表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/44

右顧左眄互いに喰い合う


「それじゃぁ、費用で収益と関係のないものは費用にならないことところから説明するわね」

「費用ってことは購入したものを指すんですよね?」

「もっと単純に云えば資産にならないものね。通信費や光熱費は費用になるけど、資産にならないわよね?」

「まぁ、支払いはするだろうけど、それがプラスにはならないな」

「実は負債による金銭の増減は費用にはならないの」

「いや、それは前回で十分わかりましたけど?」

「たとえば商品を500円で仕入れて、それを後払いしたら?」


(仕入)500(買掛金)500


「になりますけど」

「後で払うから、こうなるよな」


(買掛金)500(現金)500


「それじゃぁ、この取引は費用として? それとも負債として?」

「えっと、商品を仕入れているから費用になるし、だけど借金を返しているから負債になって……」

「つまり、最初の取引は費用としての取引で、後払いは負債での取引ってことになるんですか?」

「そういうこと。つまり費用の取引でもそれが買掛金で支払う場合は負債での取引になるの」


(仕入)500(買掛金)500

(買掛金)500(現金)500


「どちらも借方と貸方が500円で合っているけど、これを費用と収益で計算すると、まだ売れていないから△500円になるの。費用はあくまで売上に関わったものになるわね」

「ということは仕入れ以外は費用にはならないってことですか?」

「そうじゃないのよ。これも言葉足らずになってしまうけど、費用と収益は経営成績を示すもので、ものやサービスを提供して対価を受け取ったものが『収益』。ものやサービスの提供を受けて対価を支払うのが『費用』になるわ」


 取引 光熱費2,000円を現金で支払った。

(光熱費)2,000(現金)2,000


「この取引も費用によるものになるけど、売上にはならないわよね」

「そうか。結局費用と収益も増減が生じないとダメなのな」

「わかりやすく言うと、ある一定期間の収益・費用に関する勘定科目の元帳と照らしあわせて、プラマイを算出するってことかな」


 光熱費の元帳

 (当期の増加分)(当期の減少分)

         (差額)


 売上の元帳

 (当期の減少分)(当期の増加分)

 (差額)


「この二つの元帳の差額を照らしあわせて、最終的に利益か損失かを判別するのよ」

「えっと、なんとなくわかったけど、でも資産があるから減らなきゃ利益になるんじゃ?」

「現金などの資産・負債・純資産には前期繰越額と次期繰越額があるんだけど、費用・収益には繰越額ってないの」

「繰越って、前の月に残っていたお金をその翌月に資産として使えるってことですよね?」

「わかりやすく言うとね。でも売上にはそれが使えないの」


 たとえば資産の場合は前月の売上金でプラスになった場合、翌月の資産金として使えることができます。

 繰越額というのはその区切りの時点での残高を示していて、ここで現金が消滅してしまうわけではありません。

 しかし費用や収益はいわば売上成績を表していて、完全にその月の売上として見られます。


「要するに、利益というのは概念であって、プラスだからといって設けているってわけじゃないのよ」

「あぁ、それで会計の話に出ていた『見栄えをよくする』に繋がるんだな」

「誰しも自分をよく見せたいとは思うだろうから、利益をよく見せようとするのよ。ただ儲けは本当に経営ビジネスが成功していることだね。具体的には現金が確実に増加している状態をさすわ」

「でも見栄えをよくするのは間違いではないんですよね?」

「間違いではないね。だから帳簿上の数字に過ぎなくても、利益が会社の経営成績を示す重要な役割であるから。ただ言葉の意義は覚えておいたほうがいいね」


 取引 1個100円の缶詰を現金で15個購入しました。

 (仕入)1,500(現金)1,500


「これは費用になるかしら?」

「えっと、売るとしたら費用だけど、持っておくとしたら資産になるんじゃ?」

「正解。売上を前提で購入したのなら費用の増加になるけど、もしこれを災害用の非常食とするなら資産の増加になるわね」

「つまり使う状況によって違うってことですか」

「そうだね。そしてそれを食べたら?」

「『食費』として、費用の借方になる」

「公人くんも慣れてきたね。費用はものやサービスを消費することで初めて費用になるんだよ。ただ購入しただけじゃ費用にはならないんだよ……(ゴソゴソ)」

「あれ? なにをしてるんですか?」

「たとえば1冊200円の本をクレジットカードで購入して、それを翌々月に支払われる場合はどうなる?」

「えっと、カードだから資産だよな? ってことは」


(仕入)200(クレジットカード)200


「ってなるけど」

「でも神さまは翌々月に支払われるから」


(仕入)200(クレジットカード)200

(クレジットカード)200(普通預金)200


「になるんじゃ?」

「書き方としては間違ってないけど、今は費用と収益の話をしているから、これがどの月に書くものかって話だね」

「いつに記述するか?」

「たとえば二月に購入して、同じような支払いなら、カードの代金は四月に振り込まないといけないわね。でもそれをいつ購入したかで違うのよ」

「えっと、二月に購入したならその月の報告書に記入するんじゃないか?」

「でもお金は四月に支払うから、その月に書くんじゃないかな?」

「ふたりとも、実はどっちも正解。公人くんの答えである四月に支払う場合は『現金主義会計』と言って、美樹ちゃんの答えである二月に記入する場合は『発生主義会計』って云うの。取引上はどちらも同じだからね。後払いが多い今は『発生主義会計』が多いかな」

「売掛金や買掛金みたいな後払いも『発生主義会計』になるんですね」

「カードでの支払いも後払いだからね。ほらバスや電車を乗る時にスマホを使って運賃を支払うでしょ? あれも通信費の請求に追加されるから後払い。でもそれがその月の旅費として処理されれば『発生主義会計』になるわけ」

「オレは現金派だけどな」

「というか、公人くんはよく携帯を忘れるだけでしょ?」

「ハハハ……。収益は資産を獲得する原因となる活動や事象だと思えばいいね。売上の他に、貸付金が戻ってきた時の利息分、土地や部屋を貸した時の受取家賃が主な収益になるね」



...出世払いは期待するだけ無駄


「それじゃぁ、資産・負債・純資産について(ゴソゴソ)」

「またなにかしてる」

「たとえばこの据え置きゲーム機を購入するさい、そのゲーム機が五万円とするよ。公人くんが働いている大人として、手持ちの現金が2万円。コレじゃ足りないから一緒にいる時だけ自由に使えるという約束で友人に現金1万円の融資をしてもらった。でもまだ足りないから、銀行から残りの2万円を借りる」


(現 金)20,000(資産▲)(資本金)20,000(純資産▲)

(現 金)10,000(資産▲)(資本金)10,000(純資産▲)

(現 金)20,000(資産▲)(借入金)20,000(負債▲)

(仕 入)50,000(資産▲)(現 金)50,000(資産△)


「さて問題、この仕訳で損をしているのは誰でしょ?」

「うーんと、まず資本金として三万円用意されて、借入金で銀行に返さないといけないから」


(現 金)20,000(資本金)20,000

(現 金)10,000(資本金)10,000

(現 金)20,000(借入金)20,000

(仕 入)50,000(現 金)50,000

(借入金)50,000(現 金)20,000

(借 方)△20,000(貸方)20,000


「になりますね」

「そうなると、結局負債を払うことになるオレがその分(2万円)を損をするってことか?」

「そうだね。でもこういうのってそんなすぐには売らないでしょ?」

「だな、据え置きってかなり高いし、手放したくない……ってあれ?」

「もし公人くんが引っ越したら、その融資をしてくれた友人はどうなる?」

「たしか『一緒にいる時だけ自由に使えるという約束』だから、実際損をしているのは友人のほうなんだ」

「そういうこと。さて、結果据え置きゲーム機を購入できたし、売却する意思もないから、これを『有形固定資産』として扱えるんだけど、だからといって簿記ではそう記入されない場合があるんだよ」

「っと、どういう意味ですか?」

「たとえば500円くらいのシャープペンシルを購入した場合、これは固定資産になるかしら?」

「長く使うから固定資産になるんじゃ?」

「シャーペンは形があって(有形)、一度使ってしまえばお金にかえられない(固定)。だから固定資産になるにはなるけど、これは費用として扱われるんだよ」

「固定なのに費用ですか?」

「その理由は安いからだね」

「安いから費用になる?」

「たとえばこれが200万円の軽トラックとして、それが費用としてしまうと、その年の損益にかなりの影響をあたえるよね? だからお金が高い場合は『有形固定資産』として扱われるんだよ」

「えっと、つまりはシャーペンは安いから費用として扱われるということか?」

「簿記での記入は『事務用品費』で十分だよ。『事務用品費』の元帳に何を買ったのかを書いたほうがいいけどね」

「でもこの『有形固定資産』の話で、なんでシャーペンを例に出したんですか?」

「それは、次の有形固定資産に関してを読んでね」


 有形固定資産となり得るものを購入した場合。

 その商品を現金(もしくは借入(貸付)金、買掛金)で支払った。

 それが商品や有価証券だった場合はそのまま資産として仕訳されます。

 それ以外で値段が高かったか(たとえば20万円以上)

 以下だった=費用として処理される。

 以上だった=長期使用するか。

 はいと答えた場合はそれが固定資産になり、いいえの場合は費用として処理されます。


「そしてその固定資産が土地などだった場合は『()減価償却(げんかしょうきゃく)資産』となり、建物や車だった場合は『減価償却資産』となります」

「『非減価償却資産』? 『減価償却資産』?」

「減価償却がなんなのかわかれば、そんなに難しいものでもないわよ」

「えっと、使っていくうちにその固定資産の価値が減るってことですか?」

「まぁ、単純に云えばそうなるね。ちなみに固定資産の減少分は決算期ごとに償却費として積み立てられるんだよ」


 取引 500万円のミニバンを前払いとして現金200万円、ローンとして月30万円で購入した。

(車 両)500(資産▲)(現 金)200(資産△)

            (買掛金)30(負債▲)

(単位は万円とします)


「だけど、車は乗ること……使うことを前提としているので、当然ながら劣化していきます。つまり価値が減っていくってことになるわけ」

「でも昔の車ってオールドカーとか言って、何100万になる場合もあるよな?」

「それはかなりのレアケースでメンテナンスが行き渡っていないとダメなんだよ。ほら、公人くんが自転車に乗っていたとして、それを綺麗に扱わない以上はボロボロになるでしょ?」

「まぁ、言い返せないのがシャクだけど」

「で、高値で購入したものを一度資産として処理して、徐々に価値を減らしてから費用として処理をするんだよ」

「つまり、さっきの据え置きゲーム機も有形固定資産だけど、年月が経てば価値が減って最終的には費用になるってことですか?」

「そういうこと。まぁ経理からしたらものを購入したらできれば費用として処理したいのよ。費用が増えれば利益が減る。利益が減ればその分税金が減るし、資産にすると管理に手間が出るからねぇ」

「でも土地の値段って変動するよな?」

「それはあくまで市場価格としてだね」

「市場価格?」

「市場価格というのは、商品の値段。お店でバナナを200円で購入したけど、他の店に行ったら20円くらい安かったなんてことあるでしょ?」

「わたしはよく買い物をしますから、心当たりがあります」

「でも土地ってそんな簡単に買えるものじゃないし、屋敷を建てようがぶっ壊そうが、その土地が『使えなくなる』なんてことはないでしょ?」

「だから『非減価償却資産』になるのか」

「他にも美術年鑑に載っているような価値ある芸術品も『非減価償却資産』として扱われるね」


 取引 20万円の海外製ソファ一式を銀行から振込で購入した。

 (備品)20(普通口座)20

(単位・万円)


「土地と現金以外の資産は減る可能性もあるのは、前に有価証券とかの問題を出した時に知ってるとは思うけど、こういう場合もあるから頭に入れておいて間違いはないよ」


 取引 2,300万円の建物、300万円の車両を資産とする。

 (建物)2,300

 (車両)300

(単位は万円とします)


「上記は有形固定資産になるけど、かならずしもこの値段で売れるというわけじゃないんだよ」

「つまり自然的に資産の貸方になるってことか」

「使っている以上はしかたのないことだけどね。価値が減った分を減価償却費として、費用の借方になるのよ。だけどものとしてではなく最後まで資産として見て欲しいところね」

「……っ? どういうこと?」

「ものって使っていくうちに愛着が湧くんだよ。クルマ好きが昔の車に惚れ込んだりするのと一緒で、せっかく高い買い物をして購入した資産だから、直せなくなるまでは使っていきたいでしょ? 経理上、使い続ければいつかは償却費として費用の処理をするけど、帳簿にないものを持ち続けることはダメだから、減価償却費がたとえ一円でも、工場などの機械は勘定項目に記入されるんだ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ