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地下 地下迷宮の準備と顔合わせ

ようやく更新できました。次回は地上回です。

地下迷宮の蓋となっているマンホールを外し、地下迷宮に入った優はこの状態を見て驚いていた。その理由は二つ程ある。

一つ目は優のいる階、つまり1階が昨日見たときのような殺風景な景色ではなく草や大木、そして階段がわかりやすいように丘の上に設置されており、まるで別世界のようだったからだ。


そしてもう一つの理由はオルフェウスが死んだようにうつ伏せで倒れていたことだ。


「お、オルぅー!?」

優は慌ててオルフェウスに駆けつけるとオルフェウスがピクリと動き、死んでいないことが確認出来た。

「……その声はユウか?」

オルフェウスが仰向けになり上半身だけ起こす。するとオルフェウスの関節が硬くなっていたのかポキポキとなる音が聞こえた。

「だ、大丈夫なの?」

「明日この地下迷宮をオープンする予定だったからな。その分働いたんだよ」

オルフェウスの倒れていた原因は過労だった。人間と魔族の違いはほとんどなく、ほぼ同じだ。過労すれば気絶もするし、寿命も長さこそ違えど尽きると死ぬ。


「地下迷宮をオープン……って何をするの?」

「前にもいっただろうが金やらなんやら対価を貰う代わりにお客様にこの地下迷宮を散策する権利を与えようって訳だ。散策して見つけたものは持ち帰ってもいい。」

「そういえば人間は冒険者アドベンチャーズって職業について魔族が作った地下迷宮を探索して稼ぐって言ってたね!」

「そういうことだ。俺は迷宮主ダンジョンマスターだから奴らを保護しつつも俺の利益になるように調整する」

「どうやって?」

「まず最初に言ったように入場料、そして魔法道具の販売、あとは武器のレンタル料金だな。取り敢えずその路線で稼ぐ」

「大雑把すぎない?」

「何処がだ?」

「入場料って例えばどんなのがあるの?」

「どんなのって……そりゃ1回入るごとに対価を払うんだよ。それ以外にあるのか?」

「でもそれって不便じゃない? 1回入るごとにの料金が決まっているなら何回も入る人からすれば面倒じゃない? それに毎日入る人なんかはイライラしてやり辛いと思うよ?」

「入場料をまとめて払うか。でもそれをすると管理が面倒なんだよな」

「どうして? この定期券のようにカードにして後何回入れるか、いつまで入れるかみたいなことを記入すればいいんじゃないの?そうすればカードを見るだけで済むし」

「それだ!!」

オルフェウスは優の言葉をヒントにして手元に持っていたメモ帳に書き込んだ。ちなみにこのメモ帳はオルフェウスがレタスの葉を作る際に失敗した魔物達を利用して自作した物だ。


「後、散策する権利を与えたっていっても地下迷宮に何があるの?」

「うん? 基本的に魔物の肉とか皮とかだな。魔物の肉は結構美味いし、皮なんかは貴族に人気が高い」

「この世界に貴族はいないよ?」

「…そういえばそうだった」

「でも珍しい素材となれば富裕層なんか欲しがるだろうね。予めどんな魔物がいるのか掲示しておいたらどうかな?」

「いやしかしだな……それをすると冒険者の意味がなくなる。冒険者って職業は元々魔族が作った地下迷宮を冒険してどんな驚異があるかを知る為に作られた職業だ。それをしたら元も子もない。それにそんなことをすれば俺の利益も減る」

オルフェウスはそう言って腕を組んだ。しかし次の優の言葉によってそれは解かされた。

「じゃあ最初の5階層まではどんな魔物がいるのか掲示して、後は見てからのお楽しみにしておいたら? そうすれば5階層よりも下にいく人は少なくなるかもしれないけれどそれよりもリターンを求める人もいるよ。お試し期間みたいなものだね」

「なるほどな。それなら10階層までは掲示しておくか。誰でも10階層まではいけるように設定してある。その後はユウが言ったようにカードを利用して初心者卒業の証やその他諸々の特典を用意するのもありだな」

先日のように車を見ても動じなかったり、妙なところで頭が堅くなるのはやはり異世界ならではの弊害とも言えるが元々オルフェウスは柔軟な考え方が出来る。故にちょっとしたことであっても簡単に閃き、それを改良するのは容易い。


「ところでユウ。お前に見せたいもんがある」

「え?」

「地下迷宮には魔物が住んでいることは知っているよな?特別にどんな魔物がいるのか見せてやるよ」

「襲ったりしない?」

「大丈夫だ。既にユウを最初の冒険者として登録してあるし、死んでもここに戻る」

「そういう問題!?」

「まあ死んだらとは言ったが元魔王の俺がいるんだ。魔物がユウを襲った瞬間殺すから平気だぞ」

「本当に?」

「少なくとも肉体的なダメージはないさ。それじゃ行くぞ!」

オルフェウスは優を引っ張り案内した。


〜2階〜

「あそこにあるのが魔物の元となる魔物苔だ。直接危害はないがあれがあると、初心者が使うようなところであれば冒険者は魔物苔を回収して俺に買い取ってもらう。下手に魔物苔が進化すると大変なことになるからな」

「どうして?」

「魔物苔が進化したら後で説明するスライムや他の魔物になって集団で襲いかかってくるようになる。そうなれば地下迷宮の最初で詰んで冒険者が減って俺の利益もなくなる。それだけは避けたいからな…だから先行投資として俺はそれを買い取るってわけだ。冒険者に処分を呼びかけても多分しないだろうし、何よりも冒険者が欲しがるようなものと交換できるような魔法道具(マジックアイテム)を用意しておいた」

「どんなのがあるの?」

「最初は身体能力2%増しの指輪だな。それから色々と変えていく」

「でもそれをしたら魔物苔だけを狩る冒険者がいるんじゃないの?」

「二回目以降は別の方法で換算させる上にもっと奥深くに潜れば良いものも発掘できる。だから小遣い稼ぎにはなるだろうがそれも少しの間だけだ。……おっと、あそこにいるのが魔物の中でも大人しいとされているスライムだ」

「あ、可愛い……」

「でも注意が必要だ。スライムの特徴は基本的に食事は土とかゴミとかだが必要であれば人間も平気で食べる」

「何それ!? 普通に危ないじゃない!」

「まあ奴らがよほど飢えてない限りは無害な奴らだから安心しろ。ここから5階まではスライムしかいないが6階からはゴブリンやコボルト、バグベア等がいるからそれまで歩いてきた奴らからしてみれば別世界だ。6階からは注意して歩くこったな」

「ゴブリン、コボルト、バグベア……まさしくファンタジーだね……」


「この他にも魔物は一杯いるぜ。この前の照り焼きバーガーの野菜の葉を作ろうとして失敗した魔物、地獄の杉(ヘル・シーダー)草蔓竜(ヴァイン・ドラゴン)、牛肉の代わりに用意したミノタウルス…まあミノタウルスは地下深くに潜っているからしばらくの間戦うのはお預けだな」

「そんなに強いの?」

「やり過ぎたってことだ。それ以上は詮索しないでくれ」

「うん」

オルフェウスがそういったので優は詮索するのを止めた。


「それはともかく、このフェウスの洞穴のアイドルともいうべき精霊がいる」

「アイドルなんて言葉いつの間に覚えたの?」

「ユウがアニメを見せた時少しな……話を戻すぞ。その精霊達は水と油の精霊なんだがな。少し変わっている」

「変わっている?」

「ここの地下迷宮で発掘した水と油を元にして作った精霊だ。まあ見ればわかる」

オルフェウスが優の腕を掴み、瞬間移動する。


そして今度こそ優はそれを見て絶句した。優はこれまでオルフェウスの非常識振りを見てきた。そのためオルフェウスのやることなすこと全て理解していたつもりだった。

「温泉と原油じゃない……」

そう、僅かに腐卵臭の漂う温泉は日本でも珍しくはないが実際に掘り当てるとなれば話は別だ。温泉の知識のないオルフェウスがそれを掘り当てたとなれば尚更である。

「オンセンとゲンユ?」

「うん。温泉っていうのはそこのお湯のこと。日本人は温泉に浸かって身体を癒す文化があるんだよ。簡単にいえば天然のお風呂だね。」

「天然の風呂か!なるほど……確かに温度も丁度いいな。」

オルフェウスは風呂の存在を知っている。その理由はオルフェウスがまだ冒険者の時、とある貴族の冒険者から風呂について聞いていたからだ。貴族曰く、極楽の場所らしくオルフェウスは胡散臭く思っていた。

ちなみにオルフェウスは魔王になってからも多忙なスケジュールが原因で風呂に入ったことがない。


「それでゲンユはなんだ?」

「昨日、バスとか車とか見たでしょ?あれを動かすのに必要な燃料の元」

「バスや車を動かす燃料の元か…高値で売れそうだな。」

「それだけじゃないよ?私が着ているこの服も原油が元になっているし、この前のアニメなんかを映すTV、それを動かす電気も原油が元になっているんだよ」

「なんだと!? そんなものが地下迷宮にあるとなれば…放っておいても冒険者達が来るぞ……!!」

オルフェウスはそれを聞いて興奮した。冒険者自身が使わずとも原油を分解し別のものへと生産する業者からすれば喉から手が出るほど欲しがるものだ。冒険者はその業者から依頼を受けて原油を取りに地下迷宮へと向かう…オルフェウスの頭の中ではそう考えていた。


「そうとなれば……おい! お前ら起きろ!」

「おはようございます主人(マスター)。その方は?」

オルフェウスの声で温精霊と原油の精霊が現れ、二人は優を見る。

「(オル…このくらいじゃもう驚かないよ?)」

優はそう思いながらオルフェウスを見つめる。だがオルフェウスはそれに気づかない。当然といえば当然である。だって悪魔だし。

「こいつはユウ。冒険者の第1号であり、俺のダチだ」

優はそれを聞いて微妙そうな顔をしたが一瞬だった。確かにそれ以上の関係ではないし、何よりもこの精霊達はオルフェウスに振り回される苦労人であると見抜いたからだ。

「天谷優よ。よろしくね」

「よろしくお願いします。ユウ様」

「優でいいよ。恥ずかしいし…」

「ではユウ。これからよろしくお願いしますね」

「よろしく頼むよ」

精霊二人? が優に握手をして仲良くなるとオルフェウスはあることに気がついて手をポンと叩いた。


「どうしたの? オル」

「そういえばこいつらを紹介しようと思ったがこいつらの名前決めてなかった。ユウ、お前がつけてくれ」

「名前ないの?」

「そういえば……名前なんてもらってませんでしたね。私達は禁呪法で生まれた精霊でしたし、名前をもらわずとも不便ではありませんしね」

「ちなみにそこの黄色肌がお湯の精霊で、私が黒い油の精霊だ」

「ほとんど見た目通り…まあいいけど」

そして優がしばらく考えると目を見開いて思いついた。

「じゃあ、温泉の精霊の方はノン。原油の精霊の方はユアン。いい名前だと思わない? オル」

「そうだな。じゃあこれからはお前達はノンとユアンだ」

「「かしこまりました主人(マスター)。」」

こうしてオルフェウスは優に地下内で地下迷宮の案内、精霊達の紹介などをして親交を深め、半日を過ごした。

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