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秘密結社のお姉様!?  作者: 折上莢
かかし編
27/71

今からでも遅くないよ。

「…あ、来てくれた。“家族”の事になると大人しく来るんだね?」


両手を広げ、歓迎するかのような態度の尊。後ろには、人形が控えている。


「…千春に、何をしたの」

「僕の能力は『案山子』。ものに命を吹き込む事ができる能力。それを使って、その子の体にもう一つの命を入れさせてもらったんだ」


尊の口が、三日月を描く。


「定着させるのに、本来一週間くらいかかるもんなんだけどね。その子の中には、今二つ分の命が入ってるんだよ」


目覚めない理由は、それ。

千春の中には、千春と、別の命が入ってる。そして、その別の命が定着しようとしてるから、千春は目覚めない。


「本当は、梓のためにとって置いたものなんだ。…ねえ梓? 今からでも遅くないよ。僕の人形になって」


不意に、尊が片手をポケットにしまった。


「…嫌だ」

「そっか…なら、仕方ないね」


尊が地を蹴った。ポケットから抜いた手には、閃光を放つスタンガン。

反射的に、スタンガンを狙って剣化した右腕を振るった。

ところが、私の腕はスタンガンを捕えられなかった。

尊が後ろに倒れる。彼と入れ替わりに出て来たのは、セスト。


「ワタシは、マスターが、いなきゃ…生きられないの…マスターが、ワタシに命をくれたから、マスターは…ワタシの、大切な…」


嫌だ。


腕を引っ込めようとしたが戻らない。私の剣は、セストを袈裟懸けに斬り裂いた。

カランと、軽い音が地面に落ちる。


「ぁ…」


生気が、命が。抜けて行くのがわかる。

尊の能力が切れた…いや、違う。

私が、殺した。

私が斬った。


不意に、綺麗な声で紡がれる唄が耳から頭を侵食しはじめた。

辛うじて後ろを振り返る。予想通り碧流が歌っていた。一番最初に誘拐された時の声。

しかし、今回は意識があった。

ただ、体は動かない。右腕の剣どころか指一本さえ動かせない。

私は、まっすぐ尊を見据えた。


「…『千春に掛けた能力を、解いて』」


私の声が、私の口から言葉を紡ぐ。

私のものではない言葉を。


「『…解かないなら、あなたを殺して千春を目覚めさせる』」


血の気がサッと引いた。

殺す? 私が、尊を?

そんなこと、できるわけがない。

私を操っているのは碧流だ。でも、この台詞を作ってるのは絶対に碧流じゃない。

私の腕が、尊の首に触れた。


「…わかったよ」


尊が両手を挙げる。スタンガンが落ちた。


「解くよ。…今回は、諦める」


* * *


「…無気力さん、話がある」

「んー? 何、姉貴」


飄々とこちらを見上げる無気力さん。

千春は目覚めた。でも、すぐに眠ってしまったため、烈が布団に運んでいった。碧流はもう寝た。

リビングには、無気力さんと私だけ。


「…あの台詞を碧流に吹き込んだの、無気力さんでしょ」


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