会計の役割
「というわけで、公人くんは十四歳にして、実家の小売店の経理を任されたわけだけども」
「店長で経理を担当していた父さんが急に入院したからな。でもオレ、数学のテストボロボロだぞ?」
「うーん、でも簿記って皆さんが思ってるほど複雑な計算はあまりないんですよ。やり方さえわかっていれば、あとは足し引きでどうにかなりますしね」
「あぁ、だから受験資料を読むと年齢関係なく受験ができるのな。よく見たら小学生以下でも受験できるって……大丈夫なのか?」
「よく考えたら、幼稚園児が簿記三級を持っているって思うとすごい世界だと思いますよ。でもそれだけ取ろうって思ってる方も多いですし、3級までなら専門用語くらいで難しいことはないんじゃないかな?」
「うーん、でも100万とか大金を扱うからなぁ、生半可な知識だと店を潰しかねないな」
「そうだね。たとえば公人くんが学校で入っている囲碁クラブの会費として『300円』を先生に渡したとします。だけどその先生が妙な行動をしていて、噂では会費を使って遊んでいるなんて話になったらどうする?」
「捕まえて半殺しにする」
「うん、暴力反対。じゃなくて、それをなくすために『会計』が必要なのよ」
「会計って『代金の支払い』だよな?」
「もうひとつは『金銭や物品の出入りの事務。またはその係り』。つまりいくら使ったのかを報告するための書類が必要になるわけ」
「なるほど……んっ? それってよく年度末(三月)にある会社の決算と同じか?」
「あら? なかなか鋭い。ここで云う会計とは『金銭のやりとりを記録して、それを知りたい人に報告する』ことを言います」
「そうなると、たとえばオレがその囲碁クラブに300円出して、それをどう使われているかを知るためにも、会計は必要ってわけか」
「そうだね。それって自分の財布から出したものだけど、どう使われているのかって思うと不安だよね? それをなくすためにも会計が必要になるの」
「まぁ自分で使うならまだしも、他人に使われていたら気が気じゃないしな」
「もしお金を預けている友人が、妙にお金遣いが可笑しくなったら不安になるでしょ? 自分の利害に関して知りたいというのはいつの時代も変わらないから、この会計は『その情報を提供してくれる』というわけ」
「なるほど。お金を預ける立場の人には役に立つってわけか」
「そうだけど、実は管理する立場も役に立つわけ」
「それはなして?」
「えっとね、要するにお金を預けた側は『そのお金がどう使われていたか』を知るため、お金を管理する側は『そのお金をどう使われたか』を確認するために会計報告書が必要となるの」
「そうか、学校だったら備品を買ったかどうかが知れるんだな。よく考えたら生徒と教師だけではなく、学校の経理を担当している人だって読んでるはずだしな。そうなると会計ってのはお金の計算では切っても切れないんだな」
ここで補足です。
会計には専門用語や数字とかで難しそうというイメージがあります。かという筆者もそうです。
会計というのはおおまかに『お金に関するできごとを記録し、それをまとめたものを報告する』という行為を指します。
この報告された情報が様々な人たちの意思決定(どのような選択をするか)の根拠になります。
実はこれは会社だけでなく、あなたの身近なできごとにも関わります。
今月はこれくらい使ったから、来月はすこし節約して、それで余裕が出たら再来月に出るCDの購入費用にしよう。
友人の結婚祝いにいくら使ったなぁ。
親戚の訃報で今月きつかったなぁ。
という記憶でも十分なことを、記録として残すことができます。(三つ目はその人がいつ亡くなったのかを思い出すキッカケにもなります)
もしあなたが資産家だったら、この会社にいくら投資して、その利益がどれくらいだったのかという会計が必要になりますよね?
出資をした会社の利益が上がっている。どうしてだろうとか、お金を預けているけど、返してもらえるかな? とうとう……
立場によってそのお金の使い道も違うわけですから、やはり会社の経営報告として、会計は必要になってくるわけです。
ここだけの話ですが、筆者の家が住んでいる区域の組費管理を任されていた年がありまして、その時の会計にすこしどころかかなり不安になりました。
というのも計算していた母の書き方がわかりにくく、四苦八苦したからです。しかも大金なわけですから、生半可な気持ちじゃお金を扱えないということです。
もしあなたがそういった立場になった場合、しっかりとお金の支出管理はしておいたほうがいいかもしれません。