きい。選択肢はひとつしかない。


「待って、圭太!」


私は帰ろうとする圭太を止めた。圭太はびっくりしていた。そんな圭太に、私ははっきりとした口調で言った。


「勝負は明後日にしましょう」




「「「明後日圭太と決闘!?」」」

みんなの声がハモる。

「むつき、さすがにそれは無理があるんじゃ…」

「わかってるよ零ちゃん。でも…一週間後だと、少なくともあと一週間はミロックはこのままになるんだよ?一刻も早く、元のミロックに戻って欲しいから…」


私は弱々しい声で言った。やっぱり無謀だったかなあ…


「でも、むつきって運動神経いいんでしょ?大丈夫だよ!ほら、素材がよければなんとかなるって言うじゃん」


利愛がフォローを入れてくる。


「圭太がどこまでやってくるかにもよるねぇ…」

「それがさ…圭太のことなんだけど」


白空が話しだした。


「圭太って、サラ国の工場にいたんだよね?」

「うん、そうだよ」

「でも、出背圭太っていう名前はサラ国で登録されていないんだ」

「と、いうと?」

「サラ国の人間じゃないってことだよ」


りゅうさんが答える。


「え、サラ国じゃない?じゃあどこの……」

「それが…マリックなんだ」

「マリック!?」


マリック国は、サラ国とは反対側に位置していて、最近出来た新しい国家だ。できたてホヤホヤにも関わらず、あまりいい噂を聞かない。強盗、殺人、薬物……。

あまり関わりたくない国だ。

圭太はそんなマリック出身だった…?


「これはまずいことになってきたんじゃないの…」


場の空気が冷たくなってくる。


「で、でも、私が勝てばいいんでしょ?大丈夫、絶対勝つよ!」

「まぁ、そうよね。頑張りなさいよ、むつき」

「がんばって!早くいつものミロックを取り戻そう」

「おっしゃー!今日は赤飯だぜー!!」


完全にお祭りムードになってしまった。大丈夫、きっと勝てる。私は、何度も自分に言い聞かせた。




『何か異様なモノを感じる』

『他の四季剣にはない何かを』

『それを確かめてきて欲しい』

『頼んだぞ、圭太』




圭太との決闘(?)当日。私は特に緊張することなく、その日を迎えることが出来た。自分でも、予想以上に落ち着いていた。


「むつき、ほんとに大丈夫なの?」

「大丈夫、なんとかなる!」


私はそう言って笑い、決闘の舞台へと向かった。

戦闘場には、既に圭太がスタンバイしていた。ジャージを着ているから、早めに来てウォーミングアップでもしてたのかな…


「あっむつき先輩!すごい余裕な感じですね」

「そうかな?圭太、今日はよろしくね」


私は、手を差し出す。

ほらなんか、こういう時ってがっちり握手するシーンとかあるじゃん?


「むつき先輩、俺は本気ですから」


圭太はいつもより低いトーンで言った。握手には応じてくれなかった。本気………?


「じゃはじめましょう!優先輩と竜先輩はジャッジしてください!」

「よーし、わかった」


竜が前に出てくる。


「四季剣使用有りの時間無制限勝負。

勝敗はー…そうだな、じゃあ先に膝をついた方が負けってのはどうだ?」

「いいっすね、それでいきましょ!」


圭太は嬉しそうに言う。膝をついたら負け…。これは気を抜けない戦いになりそうだ。


「それじゃはじめるぞ!3…2…1……」


竜のカウントダウンが終わった後、ホイッスルの音が鳴った。試合開始の合図だ。

一晩考えて、私は前半は受け身を取る戦法をとることにした。まずは相手の動きのパターンを見極め、後半その隙を突いていく作戦だ。


それに、私には四季剣がある。能力アップのみの性能だけど、あるとないとではかなり違ってくるだろう。


ホイッスルが鳴った瞬間、圭太はすぐに動き出した。圭太と私は初期装備(?)として、木刀を持っている。

私に向かって走ってくると同時に、圭太は素早くその木刀を振り上げた。ギリギリのところで避けることが出来た。早い…。


「あっれー?先輩、俺の速さについてこれないんですか?」


圭太が煽ってくる。カッとなった私は、言葉より先に行動に出ていた。私が振りかざした木刀が、圭太の腕をかする。


「先輩、本気で来てください。じゃないと承知しませんよ」

「わかってる。圭太もね」


そう言うと、私は圭太から少し距離をとった。制限時間無しではあるが、体力戦となるときついところがある。


やはり男と女の差だろうか。なので、出来るだけ早く決着をつけたい。

と、なると…

私はポケットの中にある四季剣を握りしめた。やるしか…ない……!


『四季剣解法、立春!』


私は叫んだ。

キーホルダー型の剣が大きくなる。私は四季剣を構え、前を見据えた。圭太までの距離た10m弱と言ったところ。そして、私は圭太に向かって一直線に走り出した。



四季剣を解法したおかげで、私の能力は全体的に上がっている。5秒足らずで圭太の背後につく。気づかなかったのか、圭太はギョッとして振り返り受け身をとった。


「これが…立春……」


体制を立て直しながら呟く圭太の目は、とても輝いていた。


「すごいよむつき先輩!やっぱり先輩は選ばれし者だったんだね!」


圭太は興奮しながら言った。


「私だけじゃないよ。優も竜も四季剣を…」

「違いますよ、むつき先輩だけです」


すぐに否定される。私だけ?


「だから…俺は負けるわけにはいかない」


その瞬間、圭太は飛び上がったかと思うと姿を消した。


「け、圭太!?どこ!!? 」


そんな漫画のようなことがあるわけ…


「勝負ありですね、先輩」


いつの間にか背後に来ていた圭太は、私に思いっきり膝かっくんをした。

「うぎゃあ!」


変な声を出し、私の膝は地面と接触した。

……はずだった。私は、倒れこんではいなかった。

答えは簡単。四季剣が私を支えていたからだ。


「四季剣が…なんで…」


圭太も驚きを隠せないようだ。

すると四季剣は光りだし、形を変えた。

立春とは違い、もっと禍々しい剣になった。


「こ、これは一体…」


私はその変わってしまった四季剣を手に取った。試しに振ってみたが、先ほどまでの軽さはない。動いてみても、能力が上がっているようには思えない。


まさか…立春の唯一の力であった、能力アップが効かなくなった…?

馬鹿野郎、それじゃ木刀と変わらないよ!

…ってノリ突っ込みしている場合じゃない



「その四季剣は…俺がもらう!」


圭太はそう叫び、突進してきた。

あまりに突然のことだったので、私は反射的に剣を前に突き出してしまった。

私の四季剣の矛先は、勢いよく飛びかかってきた圭太の腹に思いっきり刺さった。


「あ…あ……」


刺してしまった。私が、圭太を、圭太を……

目の前が真っ暗になる。


「むつき!」


遠くで竜が私を呼ぶ声が聞こえる。私はその場で倒れこみ、膝をついた。


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