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実際、寿司屋でお愛想って聞かないよね?


「まったく、美樹ちゃんが持ってきた大福餅が美味しいこと」

「口に粉つけながらしゃべるなよ。それで前回の続き、勘定と仕訳についてだけど」

「そうだね。まずは勘定についてから。これは『金銭を数える』って意味なの」

「そのままの意味ですね」

「たとえば公人くんたちが200円のパンを現金で買った場合、次の図になるね」


 (雑費)200(現金)200


「現金や建物と言った名称自体を『勘定科目』と言って、金額の状態も含めたものを『勘定』っていうの」

「仕訳ってのは、まぁ話をしていてわかるけど、要するに買ったものを借貸に分けるってことか?」

「うーん、仕訳っていうのは金銭が生じた取引を記録したものを言って、それをより詳しく書いたものが『分析』になるんだよ」

「そういえば、簿記の役割の話でも言ってたな。あれ? でも取引って金銭だけじゃないだろ?」

「何回も言うけど、簿記は貨幣額に直せないものは記入できないの。つまりお花屋さんが取引先と装花の契約をしても、それは金銭の契約にはならないから簿記には記入されない」

「飽くまで簿記は貨幣額での記録係りなんですね」

「そうね。たとえ100万円の商品を注文しても、それが届かなかったり、支払われなかったら、簿記に記入はないのよ」

「他に簿記で書かなくてもいいものってあるんですか?」


 (簿記に記入されるもの)

 商品の仕入れ・商品の販売・代金を支払う・代金を受け取る

 お金を借りる・借りたお金の返却・経費、給料を支払う

 商品の損失・万引き被害・災害被害


 (簿記に記入されないもの)

 見積書の提出・商品の受注・商品の注文

 業務委託の契約・賃貸の契約


「以上が簿記の記入の有無だね」

「だけど契約ってお金が発するんじゃないのか?」

「基本的に簿記は『なにに何円使ったのか』の増減をまとめたものだから。仕訳……しいては仕訳帳にはこう書かれるの」


 取引 八月四日に旅費として現金1万円を支払った。

【仕訳帳】*左を借方、右を貸方とします。

 八月四日(旅費交通費)10,000 (現金)10,000


「金銭の増減が生じた『取引』の分析をして、それを帳簿に仕訳るってところかな」

「よく従業員のおやつとか昼食を経費で落としたなんて言いますけど、あれも仕訳になるんですか?」

「おやつとか昼食なら『福利厚生費』になるから、たとえばそれが2,000円になって現金で支払ったとしたら」


 (福祉厚生費)2,000(現金)2,000


「となるね」

「元帳にはどう書くんだ?」

「元帳の仕訳方を勉強した時と同様に記せばいいよ。それじゃぁ、次の五つを分けてみて。売買ができるものは買ったものとするよ」


 (貸付金)・(土地)・(有価証券)・(機械)・(前払金)


「えっと、土地と機械は売買ができるから借方の項目に入るんだよな? それじゃぁ残りの三つは貸方になるのか?」

「あれ? 貸付金って借入金の逆だから、最終的に増えるってことじゃ? それに有価証券も売買目的なら資産に増えるね。それじゃぁ前払金だけが貸方で残りは借方ってことになるんじゃない? そうでしょ? 神さま」

「あぁ、やっぱりこれも引っかかったちゃったかぁ」

「ありゃらぁ?」

「いや、二人の回答は当たってるんだよ」


 (土地)(前払金)

 (機械)

 (有価証券)

 (貸付金)


「二人が考えているのはこういうことだよね?」

「そうですけど、これがなにか間違いでも?」

「いや間違いではないんだけど、ほら、前回話していたこと覚えてる?」

「もしかして、これって△になる可能性があるやつですか?」

「商品を扱う以上、△になるってのは極力避けたいけど避けられないからね。前回話した貸倒れを思い出して」

「……もしかして、土地と機械以外は全部貸方に入るってことか?」

「将来性の可能性としてはね。だって、土地は資産だからそんな簡単に売れるものじゃないし、機械は商品として売ることはできるでしょ? でも有価証券はその株券を発行した会社が倒産したらただの紙切れだし、貸付金は美樹ちゃんの指摘通り借入金の反対。貸したお金だから将来的には戻ってきてほしいけど、戻ってこない可能性もある。前払金は商品が届く前に払うものだけど……」

「その商品が届かなかったら貸方に入るってことですか?」

「そうだね。これは極力避けたいことなんだよ」

「でもさぁ、前払いで商品が届かないってひどい話だな」

「……ネットオークションを思い浮かべてみて」

「あ、前払いしたけど商品が届かないなんて話をよく聞きますね」

「あれって、企業やショップ以外はほとんど個人でやっているようなものだからね。今は結構厳しくなってるけど、昔は結構あったみたいだよ」


 取引 株1口200円を10口現金で購入した。

 (有価証券x10)2,000 (現金)2,000


「有価証券を買ったことで将来的に資産の増加になるけど、その株が暴落すれば資産の減少になるんだよ」

「株って日々替わりますからね」

「株値が上がれば得だけど、下がれば損だよね? 2%違うだけでぜんぜん違うんだよ。それじゃぁさっきの有価証券を資産として、それを売ったとするよ」


 取引 株式の配当金を現金で受け取った。(+2%)

 (現金)2,020 (有価証券)2,000

           (有価証券売却益)20


 取引 株式の配当金を現金で受け取った。(-2%)

 (現金)1,980 (有価証券)2000

 (有価証券売却損)20


「プラマイで40円の違いなんですね」

「まぁそれくらいだったら気にならないな」

「まぁ貨幣額が低いとそう思うだろうけど、これが単位を10万円で計算したらどうかな?」

「……400万になりますね。ちょっと見方を変えるだけでこんなに違うんだ」

「まぁ、お金が戻ってくるだけまだいいと思うよ。これが貸倒れされたら笑いことじゃすまないから」

「それじゃぁ、貸付金は貸したお金だから、それが戻ってこなかったら……って、想像したら目の前が真っ暗になった」


 取引 取引相手と現金200円の貸付をした

 (貸付金)200 (現金)200


「借入金の記入はこの真逆だね。それを返済し(され)た場合は、借入金の時に説明した記入になるよ」

「借方に現金、貸方に貸付金をそれぞれの摘要に書いて、その金額を書くんだな」

「それじゃぁ、前払金と貸付金が貸倒れされたら、どう記入するんですか?」


 取引 貸付金200円が貸倒れた。

 (貸倒損失)200 (貸付金)200


「前払金は『前渡金』とも言って、売る側は『前受金』になるね」


 取引 取引先に手付金として2,000円支払った。

 (前払金)2,000 (現金)2,000


 取引 右記の取引に加えて、手付金との差額200円を現金で支払った。

 (仕入れ)2,000 (前払金)2,000

            (現 金)  200


「前受金っていうのは、商品の支払いの時に先にもらったお金のことだね。どちらも簿記の仕訳ではそれに現金を足して、商品の値段と照合するんだよ」


 取引・一 手付金200円を受け取った。

 (現金)200 (前受金)200


 取引・二 400円の商品を販売した。

 (前受金)200 (売上)400

 (現 金)200


「ってなるの。前払いで現金を使ってるけど、まだ商品に支払っていないから、負債の貸方として前受金が入る。(お金はもらったけど、商品が売れたというわけではないからです)前払金はその逆で、現金を支払っているけど、商品を受け取っていない状態なんだよ」

「つまり、取引された後に、きちんと商品の受取が完了した場合は、前払金が貸方(減)になって、その不足金を現金で支払う(貸方)ってことですか?」

「売り手はその逆だから、現金が借方に入って、前受金が貸方に入る。商品が売れれば、前受金と不足金の現金が借方に入って、商品が貸方に入るってわけか」

「そういうこと。仕組みがわかればそんなに難しくないでしょ?」

「それじゃぁ貸倒れされたら?」

「当然、貸倒損失になるね」


 取引 前払金200円を貸し倒れされた。

 (貸倒損失)200 (前払金)200


「貸倒は債権があるのにそれが取れないという最悪の状態で、倒産した会社も肩身が狭い思いをするから、取引先どうしの信頼問題にも関わるし、気をつけないとね」


 主人公と美樹が中学生ということで、貸付金(借入金)の話ではふれませんでしたか、借金には利子(利息)が発生します。


 取引 信用金庫からの借入金2,000万円を返済し、利息3%とともに普通口座で振り込んだ。

 (借入金)2,000 (普通口座)2,060

 (支払利息)60

(単位:万円)


 貸付金はこの逆になります。


 取引 B社に対する貸付金に利息3%を加えて、現金2,060円を受け取った。

 (現金)2,060 (貸付金)2,000

         (受取利息)60

(単位:万円)


 利子(利息)で気をつけるところは、支払と受取ですね。



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