オシャレと出会い
私の名前は如月むつき!ごく普通の高校二年生。
勉強も出来るしスポーツもそこそこ、趣味はオシャレともう女の鏡!な私なんだけど…
いまいち学校に馴染むことが出来ず、クラスの子からも如月さん、と呼ばれる始末。
学級委員をしているから、話すことはあるんだけど事務的なことで終わり。特に仲のいい子もいない。
そんな悲しい毎日を送っていた。
これだけだと人生何が楽しいの?って思うかもしれない。でも私には唯一の楽しみがあった。
それは…
「うわあああああ!新作のシュシュだ、これは買うっきゃない!!」
そう、学校終わりに近くのデパートに行って(もちろん1人)、服やコスメやアクセサリーやらを見てまわるのが私の生きがいだった。オンオフスイッチ、ポチッとな。
そんな私のある休日。いつも通り私はデパートに出かけていた。それはもう一番お気に入りのワンピをきてイヤリングにネックレスと重装備(?)して。
その時だった。
「あれ、如月さん?」
後ろから声がしてギョッとして振り返ると、そこにいたのはクラスメイトの師走くんと卯月だった。
説明しよう!!
師走竜くんは、所謂さわやか男子!でちょっと頭が悪い(かなり?)。
卯月優はクールなタイプであまり喋らない人。あと小学校から同じで家が近かった…気がする。
…ってこんな説明してる場合じゃない!!!!
「やっぱり如月さんだ!誰かと思った!」
師走くんはその爽やかフェイスで微笑む。
なぜだ…思いっきりメイクもしてるしいつもの学校のオーラは完全に消してるはずなのに…
「ど、どうしてわかったんですか…?」
「優がね、あれ如月さんじゃない?っていうから来てみたんだ」
「ひ、人違いです…」
「今どうしてわかったんですかって言ったよね?今更人違いはないでしょ…もしかして天然?」
キングオブ天然の師走くんに言われたくなあ。
「にしてもお前かなり印象変わるな」
今まで無言だった卯月が口を開いた。
「それは思った。ほんとに別人だよね!!」
「竜なんかうるせぇ」
「あ、あの…この事はどうか内密に…」
ダメ元で頼んでみる。
「おっけーおっけー!もちろんみんなには言わないよ。」
「ありがとう…!」
「それじゃそろそろ俺らも行こうか、じゃあまた明日ね如月さん!」
そう言って師走くんは卯月を連れて去って行った。
相手が師走くんでよかった。
あの人なら多分一日寝たら忘れるだろう。
でもこれが、この出来事が、全てのはじまりだったんだ。
私は今、ある人の後ろをつけている。その人の名前は卯月優。け、けっしてストーカーなんかじゃないんだからね!
時は遡ること一日前。あっ回想シーン入りまーす、ほわわわ〜ん
「おう如月、今日は地味だな」
「卯月???」
「なんだアホ面して」
「あれ卯月、如月さんと仲良かったっけ?」
「横山、聞いてくれよ。こいつ実はこの前めっちゃおしゃれしてデパー」
「うわあああああ何も聞こえないああああ」
回想終わり。
あの遭遇事件からというもの、師走くんは何も触れてこないけど卯月に関してはこれでもかというほど絡んでくる。
あれかな好きな人に絡みに行きたくなっちゃうあれかな?
普通にありません。ないです。
というわけで私は卯月の弱みをつかむため、尾行しているのです!ふはは!!
少し歩くと卯月は小さなマンション?のような一階だての建物の中へ入って行った。
明らかに自宅ではない。
さすがにこの中にまで入るのはあれか…?
いや、ここまで来たんだ、もう引き返せないぞ如月むつき。
この建物の中に入るしかない…!
私は隙を見て不法侵入を試みた。(良い子は真似をしてはいけません)
窓から中の様子がちょっとだけ見えた。そこには卯月と明るい茶髪で背の高い男の人とその真逆で黒髪で背が低く幼い感じの男の子の三人がいた。
どうやら大事な話をしているようで深刻な顔をしている。
もうちょっとだけ中に入れないかな…
少し扉を開け耳を澄ましてみる。するとこのような会話が聞こえた。
「それで、優。候補はいないのか」
「そんな簡単に見つけられるもんじゃねえよ」
卯月はため息をつく。
「別に急ぐことでもないよ、りゅう。」
黒髪の男の子が言う。あの茶髪の人はりゅうって名前なのか。
「まあそれは置いといて、お客様かな?」
「如月!?」
え、ばれた。ばれた!?
いくらなんでも早すぎない!?将来忍者になんかなれないよ…
「ど、どうも…如月むつきです…」
「ストーカーかよきっしょ」
「違うわよ!」
「ふーん、優の友達か?」
「友達というか下僕?」
「ぶっとばすぞ」
私は軽く卯月を睨む。
「ははは!面白い。どうかなりゅう、優。この子に3代目を任せてみるってのは」
「クルミル様正気ですか!?」
3代目?◯ソウルブラザーズ?
「俺はありだと思いますよ」
茶髪の人が言う。
「その前にちゃんと自己紹介してミロックのことを知ってもらわないとね」
黒髪の男の子は改めてこちらを向き、お辞儀をした。
「はじめまして、僕はミロック二代目王のラン・クルミル。どうぞよろしく。」
「よ、よろしくお願いします!」
私も慌てて頭を下げる。ミロックって何…?外国の人…?
「俺は卯月りゅう。二代目王の補佐、まあいわゆるクルミル様の側近をやってる。年は君より1つ上かな?よろしく!」
茶髪の人…りゅうさんが握手を求め手を出す。私はそれに応え握手を交わした。
「卯月…りゅう?卯月ってもしかして」
「ご想像通り!俺と優は兄弟だ」
「こんなバカ兄を持って俺はとても悲しいよ」
「なんだと」
やっぱり兄弟なんだ…確かによく見てみれば似てるとこがある気もする。
「えっと、如月むつきといったね、少し話をしたいんだけどついてきてもらえるかな?」
クルミル様が言う。
「はい、大丈夫ですけどどこへ…?」
「ミロックだよ!この建物はミロックへと通じる扉があるんだ」
何そのファンタジー漫画…
そんなこんなで私はミロックへと行くことになった。なんかよくわからないけど、流れに任せていればそれでいいか…
りゅうさんとクルミル様はぜひきて欲しいっていう感じだったけど、卯月だけはあまりノリ気じゃなくてむしろ来て欲しくないといった感じだった。
ミロック界はいうほど地球とは変わらなかった。普通に店もあるし人もいる。
どうやらミロックというものは人間界とかいう大きな括りじゃなくて、日本とかアメリカといったような国の名前らしい。すぐ隣にはサラという国もあるしね。
そして私たちが今いるのはそのミロックの中央にそびえるミロック城…王宮のようなもの。ここもまた本格的で召使やメイド、コックとかなりの人がいる。
「まず何から話そうかな。むつき、何か聞きたいことはあるかな?」
おん?こいついきなり呼び捨てか?
「ミロックのことはだんだん慣れていくからその度覚えていくといいよ。となるとやっぱり話しておかないといけないのは…」
クルミル様とりゅうさんが顔を見合わせる。
「僕が二代目ミロック王をしていることは言ったよね」
「はい」
「実は、三代目候補を探しているんだ」
「お断りします」
「待って、もう少し話を聞いてくれ」
王なんてそんなもの私が務まるわけ……
「初代のミロック王は僕の父、ラン・ミロックなんだ。そしてその息子である僕がそのまま継いだ感じなんだけど…。まだ三代目だしわからないこともあると思う。けどりゅうみたいにちゃんと王には補佐ってもんがいるし、王といってもあまり国民の前に立つこともないしそんな背追い込むこともない。なんなら優を補佐につけようか?」
「いや、それでも私にはむ「俺は反対です」
卯月が言葉を遮る。
「こんな奴の補佐なんかしたくないですし、クルミル様の方が適任です。今変に交代してミロックが崩れてしまう可能性だってあります」
「それもそうだが…」
クルミル様は考え込む。
「まあそんなすぐ結論出すことでもないでしょ」
りゅうさんが明るくいい、私の頭に手置いた。
「とりあえず候補、だからね。そんないきなり連れて来られて王やってください、なんて普通はできないし俺らもまだ君がどういう子なのかもわからない。嫌なら嫌、それでいいよ。無理やりさせるつもりはないからね。」
「ありがとうございます…」
卯月はどうしてあんなに拒むんだろ…そんなに私のことが嫌いなのかな…
「わかったならもう帰れ。そしてミロックのことは忘れろ」
卯月が言う。
「優、そこまで言わなくても…」
「りゅうさん、大丈夫です。お騒がせしました。」
私はそう言って客間を出た。確かに卯月は言い過ぎかもしれないけど元はといえば私が蒔いた種だ。もう今日のことは忘れよう。
帰り道はわかっていたので、せっかくだしと思い私はミロックを探索することにした。卯月からはどこにも寄らずまっすぐ戻れと念を押されたけど無視しよう。せめてもの抵抗だ。
ミロック界の人はミロック語を話しているわけではなく、日本語で話している。それに市場で売られているものも、日本で売られているものとなんら変わりない。
せっかくこういう世界があるんだからミロック特有のものとかあればいいのに…
そう思いながらぶらぶらしていると前から歩いてきたフードを被った女の人と目が合った。綺麗な紫の瞳…
「はじめまして」
その女の人は微笑した。
「あっはじめまして…」
「あなた、ミロック城から出てきたわよね?」
「ど、どうしてそれを…」
もしかして後をつけられていたのか?ものすごく嫌な予感がする。
「やっぱり、交代の情報は確かだったのね。しかも女。クルミル様は何を考えているの」
女の人は呟いた。
「若い芽は早めに摘むに限るわ。ごめんね、あなたに罪はないのに。許してね」
どういうこと!?という声も出せないまま次の瞬間、目の前が真っ暗になった。
目を覚ますと、私は両手首手足をロープのようなもので縛られていた。
もしかして私囚われの身?お姫様?生贄?
全く状況が理解できない私の周りにはいかつい男の人が数人いた。
そうだ、思い出した。私、あの紫の瞳の女の人に話しかけられて…
「目は覚めたかしら」
ハッと前を見るとその女の人は立っていた。
「…どういうことか説明してください」
「あなた何も知らないの?」
やれやれと女の人は言う。
「二週間ほど前から、ミロックの王が交代するっていう噂が流れてきたのよ。私たちは交代を反対する者たちで集まった。今のミロックはとても平和だし、このままが一番いいの」
そういえば卯月もそんなこと言ってたなあ…
「それで調べてみれば次の王が女?しかもこんな無知で馬鹿っぽいのが。信じられないわ、笑っちゃう」
なんかすごくディスられてる気がするんだけど。キレそう。
「一応お仲間さんに宣戦布告はしたわ。でもあなた達知り合ってまだ日が浅いようね。危険を犯してまで助けに来るかしら?」
「来るよ!絶対に来…」
ここで卯月の言葉がフラッシュバックした。
『反対です』
『こんなやつの補佐なんかしたくない』
『わかったならもう帰れ』
「助けに来てくれるよね…たぶん…いや来てくれるはず…だってクラスメイトだし…巻き込まれたのは私だし…」
「何自分に言い聞かせてるのよ」
考えれば考えるほど来ない気がしてきた。
「もう…こんなことしてても時間の無駄だわ。あんた達、ちょっとこいつ黙らせて」
「でも俺ら女の子殴るのはちょっと…」
「ミロックのためよ!」
「わ、わかりやした…」
私の周りにいたいかつい男たちが近づいてきた。そして思いっきり私の頭を殴った。激痛が走る。
「こんな女なら簡単に黙らせることができるでしょ。見るからに弱そうだし。ミロック王になんかなれるわけないじゃないの」
その時、私の中で何かが切れた。
プツンという音がしたのを覚えている。
「弱い…私が……?」
自分でもびっくりするような低い声で言う。
「人質なんかとらないで堂々とクルミル様にでも話に行けばいいじゃない!この弱虫!」
「なっ…」
私はそう叫ぶと、自力で縄を引きちぎり、いかつい男たちを蹴り倒していった。
中には抵抗してきた男もいたけどスピードがなく、余裕でかわせた。
「何この子…話と違うじゃない…! 」
全員をぶっ飛ばしたところで私は言った。
「隠してきたけど私、スポーツは得意だし喧嘩は強いよ。そんなにミロックに不満があるなら自分が王になればいい」
フッ…決まった!
「認めない、あんたが次期ミロック女王なんて認めない!!」
「え、いやだから私女王になる気は全くな…」
捨て台詞を吐いた女の人はそそくさとどこかへ行ってしまった。
一人呆然としていると背後で声がした。
「出る幕はなかったようだねえ」
「りゅうさん!?」
物陰から出て来たのはおなじみ三人組。
「もしかして…みんなずっと見てたんですか?」
三人ともピタリと動きが止まる。
「どうして助けてくれなかったんですか…死ぬほど怖かったんですよ……」
「い、いやあさすがに頬を殴られた時は出ていこうと思ったんだけどね…なんかタイミングがわからなくて…」
「まあまあ、無事だったからいいじゃないか!」
「りゅうさん、綺麗にまとめようとしないで」
「あれ?敬語は?俺一応年上なんだけど敬語は??」
「お前にミロック王は反対だっていうのはあの女に賛同できるな」
「私だってやればできるわよ」
「え、スルー?」
すうと息をすいこみ、私は叫んだ。
「そんなに言うならやってやるわよ!ミロック王!
このミロックを、変えてみせる!」
ピッ……
機械音が響いた。その音は盗聴器が発したもので、それをニヤニヤしながらクルミル様が持っていた。
「あっ」
「言ったねむつき。とりあえずミロック城へ戻ろう。これから忙しくなるぞ」
満足げにクルミル様は言った。完全にやらかした。
でも、証拠を取られてしまっては仕方ない。
私は静かにミロック三代目王を引き受けなければならないと悟ったのであった…
この夢幻酷法は7、8年前から練りに練り混み熟成させた大きな作品です。
読みながら登場人物と笑ったり、泣いたりしていただけるととても嬉しいです。
また作品の登場人物は全て暦や年月をもじってつけています。ぜひぜひ探してみてくださいね!
それでは、夢幻酷法をお楽しみください。