おうち文化祭
「お姉ちゃん! わっかいっぱいできた!」
「お姉様、メニュー表のラミネートが終わりました!」
両手にいっぱいの色紙で作られた飾りを抱える碧流と、ラミネート加工が施された手書きのメニュー表を持った千春が台所に駆け込んできた。
「うん、じゃあ飾りつけしてくれる?」
「はい! 烈たちはまだ帰ってきてませんか?」
「まだみたいだね…」
朝、烈に無理矢理起こされて買い出しに連れていかれた無気力さんの姿が蘇る。
「…まあ、もうすぐ帰ってくるよ」
千春も同じ無気力さんの姿を思い出したのか、苦笑いで頷いた。そして私の手元を覗き込む。
「お姉様の方も、もうすぐ終わりそうですか?」
「もうほとんど終わったよ。私の本番は二人が帰ってきてからだから…」
おうち文化祭ということで、リビングではカフェをやることにした。メニューはそれぞれが案を出し合って、それを私が作る。私以外は、他の人が何の料理をリクエストしたのか知らない。ちなみに一番面白かったのは烈。一番作りにくそうなのは無気力さん。今は家にあるものでできる下準備をしている最中。
「ちはるー! 届かない!」
「今戻りますよ」
千春がリビングに戻ったあと、玄関の扉があいた。
「たでーま」
「ただいまー…」
たくさんの袋を下げた烈と無気力さんが帰ってきた。無気力さんは荷物を置いた瞬間ソファーに倒れこんだ。
「あああああ疲れたあああああ」
「うるさいですよ遥希。寝っ転がってないで飾りつけ手伝ってください」
「無理…ちょっと休憩させて…朝早くに叩き起こされて買い出し行ってあんな大荷物抱えて帰ってきた俺を褒めて…」
「はるき! これ、そこに貼って!」
「ぐえっ! ちょ、碧流乗らないで…わかった、やるから…」
そんな様子を見て、笑ってしまった。
無気力さんがあの時、「文化祭に行くな」と言った気持ちが、今はよくわかる。
☆ ☆ ☆
「剣木さん、今日は親戚の方、来るの?」
文化祭当日、野田さんはセッティングをしている私にそう尋ねてきた。どこか固いような、緊張しているような雰囲気で。
「…来ないよ。用事ができちゃったんだって」
少しだけ、野田さんの纏う空気が緩んだ。
「そうなんだ、残念ね」
「まあ、無理してくる必要もないしね」
来年がある。来年はきっと、みんなで文化祭を回るんだ。無理して来る必要はない。何も今年だけってわけじゃないし。
「えっ、梓ちゃんの親戚来ない?」
「あ、でも雪奈ちゃんのヘルプはするよ」
「ありがとう…ほんともう、姉さんどこから嗅ぎつけたのか知らないけど、休憩時間こっち来る気満々で…先輩たちもシフト時間聞いてくるし…」
辟易した様子の雪奈ちゃん。どんまい…。
一方野田さんは、損の様子の雪奈ちゃんに苦笑いを送ってから自分の仕事に戻った。
☆ ☆ ☆
「…楽しいなあ…」
リビングでぎゃあぎゃあと飾りつけをしている四人を見て呟く。
今年は見送ってよかった。みんなが楽しくいられてよかった。
「姉御―! こっち準備終わりそう!」
「うん、じゃあこっちも準備始めるね!」




