1話 始まり
「ようやく飯の時間だ」
学校の屋上からさらに上へ突き出た部分、梯子を上った先で日向四季は目の前に広げているおにぎりばかりの弁当箱を食べようとしていた。
おにぎりの具は高校入学と同時に旅に出ていった保護者のクソジジイが旅先からの土産物として送ってきた海の幸が送られてきた。その中から四季はおにぎりの具としてイクラ、鮭、明太子、ホタテを選び、大好物の米と同時に食べれるおにぎりとして一種類につき二つの計八個のおにぎりを作ってきた。
「それじゃあ、食べるとするか」
おにぎりに向かって手を伸ばそうとすると、屋上の扉が開き、扉から賑やかな四人組が出てきた。
記憶に間違いなければ同じクラスの人間の筈である。
先頭を歩いているのが、遠山春樹。身長は四季と同じく百八十近く爽やかなイケメンに加えて、茶髪ではあるが真面目そうな顔つきで正義感と優しい雰囲気を持ち合わせている。
その隣を歩く彼女は佐野夏海。クラスでもよく喋り、ハキハキと物を言い、屈託なく人と接する。見た目は春樹よりは薄い茶髪のショートカットをしている。胸はいまいちな大きさだが、陸上部で鍛えた彼女のスレンダーな体躯にすらりとした手足は目を引きつけるだろう。
その反対側にいるのが古賀秋吉。遠山春樹とは小さい頃からの幼馴染みらしい。小柄で小動物っぽく、たまに女子と間違えられる見た目から一部の女子の間で大人気の人物である。
その三人の後ろを歩いているのが東藤冬花。綺麗な艶々とした黒髪のロングに落ち着いた物腰をしている。こちらは夏海とは違い、男を寄せ付けてしまうほどの豊満なボディを有している。彼女は茶道部と華道部を掛け持ちしていて、時々着用する着物姿を拝もうと、男子たちは見学に行ったりする。垂れ目気味な目と、泣きぼくろもチャームポイントなのだろう
春樹達はこちらに気付くことなく、四季のいる場所とは反対側の場所に移動する。
四季としても、春樹達はクラスメイトであるが全く興味のない連中なので、気付かれようと、気付かれまいと関係ない話である。もっと言えば、四季は学校外で独自の人脈を作っており、数は少ないながらも友人はいる。なので、学校にいる人間全員が四季にとってはどうでもいい存在である。
そのため、四季は普段から一人で過ごしている。
四季は春樹達と接触を避けるように、春樹達に背を向けて、今度こそ昼食のおにぎりを食べようとしたときに唐突に屋上全体の床が光だす。
「な、何だこれは!?」
春樹達が騒いでいる間にも光はもうスピードで光を増していく。
ヤバい予感に四季はこの場から一目散に逃げようと弁当の蓋を閉じて、弁当を持って逃げようと立ち上がった時、慌てている四人組の内の東藤冬花と目が合う。その瞬間、屋上全体が白一色に埋め尽くされた。
それは一瞬の出来事だったのだろうか。それともしばらく続いたのだろうかは分からない。
ただ、閃光が収まった屋上には誰一人として人は存在しなかった。