全てを巻き込んだ兄妹喧嘩を始めようか
「…」
「で?エゼル様。どうして暦は不機嫌なんです?」
薄暗い地下部屋。暦が体育座りしているソファーも、暖炉も、絨毯も。全てが豪華と言える。
Lancelotとの戦闘を終えたエゼルと暦は、とれじゃーずの基地に戻ってきていた。
「エゼル様が私にあんなこと命じなければ、お姉ちゃんはとれじゃーずに入ってたんです」
むすっとした表情のまま、エゼルの方を見ずに言う。
エゼルの隣に立っていた、枕を小脇に抱えた青年が溜め息を吐く。
エゼルは反抗するように頭を掻いた。
「仕方ないだろう。とれじゃーずで洗脳系は暦しかいないのだから。」
「むしろ慧音が行けば良かったのよ。」
「いや僕はほら、寝てたから」
からかうように枕をくるくるとジャグリングのように回す慧音。
暦はまたむすっとして膝に顔を埋めた。
「ああ…お姉ちゃんに嫌われた。絶対嫌われた。エゼル様の所為だ。慧音ホットケーキ作って」
「えー。暦、文句言うじゃん」
「お姉ちゃんのが一番なの。でもお腹すいたから食べてあげる。早く作って」
ぶちぶち文句を並べながら早く早くと急かす。
慧音は肩をすくめて台所へ向かった。
エゼルはその光景を見て微笑み、天窓の下へと向かった。
「ようやくあちらも駒が揃った…。…さあ、全てを巻き込んだ兄妹喧嘩を始めようか」
地上の光に照らされた地下部屋の一角で、エゼルが不気味に笑った。