まさか梓が行けるっていうと思わなかったから…
「梓、一人で大丈夫? 荷物持ちとか必要じゃない? なんなら俺行くけど?」
「あああああもう! うるさいなあ! それさっきから何回繰り返す訳!? 家族と行くから大丈夫だっつってんでしょ!?」
ホームルーム終わって、教室出てから尊はずっとこの様子。
「まさか梓が行けるっていうと思わなかったから…だって梓、アンケート乗り気じゃなかったし!!」
「いいじゃん別に…。あの時は面倒くさかったし。でも雪奈ちゃんも表だから楽しそうかなって思ったの!」
それに、買い物は行きたかったし。
“家族”とお出掛け、なんて何年ぶりだろう。楽しみ。
「それに、家族って…。暦ちゃん、帰ってきたの?」
そういえば尊、家の事情知ってるんだった。
まあ、幼馴染だからねえ…。
尊に泣きついたこともあったし。
「昨日言ってた親戚のこと。疑似家族? うーん違うか。…少なくとも、私は本当の家族だと思ってる」
「…へえ…。そっか。よかったね、梓」
ふんわり微笑む尊。
この笑顔に、何人の女の人が落ちていったのやら。
「その顔、やめたほうがいいよ」
「え? 梓は俺の武器を奪うの? そんなに俺かっこ良かった? 誰にも見せたくな」
「この世の全ての女性の未来を考えて言ってる」
「梓、俺流石に傷つく。言葉被せないで…」
しょぼんと肩を落とす。
それを見て、笑いが溢れてしまった。
「嘘だよ、嘘。いーんじゃない? その顔で数多の女性を落とせば」
「ねえ俺ナンパやめたって言った! 今朝言った! 覚えてて!?」
日が傾いてきた住宅地を、私たちは笑顔で歩く。
…あ、そういえば、これも久し振りだ。
自然と目尻が下がるのがわかる。
「…梓、今の顔やめて」
「何それパクリ?」
「違う! あ、いや、違くないけど違う!」
ちょっとわかりません。
「今の顔…惚れちゃうから、駄目」
「さっきの顔すれば、私もナンパ上手になる?」
「そういう問題じゃないってば!!」
あははー、わかってるよー。
「さっき声のトーン、ガチだったじゃん!」
「そんなことしないよ。てか、これ以上周りに面倒くさい男の人いらない…」
烈と遥希だけで手一杯。
その他男以外だったら、千春と碧流もいるよ…。
面倒くさいけど、幸せなんだよね
「…」
「尊?」
「あ。なんでもなーい。いやあ、まさか梓の口からそんな事聞けるとは…って」
あはは、と空笑のようなものをする尊。
目が左右に泳いでいる。
「尊?」
「…ん? なーにー?」
ふっといつもの顔に戻る。
…気のせいかな?
「はい、到着っ! 梓、荷物持ち必要だったら、いつでも呼んでね! 飛んで行くから!」
「んー、多分呼ばないと思う。でもありがとう」
ぱたぱたと手を振って、道の先に進んでいく尊。
…戻ってきたんだ、イギリスから。
「…、ただいまー」
「お帰りなさいお姉様ああああああああっ!!」




