表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

七話

親愛なるウラへ。

元気にしているだろうか。風邪は引いていないだろうか。

私はとても心配だ。


君がこの本を読んでいるという事は、私はもうこの世界にはいないのだろう。

何たってこの本は私の遺書。

私が死ぬ時、この本は初めて出来上がるものなのだから。



ちょっと話がずれてしまったようだ。

私はこの場を借りて、君に伝えたいことがあるんだ。

君に私の知っていることを全て教えてあげよう。

この世界のことも、君のことも。


今まで黙っていて、すまなかったね。

悪いとは思っているよ。

でも話す時間さえも神は与えてくれなかった。


だからこの場で君に教えてあげよう。


この世界は危険だ。

この世界にいては駄目だ。


この世界には魔物が潜んでいると言われている。

その魔物が目覚める前にこの森から出るんだ。

君なら分かるだろう。これは大切なことなんだ。


ずっと昔、この森もあの世界と繋がっていた。

しかし魔物によってあの世界とは離れてしまい、この森に住んでいた人々は元の世界に帰れなくなった。

残された人々は必死に生きようとしていた。けれど、魔物がやってきてしまった。

その魔物はこの森に残された人々を一人残らず食べてしまった。


魔物は食べるものが尽きて、消滅した。

しかし、今、まさに魔物は目覚めようとしている。

一刻も早くこの森から出なさい。


ウラ、これだけが私の願いだ。

君の幸福を願おう。


そして君は大きな鍵を握っている。

この森は君にかかっているんだ。

生き延びてくれ、ウラ。


何をしてでも、どんな手を使っても、だ。

信じているよ。





そこでこの本は終わっていた。

そう思って、次のページを(めく)る。

しかし、やはり終わりのようだった。


でもどこかがおかしい。

まるで破り取られたような跡が残っていた。


「ここで終わりじゃないのか……?」


ウラという人がこの森の鍵を握っている?

この森とはきっと、僕が今いるこの森のことなのだと勝手に予想する。

この森に人がいないのは魔物に食べられてしまったからだ。

そう考えれば何となく理解できそうな気がしたのだ。


しかし、何とも現実味の無い本だと思う。

僕はこんなの信じない。

もしこの本を書いた人の仮説(これを仮説としよう)があっているのならば、この森には一人も人間がいないはずだ。

しかし、いるではないか。

概に、ここに住んでいる。


僕より前に迷ってきたと言っていた。

しかし、この森のことを教えてくれる人などいなかったはずだ。

今の状況を一人で理解できるとは思えない。

彼女は。リズは。どうやってこの森のことを知ったのだろう。


元々この森にいたのではないか。

しかし、どの仮説も本のように納得のいく答えは出せなかった。


何かが引っかかってしまうのだ。

この難題を解けるのはただ一人なのだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ