いつかの恋人。
街が賑やかに飾られた頃、僕は決まって思い出す。
幸せだったあの時の、彼女が生きてたあの頃を。
プレゼントは指輪だった。
重いかもしれないとは思っていた。けれど、プロポーズするにはやっぱり指輪でないといけないと思ったのだ。
結局、その指輪は引き出しの奥。ホコリをかぶって眠りについている。僕ももう、それに触れることはないだろう。
綺麗なまま、思い出にしておきたいのだ。
今の自分が過去の自分を汚しているみたいで、昔のものに触れる事はどうしてもできない。
何十年も前から知っている駅前通りのイルミネーションは、年を重ねるごとに少しずつ豪華になっていった。
恋人たちが手をつなぎ闊歩するこの道は、独り身の僕に孤独を再認識させる。
30年。
月日が過ぎ去るのは案外早いものだった。
でも、僕の記憶はあの頃からうごいてはくれない。
読んでくださりありがとうございます。
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