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秘密結社のお姉様!?  作者: 折上莢
さくらふぶき編
42/71

「行くな」

「碧流? どうしたの?」

『喧嘩してるのっ、はるきとちはる! れつが止めに入ってるんだけどっ、のうりょく、使い始めてっ』

「え!? 喧嘩!?」


電話口から、ゴオッという音がした。


「…碧流、今どういう状況? 喧嘩してる二人の様子は見える?」


携帯を耳に当てながら、早歩きで横断歩道を渡る。


『うん、あのね、…のうりょく使ってるのは、ちはるでね、…はるきは何もしないの。やり返したり、おこったりしないの』

「何で喧嘩してるのかわかる?」


ちらりと手首を見る。このスピードなら、あと十分程で家に着くなと計算しながら、少しだけ速度を上げた。


『…はるきが』


碧流の声が、硬くなる。


『はるきが、ぶんかさい行くなっていうの』


思わず立ち止まってしまった。


「…え?」

『ちはるが、何でってきいても、はるき答えてくれなくて、それで、喧嘩してる…』


あの無気力さんが?


勝手に、彼らは何も言わずとも文化祭に来ると思っていた。例え私が来ないでくれと言っても「いいえ行きますよ!」と返して、来ると思っていた。無気力さんも、例に漏れずに。めんどくさいと言いながらも来てくれると。


どうして、と考えながら、また歩き出す。


「行きたくない」ならまだわからなくもないが、「行くな」という言い方が気になる。前者は意思だが後者は命令だ。自分がめんどくさいから、ではなく、「行くな」。碧流の聞き間違え言い間違えの可能性もあるが、さすがにニュアンスが違いすぎる。碧流でもそこは間違えないはずだ。


みんなで買い物に行った時も、なんなら夕ご飯食べてる時も。文化祭の話を彼が嫌がっている雰囲気はなかった。そんな気配は一ミリもなかった。むしろ楽しそうに聞いていたから、普通に、来てくれるもんだと…。なのに、何故急に、「行くな」?


「…」


まさか、私と喧嘩したから、とか?

過ぎった考えを、頭を振って飛ばす。

それが原因なら「行くな」という言い方はもっと意味がわからない。しかも。


「…ちゃんと仲直りしたし」

『おねえちゃん?』

「ああ、ううん。何でもないよ」


あの時の体温と心音を思い出して、恥ずかしくなって歩くスピードが上がる。


それより今は二人の喧嘩だ。私と無気力さんが仲直りした途端に次って。喧嘩するほど仲がいいとは言うけれど、喧嘩してる当人たちは本当に楽しくないし周りだって気を使ってしまう。そんな頻繁にしたくない。


「…碧流。ちょっと走るから、電話切るね」

『うん。おねえちゃん、早く帰ってきて』

「わかった。じゃあね」


通話終了ボタンを押した。携帯を鞄にしまう。

走りにくいローファーの上に、長いスカート。だからと言って短いスカートを履きたいわけではないが、こう急いでる時、制服はとても不便だ。


ふと、突然脳裏に野田さんの言葉が蘇る。


『霧谷くんと、知り合いだったの?』


今はそんなことを考えている暇はないのに。早く帰って、二人を止めなければ。そして、どうして文化祭に行くななんて言うのか、聞き出さなければ。


それでも、あの言葉が心の隅にずっと引っかかっていた。


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