表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/44

たとえば銀行からお金を引き出したら?


「こんにちわ」

「……だれ?」

「あぁ、幼なじみの美樹だよ。たまにうちに遊びに来るんだ」

「こんにちわ、お金の女神さん」

「ほう、わたしが視えてるんだ。ということは貴女もお金に困ってるってわけね」

「困ってはいないけど、でも簿記には興味あったから、先生よろしくお願いします」

「なんかすごい新鮮。キミとは違うねぇ」

「よし、それじゃぁ昨日の続き、教えてくれ」

「ホイホイ。それじゃぁ、あなたたちは銀行にお金を預けている?」

「まぁ少ないけど預けてるな」

「ワタシも~」

「銀行に預けているお金は簿記ではなにになる?」

「資産になるんじゃないか? 使えるお金なんだし」

「正解。ではここからが問題。その銀行から五百万引き落とした場合、簿記ではどう記入しなくてはいけないでしょうか?」

「えっと、銀行からお金を引き落としたってことは、現金が増えるから……」


(現金)500(銀行)500

(注・単位は万円です)


「ってなるのか?」

「まぁ、銀行の場合は普通口座とか細かいところがあるんだけど、正解にしておくね」

「資産では借方が増える、貸方は減るだからな」

「それじゃぁ往復問題。その逆はどうなる?」

「逆って、現金を銀行に預けるってことですか?」

「そう。まぁ、書き方はすぐにわかるよ」


(普通口座)500(現金)500

(単位・万円)


「逆ってことは、こうなるんですね」

「おぉ、ちゃんと普通口座になってる」

「現金が減るから貸方に記入して、普通口座にお金が増えるから借方に書くんだな」

「そうそう。それじゃぁ、銀行から1,000万円借りた場合はどうなる?」


 (現金)1,000(借入金)1,000

(単位・万円)


「だな。さすがに二回も引っかからないって」

「それじゃぁ、その借金を純資産で30%分返したら?」

「純資産って、集めたお金だから」


 (借入金)300(資本金)300

(単位・万円)


「になるのかしら?」

「そうだね(本当は違うんだけど、考えとしては間違ってないから今はいいかな)。純資産(資本金)で借入金の一部(30%)を支払ったわけだから」

「でもあれだな。借入金が負債ってのはわかるけど、書き方が逆になるのな」

「お、しっかり見てるね。それじゃぁ今回は資産・負債・純資産の仕訳方について」


 たとえばあなたは200万円の現金を資本金として企業を立ち上げます。

 この場合は、基本的となる資産は200万円ですね。

 それから会社を立ち上げるのですから、働く場所が必要になります。ここでは貸しビルのフロアを一月5万円で借りたとします。

 家賃はかならず払わなければいけませんので、負債で家賃5万が出て行くことになります。

 そしてさらに仲間やネットで話を持ちかけて、100万円の出資をしてもらいました。これが純資産に100万円となります。


       (負 債)5

(現 金)300(資本金)300

(単位・万円)


「あれ? 純資産って減る側になるのか?」

「公人くん、お金の売買でもちいられる『株』の語源ってなにかわかる?」

「いや、ちっとも」

「元々は『株』を作るために人からお金を集めて(純資産)、その『株』を売った利益を支援した人に分売することから来てるみたい」

「あぁ、だから純資産は貸方のほうに入るんですね」

「……どういうこと?」

「ほら、負債と一緒だよ。純資産も結局は返さなきゃいけないじゃない」

「美樹ちゃん正解。たとえば1口1万円で出資をお願いして、それが58人集まった。それを普通口座に預金する。これが資本金。ひいては純資産になる。そして1年後、つまり決算の時に150万円を売上で算出されて、出資者には支援金に1.05%プラスされて振り込まれた場合、簿記ではこう記入されるね」



(普通預金)58(資本金)58

(単位・万円)


(有価証券)60.9(普通口座)60.9

(単位・万円)


「売上に関しては資産というより利益に値するから、それに関しては今度に回すね」

「一人頭、10,500円の配当金か。これって得したってなるのかね?」

「増えてるだけまだいいんじゃないかな? 最悪戻ってこないってこともあるんだから」

「美樹ちゃん鋭いね。会社って絶対潰れないってことはないんだよ」

「その場合はどうなるんだ?」

「それを今回の講座のラストってことで、『貸倒』と『引当金』の説明をするよ」

「貸倒?」

「えっと、君は自己破産って知ってる?」

「借金をしていて、それが返せない状態だよな?」

「破産っていうのは、『債務者(さいむしゃ)(借りた人)が債務を支払うことができなくなったとき、債務者の全財産(資産)を、各債権者(さいけんしゃ)(貸した人)が債務額に比例して公平に分配するために行なわれる裁判上の手続き』でしたっけ?」

「うん。スマートフォンを見ながら答えられると、なんか釈然としないけど。まぁ間違ってはないね」

「これがなんで会社と関係するんだ?」

「会社も借金をして、それを返すために努力するでしょ? だけど首が回らなくなって次第にお金が返せなくなる。そして最悪倒産してしまった」

「つまりそれが『貸倒』ってことですか?」

「そうね。『貸倒』っていうのは後払いの一種で、たとえば公人くんが美樹ちゃんにプレゼントで1万円のネックレスを宝石店で買ったとするよ。だけどキミは持ち合わせがなかったから後払いにすることにしたの。宝石店での仕訳ではこうなるね」


 (売掛金)10,000(商品)10,000


「貸方に商品があるのはわかるけど、売掛金ってなんだ?」

「後で払ってもらうから、結局は増えるってことになるんじゃないかな?」

「正解。売掛金と買掛金の違いはそれが資産であるか負債であるか。売る側はあとで代金を貰うから資産の借方に売掛金が入る。買う側は後で支払わなければいけないので負債の貸方に買掛金が入るんだ。だけど、公人くんは期日になっても返せない。そしてどこかへ行方不明になってしまった。宝石店ではその時の仕訳でこうなるよ」


(*3)

 (貸倒損失)10,000(売掛金)10,000


「貸倒損失はそのままの意味で、失うってことか」

「会社間での取引では後払いが結構使われるからね。覚えておいて損はないよ」

「ネットでソフトをダウンロードして、その代金を翌月に支払われる場合も買掛金になるんですね」

「そうだね。仕訳ではこう記入されるよ」


 たとえば2万円分のゲームを購入した場合。

 (商品)20,000(買掛金)20,000


「だけど支払いが滞ってしまった場合もさっき(*3)と同じヤツになるね」

「会社にとっては負債になるのか」

「うーん、負債って借金だから、正直そうではないけど、商品が売られたけど、利益がなかったってことになるかな」

「あ、ってことは万引きもですか?」

「鋭いね。万引きだけじゃなく、災害で被害に遭った商品もそうなるわね」


 たとえば、2,000円の本が万引きされた場合……

 (棚卸減耗損)2,000(商品)2,000


「ってなるね。右記の図が災害による被害でもこうなるよ」

「あれ? 詳しく書かなくてもいいのか?」

「そういうのは別途報告書で会社には報せているだろうから、最初の会計でも説明したとおり、貨幣額にかかわらないことは簿記には書かなくてもいいんだよ。で、話を戻すけど、『貸倒』された金額って、突然じゃなくて、前々から察知はできるんだ」

「どういうことですか?」

「たとえば1,000万円の買掛金があった場合、受け取る側は当然1,000万円を支払ってほしいわけだよね? でも一部が戻ってこなくなった」


 (貸倒引当金)200(売掛金)1,000

 (貸倒損失)800

(単位・万円)


「ってなるの」

「貸倒で損失した分は△になるんですね」

「本当だと、この話は費用・収益になるんだけど、話を振った以上は触れておこうかなって思ったんだけどね」


 (貸倒引当金)2,000(売掛金)2,500

 (貸倒損失)500

(単位・万円)


「さて最後の問題。これはある企業に2,500万で土地を売った不動産屋が、その企業に貸倒された時の仕訳なんだけど、ある程度は引当金として、費用にしてるの」

「えっと、まだ返せてもらえる可能性もあるのに、費用として扱ってもいいのか?」

「もちろん、まだ発生していない費用をあらかじめ計上するわけだから、それ相応の妥当性が必要になるね」


 一・将来(次期以降)の費用である。

 将来に発生する費用が引当処理の対象になり、貸倒れの場合、期末に保有している債権の一部が次期に貸倒れること。


 二・発生原因が当期以前にある。

 将来発生する費用が、当期以前の収益に対応している。


 三・発生の可能性が高い。

 四・金額を合理的に計算できる。


「主に右記の四つを上げてみたけど、利点としては四つ目の『金額を合理的に計算できる』ってところかな。あとの三つはあくまで可能性だから。ただ不確実な情報は記入できないから注意が必要だね」

「妥当性がないといけないってことですね」

「それじゃぁさっきの例にして、この時、不動産屋はその時の一部……50万を『貸倒引当金』として繰り入れをしている」


(貸倒引当金繰上)50(貸倒引当金)50

(単位・万円)


「ややこしいな」

「貸倒引当金勘定は特殊だからね。覚えにくいけどなんとか覚えてね」

「これが次期になって貸倒された場合、さっきのようになるんですね」


(貸倒引当金)50(売掛金)50

(単位・万円)


「そうね。ただ注意が必要で、次期で獲得した債権が次期に貸倒れた場合は引当金を使うことができないってことね」

「その理由は?」

「引当金はその事業年度に獲得した収益に対する費用を計上する意味があるから、引当金の対象とならなかった債権が貸倒れたとしても、引当金を取り崩す仕訳ができないってこと」

「具体的に、わかりやすくたのむ」

「そうだね。たとえばコンビニで120円のお菓子を売ったとするよ。でそのお菓子の12分の1(10円)が貸倒引当金繰上金として考えて、帳簿ではこう記入しないといけないね」


 (貸倒引当金繰上)10(貸倒引当金)10


「そしてさっきの倒産の話に戻って、お金が支払えないから会社は倒産してしまう。債権者は貸したお金を返してもらえない。ということは」

「もしかして、引当金って資産から『引』いて代金に『当』てたってことですか?」

「そう。つまり債権者の資産からその借金の一部を引いてるの。引いた分の借金を返されず、さらに貸倒されたってことは、繰上金としたものも貸倒されたってことになるんだよ」

「うーん話を聞くだけでもなんのこっちゃって感じだな」

「費用の損失は予想できるからね。引当金の考え方は『費用収益対応の原則』がわかると理解が早いかも」

「それに関しては次回に回すってか」

「いや、そろそろ……というか、そもそも勘定とか仕訳についても説明してなかったから、そっちを説明しようかなって」

「なんか説明が飛び飛びだな」

「話を振られると答えずに入られないタチなだけです」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ