共鳴と交代
前回までのあらすじ!
四季剣と対をなす四醋剣を体内に取り込んでしまった竜。
四醋剣は人間?の身体の中で成長し、成熟すると人間の殻をやぶり外へと出てくる。そんな恐ろしい四醋剣が生まれるのを防ぐため、むつきは竜の中の四醋剣を除去しようとする。
しかし竜に姿を変えた四醋剣が現れ、挙句の果てにチューまでする!
みんな、というか優が見ているというのにチューをしてしまった…修羅場、修羅場、修羅場!果たしてどうなるのか!?
「利愛、一人で何言ってるの?」
「んふふ〜零ちゃん久しぶりのあらすじだよ!」
「はあ?」
「とりあえず利愛殴っていいか」
「えっ、待って優。別に優に対しては何も言ってなウワアアアア!!!」
私は竜の話をとりあえず黙って聞いていた。
つまりここまでは全て竜が仕組んだシナリオであり、ミロックのメンバーに復讐しようとしていた…?
「さあむつき、分かったらここで一緒に散ろう。もう戻ったって破滅しかないんだ」
竜は私の肩に手を置いた。
が、私はすぐさまその手を払いのけた。
「その気持ち悪い口調、やめてくれない?」
私が信じきっていると確信したのか竜は隙だらけだった。
もちろん私は竜、いいやこいつのことを信用なんてしていない。
「竜はそんな喋り方しないし、そんな難しいことも言わない。それに…みんなの事をそんな風には言わないよ」
「ずいぶん信頼しているんだな。そんなの分からないだろう。もしかするとこれが本性かもしれないぞ」
「確かにそうかもしれない…私は竜に会ってちょっとしか経ってないし何も知らない」
「だろう?ならこちらへおいで、むつき」
「…そうね、そうするわ」
卯月、みんな聞こえるかな?
「…!?むつき…」
「どうした優、あまりにも好きすぎて幻聴でも聞こえるのか?」
「いや、紛れもなくこれはむつきの声だ…むつき!!?」
なーんだ、卯月にしか聞こえてないのか。残念だなあ〜
「…お前戻ってきたらゲンコツするから覚えとけよ」
「優!?」
今からそっちに竜を送る。だから受け止めて欲しい。
「送る?どうやって…」
「さあ、早く私を連れて行ってよ。それがあなたの望みでしょう?」
「へっへっへ、ならそうさせてもらうぜ!」
竜の姿をした四醋剣は、私に向かって飛びかかってくる。
『四季剣解放、立春』
弱くたっていい、落ちぶれてもいい。
大事なのは守るべきものから目をそらさないこと。
傷つけあうことが目的じゃない。
立春はそのことを、私に教えてくれたのかもしれない。
「立春?お前には正春という四季剣があるというのに…さあ来い!全て飲み尽くしてやる」
竜の身体が真っ二つに割れる。
…やはり本体ではなかった。中身は空っぽだった。
「僕は君を、拒んだりしない。むしろ歓迎しよう。さあ…」
私は目を閉じる。四醋剣の覇気が伝わってくる。
ドロドロとして真っ黒な覇気。
「私はあなたを傷つけない、竜は大切な仲間だから」
ガバアと四醋剣のくちが開く。今だ!!
私は立春を投げ捨て、四醋剣のくちの先に見える竜へと手を伸ばした。
「貴様ッ!?何を…」
竜の手を引くと同時に私は四醋剣の中に入った。くちが閉まり、辺りが真っ暗になる。
確か言っていた、体内にいられるのは一人だけであると。きっとそれは体内だけではない。
私には見えたのだ、四醋剣の中に眠っている本当の竜の姿が。
後は任せたよ、優。
これで死なせたりしたら…ただじゃすまないんだから……ね………




