行方不明
「お姉様、碧流は…っ」
ばたばたと階段を下りてくる千春。振り返って首を振る。
朝、起きると既に碧流の姿はなく、嫌な予感がして大慌てでリビングに降りた。リビングにはいない、キッチンにもいない、トイレにも、風呂場にもいない。次いで起きてきた烈にも話し、未だ寝ていた千春と無気力さんも叩き起こした。
「玄関の鍵は?」
「しまってた」
だから、家の中のどこかにいるはず。でも見つからない。
無気力さんの質問に答えてから、はっと顔を上げる。昨日準備したスクールバックをひっくり返すと、家の鍵だけが見つからない。
背筋が冷えていく。
「姉貴?」
突然目の前で鞄の中身をぶちまけ始めた私に驚いたのか、無気力さんが顔を覗き込んできた。教科書、ノート、筆箱が散乱する。
「…碧流、外に出たかも」
「え!? や、でも玄関の鍵しまって…」
そこまで言いかけて、烈は私が鞄をひっくり返した意味がわかったようだった。足をもつれさせながら玄関へ向かい、外へ出た音がした。
「…外に出た、って…どこに…」
千春の声が震えている。どこに。誰も見当がつかなかった。
烈が戻ってくる。その手にはキーホルダーがついた家の鍵。それとメモ帳が握られていた。昨日、碧流が注文を取るときに使っていたメモ帳だ。
「鍵、ポストに入ってた。あと、この手紙も」
烈に渡されたメモ帳の最後のページに、きれいな字で「ありがとう、お姉ちゃんたち」というメッセージが書かれていた。
どう見ても別れの言葉にしか取れない文字の羅列に、私も千春も烈も無気力さんも困惑した。そんな予兆などなかった。
「なんで、急に…」
ぽつりと言葉が零れ落ちた。




