ちょっとばっかし簿記に触れてみる
「さて、実は会計はもうすこし話すことがあるんだけど、すこし簿記の話をしておきましょうか」
「お、ようやくか?」
「そもそも簿記というのは、帳『簿』に『記』入するということからきてるのよ」
「つまり略称ってことか?」
「そうだね。まぁ諸説あるけど……、簿記っていうのは『記録する技術』。会計の大まかな流れで、『分析』・『記録』・『報告書』があったけど、これを担当するのが簿記なわけ」
「えっと、あれ? そうなると会計ってほとんどが簿記なのか?」
「そう見えるだろうけど、そうじゃないんだよね。ゲーム会社で言えば簿記は制作で、会計はそれを商品として売るってことになるかなぁ」
「んっ? どういうこっちゃ?」
「えっと、言葉足らずになるかもしれないけど、経営活動や経営事象がゲームの企画書だとしたら、分析と記録はゲーム作成。報告書はデバックってところかなぁ。ゲーム制作でデバックは大変なんだよ。ファミコンとか特殊なカセットソフトは京都にある任天堂本社の工場で作成していたから、ソフトメーカーは受注したら再販するまでそのデータが扱えなくなるのよ」
「今はネットでいつでもアップデートできる時代だから、そう考えるとすごい大変だな」
「まぁ詳しくは会話をしつつ、他の教材を参考にしながら読んでもらえるといいかな」
『簿記』というのは「なにを何円増減したか」を記入する書き方です。
食料品を4,000円で購入した。
週刊誌を300円で買った。とうとう
こういった経済活動を家計簿として帳簿に記録する様子を想像してください。いつ、どういった理由で何円増減したかを書いていきます。そして毎月末日に収支と現金の残高を算出します。
この一連の流れが簿記になるのです。
会話では触れませんでしたが、簿記と会計の範囲については、会計には理論が含まれます。
たとえば台形の求め方。底辺+上辺×高さ÷2ですが、これはなぜこの公式なのか。理由は三角形の求め方とおなじで、どんな形の台形でも、辺と高さの四角形の面積の半分に相当するから(三角形の求め方は『底辺×高さ÷2』)。
会計はこの「台形は四角形の半分に相当する」という根拠であり、簿記はそこから得られた「底辺+上辺×高さ÷2」という型を使っているにすぎないということです。
そもそも簿記は報告書を作るのが目的であって、それを活用するのは簿記ではなく会計の分野になります。簿記はあくまで資料作成なんですね。
「しかし、神さまと会話していて、なんとなく簿記が会社やお店の経理に必要だってのはわかったし、今のオレの事情を考えると覚えていたほうがいいんだろうけど、もしこの状況じゃなかったらどうなんだ?」
「あら? それってお金の女神を目の前にして云うか?」
「いやいや、あんたはオレが途方に暮れていた時に現れたんだろうが。そうじゃなくて、簿記の資格をとっていいことはあるのかねぇって話」
「あぁ、まぁ場合にもよるけど、会社の経理を任されるよ」
「……うん、いや、もうすこしやる気が出ることをだな」
「ん~っ、それじゃぁ簿記検定に合格すれば、大学入試や就職に役立つってところかなぁ。まぁ商業高校とかは必然的に受験させるみたいだけど、経済学部や商学部のある大学も推薦を受けられる可能性もあるかも」
「そうだとしたら、やる気が出るな」
「でもあくまで可能性だから、おまけだと思わないとね。推薦でもやっぱり受験はしないといけないから」
「そうだな。ほんじゃまぁ、受験してくるわ」
「うん、無鉄砲なのはいいけど、今何月だっけ?」
「んっ? っと、十月くらいだけど」
「そうなると十一月のテストかぁ。今回は諦めて二月のにしなさい」
「えっ? テストって毎月やってるとかじゃないのか?」
「簿記検定は大体六月と十一月、そして二月の年に三回行なわれるわ。日商簿記検定と全経簿記検定の二種類があって、多くは前者の日商簿記を受けるわね。まぁやる気があるのはいいけど、君はまだ簿記の基本的な書き方も覚えてないでしょ? そんな状態でテストなんて受けたら、〇点待ったなしよ」
「うぅむ、さすがに〇点は避けたいな。それじゃぁ簿記の書き方を教えてください」